06/10/19 03:55:21 +VVBTEeL0
寝れないからなんか書いてみたぜ!
正午を少し回っても、公園のベンチで受ける風は涼やかなものだった。
「ほら、筑前煮入れたんだ、好きでしょ?」
彼女はそう言って、里芋を小ぶりな箸につまんで持ち上げてみせる。
俺の恋人は料理が得意だ。特に和風の煮物なんて料亭も顔負けの味だと思っている。
俺がそう素直な感想を口にすると、
「……そんな恥ずかしいこと言わないで」怒ったような表情をされてしまうのだが。
いや、怒った『ような』ではない、怒るのだ。
どうも俺のそういうところ―万事に大げさな性格が恥ずかしいのだそうで。
……俺は一ミリも嘘を言っちゃいないんだけどな。
まぁとにかく機嫌をなおしてもらわなきゃいけない、そういう場合は……。
「だってホントに美味しいんだよ」褒める「……」更に表情を強張らされても、
とにかく「うーまーいーぞー!」褒めるのだ。
そうすると最後には寄せた眉根を戻し「もう、バカなんだから」困ったように微笑んでくれる。
俺はその表情が大好きだ。
「じゃ、行こっか?」バスケットに弁当箱をしまい、彼女は手を差し伸べた。
ここでコツンと、後頭部に何かが当たる感触。俺は首だけを捻って後ろに向けた。
「何ぼうっとしてんだよ?」耳によく馴染む声。ランチバッグを手に提げて恋人が立っていた。
「いや、何も……」緩む顔を前方に戻し、手を繋いで歩いていくカップルの後姿を見送る。
「何かあんのか」恋人は俺の横に立って目を凝らす。一拍置き「手なら繋がねぇぞ……」と、呟いた。