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産経抄 平成18(2006)年4月14日[金]
場末のスナックで、一節うなって「いよ!名人」とおだてられ、一杯ビールをおごらされた
経験のあるご同輩も多いだろう。カラオケのみならず、サボりの名人も居眠りの名人も
数々あるが、将棋の「名人」となるとどうも格が違うらしい。
▼江戸時代は世襲制、明治以降は終身制だった名人位を実力制に改めたのが71年前の
昭和10年。以来、木村義雄、大山康晴、谷川浩司らがその座についてきた。米長邦雄
永世棋聖は、若かりしころ升田幸三名人と口論となり、「その台詞(せりふ)は、名人に
なってから言え」と一喝された(「勝負師」・朝日選書)という。
▼その名人戦の主催者を、毎日新聞から朝日新聞に移管させる案が明るみに出た。
将棋ファンのみならず、小欄のようなやじ馬も驚かせているが、原因はどうやらおカネのようだ。
▼毎日が年3億3400万円を日本将棋連盟に払っているところに、朝日は5億4500万円出す
と提案したとか。札束で顔をひっぱたくかのごとくで、一時のブームが去り、赤字体質に悩む
連盟が朝日になびくのもわからぬでもない。
▼ただし、5億を超すという額は本紙や毎日の読者は知っているが、朝日の紙面には
「新たな契約条件を提示した」とあるだけ。契約金の原資となる購読料を払っている
朝日読者には、いくらを提示したか知らされていない。「ジャーナリスト宣言。」をした新聞とは
思えぬ秘密主義ではないか。
▼毎日の編集局長は「日本の伝統を大切にする将棋連盟が信義よりも損得を重視するの
でしょうか」との批判もしており、「日本の伝統と文化」の大切さは理解されているようだ。
その趣旨を盛り込んだ教育基本法改正にもきっと賛成されるだろうから、今回は毎日の
肩を持とうかな。