05/10/30 02:16:13 jmphbN+o0
そして取材班は秘境の部族の生活をドキュメンタリー番組に撮ることとなった。
「明日の外の収録は無理かな。この分だと雨のようだ」
どす黒くたち込めた雲を見てディレクターがつぶやくと、側にいた部族の老人がぼそっと言った。
「明日は晴れじゃ・・・」
翌日は抜けるような晴天だった。取材班はその日一日カメラを回すことができた。
「よし。今日はいい映像が撮れた。明日も晴れそうだし、みんながんばってくれよ」
ディレクターが美しい夕焼けを見上げながらそう言うと、またまた老人がぼそっと言ったのである。
「明日は嵐じゃ・・・」
そして、その通りとなった。次の日は強い嵐であった。
その夜、取材班は話し合った。
「やはり大自然に生きる人間には、あたりまえのように天気を知る力が備わっているんだろうな」
「我々文明人がいつしか無くしてしまった能力なのでしょうか・・・」
取材班は老人のボロ小屋を訪ねることにした。
老人の粗末な小屋の壁には、何か分からぬ獣の頭蓋骨がいくつも飾ってあった。
ディレクターはおそるおそる聞いた。
「ご老人。明日の天気はどうでしょうか?」
老人は黙って首を振った。
「どうして今日は教えてくれないんです?」
老人は目ヤニの奥に黒く鋭く輝く瞳で取材班をじっと見据え、ぼそっと言った。
「ラジオが壊れた・・・」