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縦読みのガイドライン2 - 暇つぶし2ch227:水先案名無い人
05/01/29 17:41:56 yx+SwQ/B0
雪が降っていた。
窓を開けると、淹れたてのココア、白い湯気が吐息と混ざりながら、ぐっ、と濃くなった。
こんな銀世界を見ると、決まって蘇って来る記憶がある。
…僕は雪に煙った赤いテールランプや細化した常夜灯の光が視界から離れる、その感覚に心を委ねた。

毛糸のマフラーと使い捨てカイロを暖に、雪の街の心地いい色を見下ろす僕と君との邂逅、その場所。
…偏西風が吹いて、それが春を運んで来る頃には、そこに君がいるのも普通のことになっていた。
おのおのが「自分だけの秘密の場所」と思っていた、そのカタチが日々の経過と共に変わっていった。
漂う雲を若草の上寝転がって仰ぐのは好きだったけど、色んな事を二人話しながらは尚良く思えた夏。
美しく色づいた楓の葉の紅、少しの風で奏でる葉擦れ。それらが冬に移ろう時間を共に過ごした秋。
おろし風が止み、雪が止み、急速に晴れ渡っていく街と空に、不思議な気持ちで見蕩れた冬の夕暮れ。
雪の街、陽に溶ける空、冬のニオイ―ロマンチックに誘われて、どちらからともなく交わした口づけ。
断片的に浮かんでくる記憶、その「舞台」は、季節は違えどやはりどれも同じあの場所。
街から抜け出し、国道141号線通り抜け、ガラス細工のように煌く木漏れ日の下を潜り抜けたその先。
異なる朝練登校の時間と通学路で通った僕達が、下校時に好んで寄り道した共通の隠れ処。
街を一望出来る、夏はたわわな若葉を揺らす碧、冬は雪化粧に美しき白い丘……。
…ようやく雪も止み始めたようだ。細雪のような白がチラチラと舞い、雲の流れは速くなった。
冷めたココアをくっ、と飲み干し、僕は部屋を後にした。鈍い灰空が西から澄みつつあるのが見えた。

…つい6年前のそんな日々とその後のことを思い出すから避けて来た場所。やはり雪は止んでしまった。
あの頃とは随分変わってしまった風景だけど、
今は寧ろ白く覆い尽くされ、斜陽は赤くそこに溶けて―記憶の中のあの日の絵図と同じ匂いがした。
6年ぶりのこの場所に、改めて思う。
同窓生の君より6歳年上になった今も、この風景、この彩が、僕は好きだ。


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