06/06/21 22:08:48 luZMWbYx0
睨む目が、オレの前にある。
実質3歳最強牝馬。
それでも所詮3歳のメスの威圧だ、たいした効果もない。
狭い馬房に2頭、顔をつきあわせている。
なんでもオスに慣れさせるためだと、あのオッサンのやることはわからねえが、
クリスエスよりオレが安上がり、ってコトだろう、なめられたモンだ。
オレがなにもしない、できないとでも思ってんだろ。
G31勝馬とG12勝馬じゃ、格が違うってな。
タップはファインに1歩近づく、緊張が一瞬にして高まった。
「よらないで、なんであなたがここにいるの、出てって」
後のないファインは、虚勢を張るように言った、タップにすれば
そんな威嚇は可愛いものだった。
「調教師さんは、随分期待してるんだな、お嬢ちゃんに。これでもオレは2着したんだぜ、
そのオレがわざわざ嬢ちゃんのメンタルワークの相手か。受けるオレのテキもテキだがな」
「メンタル・・。必要ないわ、力がなかっただけよ。みんな、期待しすぎなのよ」
そう言ったファインの顔は疲れからか、青ざめてみえる。
飼葉の入ったバケツには半分以上も飼葉が残っていた。
「オレはお前さんほどは期待されてなかったしな、気楽だった、その差かね」
ファインは黙ったまま顔を背けた、興味がない、とでもいう風に。
「とにかくメンタルワークなんていいわ。帰って下さい、そんな風にみられてたら
ゆっくり腰もおろせないわ」
「そうもいかねえんだ、おっさんらが決めたコトだしな。ま、気にすんなって、
明日になりゃ出て行くぜ」
「・・・・・・」
ファインは何かいいたそうだったが、結局喋らなかった、諦めたように腰を落とす。