08/05/24 10:59:56 gLLPaVyy
今年度の話題作紹介2
石持浅海「君の望む死に方」祥伝社ノン・ノベル
がんを宣告されたソル電機社長の日向貞則はある計画を思いつく。
自分を仇と思っている筈の、梶間晴征に殺されることにしたのだ。
裏で「お見合い研修」の役割を担っている研修旅行に、日向は梶間を含む四人を招き、
研修所に様々な形の「罠」を仕掛けた。梶間が犯人になることの無いよう、
細心の注意を払ってまで。しかし研修旅行に招いた社外の人間の一人によって、
計画は少しずつ齟齬をきたしだす。
普通のミステリーと違い、「事件が発生するまでを描いたもの」或いは、
「犯人が追い詰められていく様を描いたもの」を倒叙ミステリーと呼びます。
この作品はまさしく、被害者かつ真犯人の側から描いた倒叙ミステリーです。
設定で力尽きそうなこのネタを面白くサスペンスフルに書いており、
読者を最後まであきさせません。さらに事件が起こる前に起こる「謎解き」、
そして最後にある伏線が浮かび上がるこの構成。これを読まずして何を読もうか。
なおこの作品はシリーズもので、前作は「扉は閉ざされたまま」という、
事件が発覚する前に解決される、こちらも凝った設定となっています。
2つあわせて読んでみてください。