08/05/26 00:19:59 0
>>30
「……本当に俺を殺す気があるなら、自宅を聞き出した時点でグサリとやっていたはずだ」
そう言い、青年は私の刀を右手で払いのける、実に冷静でつまらない反応だ。
「あんたを泊めてやってもいい。だが、こちらの出した条件を呑んでくれるなら、
ベッドだけと言わずもっと良い寝床を提供してやるがな」
この状況で条件を出してくるとは、この青年はよほど神経が図太いのか、それとも私が危害を加えるつもりがないことを分かっているのか。
突拍子もないことだったら少し制裁してやろう。
「条件は簡単だ。
あんたが家に居る間、俺の家に異能者が攻めてきたら俺の代わりに闘うこと。これだけだ」
私はこんな事言われなくとも元々その気だった、というか能力を失っているみたいなので助けてやろうと思ったから、そもそも話しかけたのである。
しかし、これでは残りの二人が少し危険だ、何とかして誘えないものか、などと考えていると
「お前らはどうする? 物のついでだ、今なら泊めてやる」
なんて空気の読める男だ、自分以外の人間に興味がないみたいな雰囲気だった青年がまさかこんな事を言うとは。
「…ふざけるな。たった今殺し合いをした敵の家になど上がれるかよ。」
着物を着た青年が不機嫌そうに言い捨てる、話の分からない奴だな、痛い目を見せてやろうか?
「チッ…まぁ、リンの奴が泊まりたいと言うのなら話は別だがな。」
先ほどからの言動からして、血も涙もない戦闘狂かと思ったがそうではないらしい、面白い青年だな。
「や、やば!天さん!池上さんあっち向いてください!」
唐突に少女が声を上げ、二人の青年の顔を彼方の方向に向け、マントのような物を羽織る。
すると、少女の体は急激に成長し、小学生から女子高生くらいの容姿になった。
「はぁ…もういいですよ」
「はぁ、できれば泊めてほしいです池上さん」
これがあの少女の能力か?
いや、違う能力は封印されているはず、とすれば封印されたから変化したと考える方が自然だ。
変身?それとも能力のコスト?分からない事だらけだが、今は池上と呼ばれた青年に返事をする方が先だろう。
「ハハハハハハハ、面白れぇ、実に面白い奴らだな、能力が使えない状態で俺達に条件を出してくる図太い奴に、人の事を家無しとか言うくせにロリコンの奴と
いきなり成長する女とは、よくここまで面白い奴らが集まれたな、ハハハハハハハ」
師匠はいつもいきなり喋り出す、面倒なことになるのだから、喋る前に確認を取って欲しい。
当然、場の雰囲気は凍った、少女は成長するし、刀が爆笑し出したのだ、普通は戸惑うだろうな。
しかし、桐北とは違い状況を勝手に理解してくれそうな面子なのであえて説明はしない。
「コホン・・・・・・その、池上でよろしいかな?その条件乗りますよ」
私は刀を素早く振り、池上の頬に小さな切り傷を作る。
避けられたら恥ずかしかったが、池上の能力は身体能力増加系の能力ではないようで、私の斬撃には反応出来なかったようだ
「この通り、使えないことは無いと思います、私は籐堂院瑞穂、一日ですが宜しく願います」
そう言い、小さくお辞儀をして刀を鞘にしまうと、私は池上に握手を求めた