08/05/24 23:39:26 0
機関の貳名市地区本部へ到着すると、何やら構成員達が慌しく動いている。
私の姿を見つけて応対した者に話を聞くと、私をこの街へ招待した友人――
即ち、No.1が幹部のセカンドナンバーと虐殺部隊の投入を決定したという。
彼はどうも、街の異能者の数を半分まで絞り込みたい考えのようだ。
それも今から一日以内に。……溜め息が出た。
奴とは機関に入った時からの親友だが、どうも行動派過ぎる。
思った事を直ぐに実行する傾向が在った。……まぁ、それが彼の良い所でも在るのだが。
……同時に嫌な奴がこの街へお忍びでやって来ている事も聞いた。
この施設に居るようだが……。私は足早に応接室へと向った。
応接室前に着くと、中から嫌な感覚が滲み漏れてくる。
間違いない、あの女だ。私はドアノブを掴むと勢い良く扉を開けた。
中には観葉植物と豪奢なソファが置いてあり、そのソファの上で女が寛いでいた。
日本の巫女が着る羽織の下に赤いネクタイを締め、袴は腿の部分で途切れた妖艶な――。
いや、訂正しよう。妖艶というより奇抜といった格好の服装をしている。
加えて、薄い紫の口紅と目の下の隈は、見る者に不健康な印象を与える。
こんな外見を見間違える筈も無い、この女は――。
「No.5……!」
――『No.5』 外道院 柚鬼(ゆき)
この女は私でさえ胸糞悪くなる下衆だ。
まず、彼女は幹部の中でも世襲幹部と呼ばれる機関の要職を担うポストに在る。
要職というのは組織内粛清を目的とした部隊の統轄だ。
そもそも、外道院家は以前は高名な巫女の家柄だそうだが、
大昔に権力闘争で敗れ、千年近くも日陰者として細々と受け継がれてきた。
その間に憎悪を溜め込み、表に返り咲くという目的が薄らいで行き、今では完全に闇の住人と成り果てたらしい。
外道院自体も下衆だが、臣下である部隊の連中も下衆揃いだ。
一般人を巻き込み、略奪や強姦は当たり前。連中は別段気にも留めない。
外道院も9歳になる少年を犯して殺害した後、局部を切り取って親元へ送りつけた事も在る。
人間、外見に騙されてはいけないと言う良い例である。
ともかく、そんな性質であるから彼女は配下諸共機関の中では嫌われ者だ。
私も出来る事なら話しかけたくない。