【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ3at CHARANETA2
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ3 - 暇つぶし2ch21:戦場ヶ原の回想 ◆u5ul7E0APg
08/05/24 22:11:34 0
『ヤハウェケース№2天音滴、クラス2の覚醒を確認。戦闘員は、レヴェル7の戦闘態勢配備につけ。』
オペレータの無機質な声が戦闘員たちの耳に届くと、閑散とした孤児キャンプは一転、凄惨な戦場と化した。
「天音 滴。コードネーム『災骸嗜虐(ネクロフィリア)』。なるほど…こいつァ想像以上だ。」
金剛は感心した口調で呟いた。山田には理解が及ばなかった。
自分の愛する女性を殺せと言われたかと思えば、その女性が異能力を覚醒させて機関の戦闘員たちをゴミのように蹴散らしてゆく。
「あれがあの女の本当の姿よ。山田ァ!お前はあの女のことを、どれだけ知ってるってんだ?」
「・・・・・・。」
「家族だ絆だと口で言ったとて!相手に遠慮して本当のことも言えず、訊くことも出来なかったんじゃあねェのか!?」
「・・・・・・ッ!!」

「んなもんはなァ!『家族』とは言わねェんだよ!!」

金剛の口から出た正論に、山田は一言も反論することができなかった。
その通りだ。彼は彼女のことを何も知らない。どこから来たのか、なぜここにいるのか。スラムの中で出会い、一緒にいるうちに情が移ったにすぎないのだから。
―俺は、滴のことを何も知らない・…。

山田がそうしているうちに、金剛は動き出す。
右手の手袋を外し、能力を発動させると、彼の周りに光で書かれた数式が浮かび上がる。
数式はみるみるうちに広がり、滴の身体をすっぽりと包んでしまった。
「・・・お前には、俺の崇高なる計画の礎となってもらうぜ…!」
金剛の能力に包まれた滴の体からはみるみるうちに能力が消えてゆき、その意識すらも奪い去ってしまう。
「!!」
我に帰った山田はその光景を見るなり、無意識に駆け出していた。
「やめろ…。やめろぉぉぉおおおおおおお!!!!」
しかし金剛はそんな山田の悲痛の叫びも聞こえないかのように、眼の前の作業を淡々と進めていく。
「おおおおおおおお!!!」
『地核招来』―山田はその二つ名の由来となる能力を発現させた。左手に生み出した黒球を地面に叩き込み、岩盤を叩き割って金剛へ攻撃したのだ。
「・・・・。」
だが岩盤は金剛のもとへ届く前に、融けるように『分解』され、まるでコンピュータのプログラムコードのような『数式』となって金剛の身体の周りを舞う。

「・・・『フラームスの歪関数』」

金剛がぽつりとつぶやくと、彼の纏う数式が一瞬にして山田を包むまでにひろがり、彼の体に刻みつけられていく。
「がッ…がはぁあああああッ!!!?」
次の瞬間、山田の能力が歪曲され、彼自身に襲いかかっていた。
山田が自らの能力に苛まれている目の前で、金剛は躊躇うことなくその左手で眼の前の滴の身体を――貫いた。
「!!!!」
「フンッ!!」
金剛がその手を勢いよく引くと、彼女の体からまた別の『数式』が形となって『引きずり出された』。
用の済んだ彼女の肉体はゴミのように打ち捨てられ、山田はすぐさま彼女のもとに駆け寄った。
山田に抱きかかえられた彼女は、まだかすかに残る意識を振り絞り、声にもならない声で、山田に最期の言葉を贈った。
「・・・・ご・・・・・め・・・・・ん・・・・・・・・ね・・・・・・。」
直後。彼女の顔から表情が消えた。あの華のような美しい笑顔を、彼女はもう見せてはくれない。
山田は泣いた。
そして嗚咽にまみれた声で、金剛に叫んでいた。

「なぜだ・・・・。なぜなんだ・・・・・、金剛サンッ!!!」

ことを済ませ、満足げな笑みを浮かべていた金剛は、山田に対し、まるで興味もなさげに言い捨てた。

「…すべてはお前が『弱い』からだよ。山田権六。」

「意志を通したいのなら力を示せ。俺を斃してみせろ!!
 …いいか山田権六。この世界はな・・・『闘い』なんだよッ!!
 結果が全てを物語る!強い者の道理が通り、弱い者はただ虐げられる!!
 この女を殺したくない…そう思う資格は、お前には無いんだよ。なぜならお前は…弱いからだ。」

金剛は言い切ると、無造作に右手を赤髪の男に向け、手を開いた。その瞬間。
山田の記憶は、ここで途切れた。


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