08/05/30 01:38:43 0
>>151
池上は私が朝食を食べ始めてから少しすると食卓にやってきた。
その手には上下黒の服を持っている。
私の下着に合わせてくれたのだろうか、見かけによらず気の利いたことをする男だ。
服を私に渡すと池上は朝食に目を通すと椅子に座る。
「では、遠慮なくいただこう。……いただきます」
両手を合わせきちんと食前の感謝をした後で食べ始める、池上の礼儀作法を重んじる態度には好感が持てる。
食べ始めると池上は何か考えるような顔をした後、ぼそっと呟いた。
「……旨いよ、十分ね」
とか言いつつ池上の顔からは表情が伺えない、実はあまり口に合ってないのではないか?
特に話すこともないのでそのまま黙々と食べ続ける。
私は池上より速く食べ終わると、先ほど貰った服を身につける、その服は少し大きかったが問題なく着られた。
「結構似合ってるじゃねえか瑞穂、少し秘書っぽい感じがするな」
秘書っぽいと言うのがどんな感じなのかは分からないが褒め言葉として受け取っておこう。
自分でも黒い服のおかげで自慢の銀髪が栄えている気がする、なかなかセンスの良い服だ、気に入った。
すると池上も食事が終わったようで、私に話しかけてくる。
「見た感じ、山田は気付いていなかったようだが……夕べは異能者が襲って来たんだろう?
まぁ、家に居た全員が生き残っていたんだから、お前が約束通り追い払ってくれたんだろうがな。
……とりあえず、ご苦労さんと言っておく」
気付いていたのか、池上もレオーネの幻術にかかったようだから当然か。
それに私ではなく師匠が追い払ったのだが、わざわざ訂正するほどの事でもない。
「どういたしまして、私は決められたことをやったまでだ
そろそろ私は失礼されて貰うよ、長々と居座るのも悪いからな」
そう言い席を立つ、そして廃校で拾ったバッグに天之尾羽張と洗濯し終わったばかり濡れた服を詰め込む。
「君が何を知って、何を思ってこの戦いに参加しているのか分からないが、『機関』に敵対するというならいずれまた逢うことになるだろう
その時は敵ではなく味方として戦えることを望んでいるよ、私は」
最後に池上に一礼する、私が脅したとはいえ一日見知らぬ私を家に泊めてくれたのだ、このくらいの感謝は当然だろう。
そして、踵を返して池上の家から出る、改めてみても大きな家だ、ここに一人暮らしというのも少し寂しそうだな。