08/05/29 21:53:25 0
>>139>>147
「もしもし、店長ですか? 池上です。シフトのことでお話しておきたいことがありまして。
えぇ……これから四日、いえ一週間ほど旅行に行くことになりまして……
そうです、この時期にです。ですから、しばらくバイトの方には顔を出せませんので……」
>「池上燐介ェ!!!俺たちは貴様の言った通り好きにやらせてもらうッ!!
>だがなァ!俺たちの邪魔をすることになったら、今度は容赦なく叩き潰してやるからなァ!!!」
(……黙って出て行けば良いものを……いちいちうるさい奴だ)
「いえ、何でもありません。それより、えぇ……そういうわけでなので、申し訳ありません。
はい……はい……分かりました、では」
電話を切る。電話の相手は、バイト先のコンビニの店長だ。
バイトは週に三回程あるのだが、しばらくは機関の連中を相手に
闘いの日々が続くことだろう。そう判断した俺は、バイト先でしばらくの
休養を申し出たところだったのだ。
途中、山田のやかましい声に邪魔をされ、電話越しで店長に何か厄介な
事件にでも巻き込まれたのかと言われたが、何とか誤魔化すことができた。
窓から外を覗くと、山田と煌神 リンの二人がこちらを背にして立ち去ろうとしている。
「容赦なく叩き潰す……か。……全く、おめでたい奴だ」
半ば呆れ顔にそう呟くと、俺は窓に背を向けた。
調度その時、俺の部屋のドアがノックされた。
ノックしたのはどうやら籐堂院。朝食を作ったので来いとのことらしい。
彼女は朝食を作った代わりに、ということではなさそうだが、
着替えを用意してくれと付け加えた。
(まぁいい、その代わりということにして服ぐらい貸してやるさ)
俺はタンスの戸を開け、上下黒の服を取り出し、それを持って部屋を後にした。
籐堂院は食卓で、女としては少々「はしたない」と言える格好で食事をしている。
見るとそんな籐堂院が身に着けている下着の色は、俺が用意した服の色と同じであった。
こちらが意図的に色を合わせたと思われるの嫌で、俺は渡すのを一瞬躊躇したが、
そ知らぬ不利を決め込み、結局はそのまま服を渡すのだった。
服を渡した俺は空いている席に着き、並べられた料理を一望した。
味の方はどうかは知らんが、メニューとしては俺好みのものが揃っている。
もっとも、こちらの好みを知った上でのメニューではなく、
単に籐堂院自身が和食派なのだろうと解釈したが。
「では、遠慮なくいただこう。……いただきます」
両手を合わせて、人間の糧となってくれる食べ物に感謝の意を表し、
俺は食べ始めた。
焼き魚を箸で綺麗に割き、口に運んでいく。そして味噌汁をすする。
……意外と言っては失礼かもしれないが、これは俺の口に合っていた。
もしかしたら俺より味付けは上手いかもしれない。
まぁ、俺は今まで料理修行など全くせずに、これまで我流で料理をしていた身だ。
もし籐堂院が料理について通じていたなら、この結果は当然であるかもしれない。
「……旨いよ、十分ね」
思わず口でそう零したが、相変わらず俺の表情からは感情が窺えない。
─それからはお互いに喋ることも無く、黙々と食事を続けていった。
俺が次に言葉を発したのは、食事を終えてからだった。
「見た感じ、山田は気付いていなかったようだが……夕べは異能者が襲って来たんだろう?
まぁ、家に居た全員が生き残っていたんだから、お前が約束通り追い払ってくれたんだろうがな。
……とりあえず、ご苦労さんと言っておく」
【池上 燐介:籐堂院に服を渡し、食事を追える。】