08/05/24 16:44:05 0
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顔を朱に染めた廻間と、桜と呼ばれた少女
二人が仲良くまぐわうのを横目として、
脛の痛みに眉を引き攣らせながら、身を起こす七重である
鍛えられているとは言え、骨身への不意打ちは、尋常の苦痛ではない
さてもその傍ら、カレーに手を付けた白黒青年が、
総身の毛を逆立てて、呻きもがく
しばらくはそうしていたが、突然に彼の右手が離れて宙を飛び、
水の入ったコップを掴むと、己の本体の方へ引き寄せた
そして無事、青年は清浄なる水の恩恵を受けて、口の中の穢れを祓い鎮めた
その光景を見て、先の瓶を落としたタネを、七重はようやく察知した
>「な、七重…だったよな……アンタ、味覚の殺人兵器でも作ってるのか…?
寧ろ異能力、いや胃能力だ…これは…」
青年の問いかけに対し、七重は己に配分したカレーを一口いただくと、
真顔にて「カレーだ」と返答する
ここだけはどうしても譲らないつもりらしい
しかし、これが本当にただのカレーならば、二人も被害者がでる道理は無いはずである
場の雰囲気が少しく静まった後、
桜少女は、己の身に起きた事の顛末を話し始めた
要は下校中に誘拐されて、その後は何がなにやらよくわからない、という、
どうにも曖昧として頼りない内容であった
しかし、その話の中にあった『機関』という単語だけは、七重の興味を惹いた
とはいっても、話下手の七重のことであるから、
特に疑問を発することもなく、黙するのみであった
さて。日も大分落ちてきた、というよりは殆んど夜になりかけている
いたいけな女学生が一人で歩くには、少々危険な時間帯であろう
もっとも桜少女においては、既に危険すぎるほど危険な目に遭っている
そこで七重は気を利かせて、
「家まで送るか」
とは声をかけたが、言われた方の桜少女は、
小汚い七重の風貌を気に召さなかったらしく、
車に轢かれたドブネズミを見るような視線を投げかけた
「送ってやれ」
しばしの空白の後、七重はそう廻間に言いつけた