08/05/28 21:17:20 0
>>77,106,118,125
失意にあった俺の肩が叩かれる感触。振り向くと、先程気絶していたモノクロな頭髪をした男がいた。
怪訝な表情を浮かべかけた俺だが、男の表情はとても親近感の沸くモノで、
それは俺の粉みじんになったプライドを慰めてくれた。
「……ありがとよ。オマエさん、いい奴だな」
アンダードッグな経験直後の野郎二人組。端から見ればかなり情けない光景であること請負だろう。
そうして俺は、少し気を引き締めて立ち上がる。いつまでもこうしている訳にも行かない。
時間は無限ではない。やるべき事をやらなくては。
「さて……それじゃあ行くか。オマエさんにも話す事があるから、
時間に余裕があるなら居間に戻ってくれ」
居間には、恋島と自分で治療したと見える葦川、更に七重――って、寝てやがる!
俺は、この青年の神経の太い行動に、眼帯の上を指で掻きながらどうした物かと思考したが、
(……まあ、どっちとも取れる話し方をするつもりだったが、寝ていてもらった方がありがたいか)
そう考え、とりあえずそのまま話を始めることにした。
「……まあ、お前さん達も何か用があってここに来たんだと思うし、忙しいと思うが、
ここにいるのも何かの縁だ。一応話をさせてくれ。
お前らも見たり体験したりして、人によっちゃあ俺よりも知ってると思うが、
この町は今ヤバイ状態だ。そこら中で暴れてる奴等がいて、ゲリラの村みてぇにそこらの
奴に襲い掛かってやがる」
そこで一旦止め、様子を伺う。
恋島と葦川は身を持って体験したからか、割合簡単に事情は飲み込めるだろう。
恋島の方は、どちらかといえば表側の人間の空気がするが、それでも現実に確実に起きた事を
否定する事は無いと思いたい。
葦川の方は……表情からは何考えてるんだか読めない。
この女、ギャンブルやらせたら強いんじゃないか?等と考えつつ、俺は最期の一人がいる方へ目を向ける。
恐らくだが、この男も裏側の人間では無いにせよ、一般側の人間では無いだろう。
ここ最近の現状を見て、この男だけ一般人と考えるのは無理がある。
まあ、一応その可能性も鑑みて、俺は先程から対七重用の曖昧な物言いしかしていないのだが。
彼等それぞれの様子を見てから俺は、そのまま先を続ける。俺の最も言いたい事を。
「……それで、だ。簡単に言うと、お前ら今晩は全員店に泊って行け」
唐突の提案に、何人かが怪訝な表情をしたように感じる。俺は、軽く頭を掻きつつ続きを話す。
「あー、唐突なのは解ってる。けど、考えてみろ。お前さん達がどこに宿を持ってるのかは
知らんが、この町中で暴れている暴徒共がいる。で、そいつらがどこにいるか解らない。
そんな状況で、夜に高々数人で家にいる、或いは、誰がいるかも解らないホテルに戻る行為が
どういう結果を呼ぶかって事を。それを考えれば、この店はこの町の他の場所より、
安全だと思って、今こういう話をしてんだ」
実際問題、機関の人間がホテルに泊まっている可能性は随分と高いし、この店は他の場所より
どころか、この町でもトップクラスに安全なのだが、そこまでは言えないので黙っておく。
とにかく俺は、今日の戦いぶりを見る限り、最低連れてきた二人の身の安全だけは保障したかった。
「……まあ、俺の自己満足だし無理にとは言えねぇからな。帰るなら止めんさ。
ただし、もし帰らずに残るなら――成人限定で酒を奢ってやる!」
不適に笑って取り出したのは、朝置いたままだった酒。割といい品だった。
【国崎:精神回復。あくまで一般人として現状に曖昧に触れつつ、
全員に泊っていく様に薦め、酒を勧める。尚、七重が本当に寝ているかどうかは
確認していない。正体不明な梓川にはやや警戒気味】