08/05/24 12:37:49 O
時は二十数年前にさかのぼる。
世間は学生服を着た猫がブームになり総理大臣が選挙期間中に心筋梗塞で倒れる事件がおきたがまだ五歳の誠一郎少年には関係なかった。
誠一郎が習い事から帰ると屋敷の中が騒がしかった。
「父上、この騒ぎは何事ですか?」
誠一郎は父親の長束公誠に尋ねた。
「誠一郎、お前は部屋に戻ってなさい」
「わかりました、父上」
誠一郎は黙って父親の言葉にしたがった。状況を一瞬みただけでおおよその見当がついたからだ
父の足元には反抗する気力さえ失うほど打ちのめされた少年がたおれていた。そして少年をくみふせているのは傷だらけの家人たちであった。
家人とはいえそれなりの武術を使いこなしなかには異能力を持つものもいる。それを相手に互角の闘いをした少年は異能力者であるに違いない。誠一郎はそう結論づけた。
それにしてもあの知性も品性も感じられない粗暴な生き物を父はどこが気に入ったのかがわからなかった。
父が機関が生ぬるい現状維持を戒めあえて異分子を入れようとするのは想像がつく。だが、あれは度が過ぎた異分子だ。
これは誠一郎があれを軽蔑しているからではない。軽蔑すらしてないからだった。誰も野良犬が暴れても犬を軽蔑しないように。そう、誠一郎にとってあれは軽蔑に値しない生き物だった。
次の日、あれの名前が城栄金剛だということを知った。