08/05/27 20:39:22 O
>>96
その剣は、とても剣とは呼べるものではなかった。
剣と言うにはあまりに大きく、重く、そして大袈裟過ぎた。
文月は決してその剣の刃を人間に向けることはない。
自分が人を殺めれば、記憶の中の少女は、きっと悲しむだろうから。
だが─
闇夜にどす黒い血飛沫が飛び散った。
大剣にあるまじき速さで振るわれた刃が、一度に数人の亡者をの胴をかっ捌いた。
そのまま動きを止めることなく、文月の身体は亡者達の群れの中へと沈む。
ほぼ時を同じくして吹き荒れる、竜巻の如き剣風。
不死であるはずの亡者を、ただの人間が一方的に蹂躙していく。
いかに不死であっても、胴から真っ二つに切り裂かれては、もはや壁の役目は果たさない。
文月の剣に流麗さはない。しかし、一振りごと確実に、無駄なく、亡者を切り裂き、包囲網を突き崩していく。
包囲網を抜けた文月が、ツバサへと肉迫する。
その目に宿るは、唯憎悪のみ。
おそらく、囚われの少女のことも見えてはいないだろう。
【ツバサに斬りかかろうとする】