08/02/02 20:25:31
女の表情がみるみると暗く、そして変わっていく。
ぐいとまた一歩男に近づき、二人はもう息を感じれるほどの距離にあったのだった。
「わぁっ!どうしたんだい。
どうしたんだい、その顔は。
まるで、鬼、いや、お相撲さんじゃないか。」
女はそっと男の胸に指をかける。
そっとなぞり、いとおしく男の目を見つめた。
「そうよ、私はお相撲さん。もう駄目、耐えられない。
アナタのその強情な理論を理解するだけの頭が私にはないの。
そんなに難しく考えることができる頭が私にはないの。
私にあるのはツッパリをすることだけ。」
女は男を強く突き飛ばした。
男はうわぁと叫び声をあげ、畳を転がっていく。
体勢をなおそうと、起き上がった男に、女はすばやく近づいていた。
「はぁ!ツッパリ!」
男をはたく音が部屋に響く。
痛みに声をあげる男。
部屋からは乾いた音と男の悲鳴が響き続けた。
119:おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ
08/02/02 20:25:56
【猿対処】猿うざいよ猿
120:馬頭琴
08/02/02 20:26:10
赤く染まる川原を、男が走る。
女がそれを追いかけていた。
「駄目だ!怖い!怖いよ!」
必死に、声をあげながら、走った。
体力のない男は、どんなに必死に走っても、女との距離は広げられず
むしろ距離は縮まってすらいた。
「まって!待って!止まって。
アナタらしくないわ!走って解決させようなんて、アナタらしくない!」
その言葉を聴いて男はピタリ立ち止まった。
「そうだ、何をやってるんだ僕は。僕らしくない。
体力にものを言わせて解決させようなんて、まったく僕らしくないじゃないか。」
男は女の方を振り向いた。
女も立ち止まり、はぁはぁと強く息を切らしていた。
「どうしたんだ、僕は。
ただのツッパリ、ただのお相撲さんじゃないか。
僕は、この全身に流れる電撃のようなものに、ただ言い知れぬ不安があるのか、
いや、怯えているのさ、僕は。」
目を見開いて女をまっすぐ見つめた。
女は息切れがとまらず、頭がゆらゆらとゆれていた。
121:おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ
08/02/02 20:26:40
【猿対処継続中】
122:馬頭琴
08/02/02 20:27:14
「ハァ・・・ハァ・・・
間違ってなかった。鉄壁といわれたアナタにもやはり打ち崩す点はあるのよ。
アナタはあらゆるものを拒絶しようとする。
けれど、やっぱりそうよ、一度触れてしまえば、アナタはそう、とてももろいものよ」
はじめて笑顔を見せた。
それはとても小さな笑顔で、男には感じ取ることができるかできないか、
その笑顔も、時の中にすぐに飛んで流れていってしまった。
男は結局それには気づかず、キラキラとした瞳を女に向けていた。
「あぁ、僕は、意志とは裏腹に、この手が、足が、
僕とは別のイキモノとなって君をからめとる。
この手が、足が。僕は、それにあらがうすべを知っている。
はるか遠くへと逃げればいいのだ。けれど、一度触れてしまったらもう駄目だ。
このまま僕は楽になってしまいたい。と思うかもしれない。」
男が一歩、女に近寄る。
もう手をのばせば届く位置にいた。
「そうよ、無理をする必要はないの。
あなたは今まで知ったような顔をして何も知らなかったの。
アナタの手が、足が、その穴埋めをしようとして貪欲に走る。
それを止める必要なんてないのよ。あってはならないの。」
女が手をそっと前に差し出した。
男はその手のひらをじっと見詰めた。
123:馬頭琴
08/02/02 20:27:39
「あぁ、駄目だ!このままじゃ僕は、ついには自分に負けてしまう。
結局はこの手に、足に、僕の意志なんかは歯向かうことはできないっていうのか。
今までできていたのに、たった一つのツッパリで。なんて弱いんだ、僕は」
頭をかかえ、川原に叫んだ。
今までに無い苦悩に、男は破裂寸前だった。
「弱いのよ、私も、アナタも。意志なんて、ちっぽけなものなの。
どんなに強く、大きく、意志なんてものがあっても、
結局はツッパリ一つで崩れ去ってしまうのよ」
川原から、女に目を戻す。
赤く染まる女の表情がとても美しく見えた。
「あぁ、なんて弱い生き物なんだ。
僕は、ツッパリに、僕の20年間を否定されたのか、ツッパリなんかに。」
ひどくかなしいことなのに、少しのすがすがしさもあった。
男は自らのシャツの胸のあたりを掴んで、じっと考えこんでいた。
124:阿西
08/02/02 20:28:16
125:馬頭琴
08/02/02 20:28:27
「私もそうよ。
私だって、アナタがこんなに弱い生き物だったなんて、知らなかった。
すべて裏切られたような気持ちよ。どうしてもアナタがほしくて、ほしくて、
アナタを見つめすぎてアナタが透けて見えるほどに見たわ。
でも手に入れたアナタは、たった一つの点をツッパリでもろく、くずされて、
私はこんな人を求めていたのかしら?」
冷たい女の言葉に男は不安な目をする。
「どうなんだい?もう、僕は、君の顔しか見えない。
目がとても悪くなったみたいだ。
さっきまであった広い世界が、今じゃ君の顔だけになった。
君のその瞳が世界のすべてだ。僕は、もう、君の言葉を待つことしかできないんだ。」
二人の間に重い空気が流れる。
女は、男のすがるような瞳を見ていたら、すっと自分に気づいたようだった。
何も言わずに、女は男に背を向けて歩き出した。
カツカツと強く歩く女を、男は追いかけず、その輝く背中を見つめているだけだった。
「みじめね。わかったわ、私、最後にわかったの。
きっとそう、私に必要なのは十二畳の畳だって。わかってしまったの、さようなら」
126:馬頭琴
08/02/02 20:29:31
>>97-125
タイトル「猿、夕日に消えて」
台詞嫌いを直すために、台詞まみれにしたら、すごく書きづらかった。
描写が浮いちゃって浮いちゃって。
127:阿西
08/02/02 20:49:01
おつかれ
128:馬頭琴
08/04/12 01:33:52
きしむドアを開けて乾いた空の下に出た。
息は白く、すぅっと空気にとけていく。
のしかかる服が、靴まで重たく感じさせて、踏み出す一歩が硬い。
横目にキラリと光った。
誰かの庭の椿の葉。艶やかな朝露。
突然跳ねて頬を切り裂いていきやしないかと思うほどに鋭く美しかった。
にじんだ椿の首はすっかり落ち着いて、のんびりと通り過ぎる人々を見下ろしている。
アスファルトで固められた街の中、いやらしく見せる四角い土の区画
誰かが植えた木が、これもまたのんびりと電線に寄りかかっていた。
寂しさからか、わざわざにその土を踏んでみた。
しゃくり。
懐かしい感覚が足を伝わってきた。
驚いて、ゆっくりと土を覗き込むと、そこには霜柱がいた。
踏まれずに済んだ小さい氷の柱が、今も誇らしげに土を持ち上げている。
愛しくなって微笑んだ。
しばらくぶりだった。
去年、おととしも、こいつはずっといたんだろう。
気付かず毎年横を通り過ぎていた。
息を大きく一つついた。
長く白いものが、またすぅっと空気にとけていく。
彼らはいまだ土なんかを持ち上げて静かに輝いている。
それを全て丁寧に蹴り折って、そして気持ち悪くにやけながら満員電車へと向かった。
おわり
129:阿西
08/04/12 01:45:42
ニヤッ……とした
130:馬頭琴
08/04/12 01:46:46
一人称使わないで書いてみた。
131:阿西
08/04/12 01:50:07
あ、ほんとだ
132:伊藤伊織
08/05/04 12:59:38
ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ ごめんなさい・
ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・
ごめんなさい・・・
ごめんなさい・・・
ごめんなさい・・・
133:馬頭琴
08/05/06 05:41:47
10000年。
君と一緒にいたい。
ずっと一緒にいたい。
突然思った。
なんだかよくわからない時間、一瞬のまばたきの、閉じた方に、僕は住んでいる。
その、まばたきの中で、僕は何を見て、何を思って。
そんなこと、今までもこれからも、何も考えずに、ただ青や茶の世界とともに、存在し続けるだけでいるものだと。
君の、その足が不条理に踏み潰した若草が、ゆっくりと起き上がろうとして諦めるのを見て、
僕はちょっとした嬉しさを感じていた。
一瞬の、さらにその一瞬に、君は、世界を制する力をもっていることを、僕に見せてくれた。
誰もが持っていた。
ただ、気付かなかっただけだった。
笑顔で僕に近づいて、はじめて触れたぬくもりは、他の誰かでなくてよかったと僕に思わせた。
抱きしめたって、つれてはいけないのに。
僕はこの星が与えてくれなかったぬくもりを、めいいっぱい体に刻み込んでいた。
134:馬頭琴
08/05/06 05:42:18
鮮やかな赤が、とても君に似合っていた。
美しく咲いた一輪の花を、次の目覚めでも愛でていたいと、そう思った。
けれど、花は枯れるし、僕は水をやることすら許されていない。
それでも僕は、花瓶にさして、出かけるまで見つめていたかった。
太陽が照らし、部屋に満ちていく香りは今しかないけれど。
あるとき、出会った頃から馴染みのカフェで、「ごめんなさい」と君は微笑んだ。
そのときもう君は随分と大地に溶け込んでいて、あの頃の華やかさはなくしてしまったけれど、
鮮やかに僕の前で、僕に永遠を望ませる笑顔を見せていた。
10000年後に、おはようをくれる人はいない。
たったの20年の時間で、僕はまた眠りにつく。
すべてを知った君は、さよならを言わなかった。
ただ、そっとくちづけと手紙をくれて、そして僕はまた地下深くへ潜っていった。
手紙は、次に起きたら読もう。
僕はスイッチを押して、ゆっくりと瞳を閉じた。
135:馬頭琴
08/05/06 05:42:49
勢いだけで書いた。これだから朝は・・・。
136:馬頭琴
08/05/06 06:27:24
女1「この男前野郎!」
女2「男前ですって!」
女1「あぁ、そうだよ。そうさ。そうなればそうなるほどそうさ!」
女2「なんで私が男前なのよ!」
女1「そんな事、自分の胸に手あてて聞いてごらんなさいな!」
胸に手をあてる。
女2の胸「この男前野郎」
女2「な、なんですって?!」
女1「ほら、言ったでしょう?貴方今自分で自分の非を認めたのよ!」
女2「そ、そんな事ないわよ!私は男前じゃないわ!だいたいこれは私の胸が言った事じゃない!私じゃないわ!」
女1「そんなの痴漢が地下で俺じゃなくて俺の手がやったんだ!って言ってるようなものよ。やっぱり貴方は男前野郎だわ!」
女2「なんで地下なのよ!」
女1「そんな事どうでもいいじゃない!それより貴方よ、胸の声が男じゃない。やっぱり男前なのよ。これはもう男前を通り越して男だわ!」
女2「ひ、ひどい!親友だと思ってたのに!」
女1「親友よ。親友だからこそ言える事ってあるじゃない?」
女2「そんなの嘘よ!貴女はきっと心の中ではゲスが!とか思ってるのよ!そうだわ、貴女の胸に聞いてみればいいのね!」
女2は女1の胸に耳をあてる。
女1の胸「このゲス野郎」
女2胸から飛び退く
女2「な、なんですって?!」
女1「嘘よ!そんな事ないわ!貴女は親友よ!だいたいこれは私の胸が言った事じゃない!私じゃないわ!」
女2「そんなの痴漢が地下で俺じゃなくて俺の手がやったんだ!って言ってるようなものよ。やっぱり貴方は私の事ゲスだと思ってるんだわ!」
女1「なんで地下なのよ!」
女2「そんな事どうでもいいじゃない!それより貴方よ、胸の声までちゃんと貴女じゃない。やっぱり親友じゃないんだわ。これはもう親友を通り越してパンヤオだわ!」
女1「ひ、ひどい!親友だと思ってたのに!」
女2「パンヤオよ。パンヤオだからこそ言える事ってあるじゃない?」
女1「そんなの嘘よ!貴女はきっと心の中では親友だと思ってるのよ!そうだわ、貴女の胸に聞いてみればいいのね!」
女2は女1の胸に耳をあてる。
女1の胸「この親友野郎」
女2「なんですって!」
137:馬頭琴
08/05/06 06:30:03
空は青く、すみよい季節のこの頃。ただひたすらに長い直線の道を自転車に乗った男が走り抜けていった。
男はいつも通りの場所で、いつも通りに左折をした。そして、いつも通りに坂道を下り、いつも通りに右折した。
男は自転車をおり、足早に公的な空間に向かった。
まだ朝も早く、人もまばらなその公的な空間に向かった男は、その空間で自分のあるべき場所へと向かった。
男はその場所に荷物を置き、すぐに違う場所へと向かった。
そこには男の友人がいたが男の目的はそれとは違う所にあった。
男はその目的を果たすための絶対的条件である友人と、特に重要性を持つとは言えない会話を始めた。
いつも通りだった。
いつもはこの後、この場所へとやってきた人物をあたかも誰かがやってきたという目で見ることができた。
しかし今日は違っていた。
いつまでたっても目的は果たすことができなかった。
やがて男はその場所からの退出を余儀なくされた。しかたなく男はそれに従った。
時はたち、公的空間からの脱出が可能になった男は先程の友人の所へと向かった。
いつもはこの時間帯にあうことのない二人なので男はその友人の捜索に手間取った。
138:馬頭琴
08/05/06 06:30:34
男は友人を見つけ、ごく普通に会話を始めた。
男はその会話の中でさりげなく目的の情報を聞き出した。
情報を入手すると男はさっさと会話をきりあげその場から離れた。
男はすぐさま自転車の放置してある場所へと向かい、事前に調べておいたある場所へと向かった。
その場所へと到着した男はしばらくその場をうろうろしていたが、ふと思いつき鞄の中をあさりはじめた。
鞄の中から針金のような物をだした男は正面にある住居の入り口のドアへと手を伸ばした。
男は左右に注意を払いながら素早くドアをあけた。
住居へと入った男は慎重に足をすすめた。
その住居はいつも通りならまだ誰も人はいないはずだった。
しかし今日は一人がわけあってその場を離れる事ができなかったので、今ここには男を含めて二人の人物がいる。
男はベットに向かった。ベットには男と同じくらいの年齢の女が寝ていた。
男はベットの横に立ち鞄からロープとスプレーのようなものをだした。
女は横にある不吉な気配に気付き目を開けた。
しかしすでに遅かった。
次の瞬間、男は女にむけてスプレーを吹きつけロープで手足をベッドに固定した。
女は一瞬声を上げたが、すぐに猛烈な眠気が襲い全身から力が抜けていった。
6時を過ぎないとここには人は入ってこない。
男は暗闇の中に不気味な笑顔を浮かび上がらせた。