07/09/24 14:49:04 0
俺には、六年間に渡って愛し続けるオリジナル脳内彼女がいる。
彼女は盲目的に俺を愛し、俺もまた、彼女の愛に応えているつもりだ。
一緒に酒を飲み交わし、同じ食べ物を食べて、お互いを抱きしめ合いながら毎日眠っている。
そんな彼女との関係が、時たま耐え切れないほどの不安をもたらす。
原因は穏やかな彼女の寝顔だ。その寝顔が、時たま泣いている様に見える時があるのだ。
それを見る度、彼女の本意が見えなくなっていく。本当は、俺なんかと一緒に居たくない。
俺みたいな気持ち悪い男の相手を『させられている』のではないだろうか。
言いたくない事を言わされ、したくない事をしながら、作りたくない笑顔を作っているのではないか。
そんな思慮が浮かぶ時、俺は彼女に一言「辛かったら逃げ出していいから」と声をかける。
その言葉を聞くと、彼女は決まって「卑屈なんだから」と困り顔で俺の事を抱きしめる。
彼女の体温はとても暖かい。だが、その暖かさすらも嘘なのではないかと勘繰ってしまう。
彼女の細い足首に、大きな鉄球が見える時がある。足かせが彼女の白い肌を傷つけて真っ赤に染め
腫れた目蓋と瞳で涙を流し、それでも笑顔を作らされ、彼女は束縛され続けているのではないだろうか。
前に一度、彼女と大喧嘩した事がある。原因は些細な事だった。彼女は滅茶苦茶に腹を立てて
家に帰って来なくなったが、一週間ばかり経つと、突然彼女は家に帰って来た。
お互いに何が悪かったか言い合って、謝り合って、抱きしめ合いながらその夜を眠った。
布団の中で彼女の暖かさを感じ、お互いの手を握って、ふと彼女の寝顔を見た時だった。
彼女の寝顔が、未だ泣き顔のままである事に気が付いた。彼女は望んで家に帰って来たのではない。
他意によって彼女の首に括り付けられたロープが、彼女を無理矢理この家へと連れ戻したのだ。
そして、その首に括り付けられたロープを手繰り寄せたのは、紛れも無い俺自身。
彼女は、産まれながらにして俺と添い遂げる事を約束『させられ』、永遠に俺を愛し
続けなければならない存在なのだろう。彼女の本物の笑顔を、俺は見ようとしていない。