07/08/20 03:04:40 0
辺りを見回していると、後ろから先輩に声を掛けられた。
振り返って先輩を見てみると何やら腕を怪我していた。
「先輩……、腕どうしたんですか?」
先輩の右腕は包帯に巻かれ、そこからは血がにじんでいた。
見るからに痛々しい傷だった。
「……昨日、12時頃通報があってな。
なんでも院内で暴れているヤツがいるから助けてくれってな話だった。
俺は急いで病院にきたよ。確かに居た。
暴れてるなんてもんじゃない。人を食い散らかしてるヤツがな。
それが誰だったと思う?今日、病院に運び込まれたばかりのアイツだったのさ」
……人を食い散らかした?
どうなってるんだ?カニバリズムに急に目覚めたとでもいうのか?
呆気に取られている僕をよそに、先輩は話を続ける。
「何を言っても駄目だった。
というよりこちらの言葉は最初から向こうには通じてなかったのかもな。
生気を失った顔してこっちにのそりのそりと近づいてきたよ。
なまじ遠慮しながら拘束していたら、腕を噛まれちまった。
……もっともこの程度で済んで、ついてたのかもな」
先輩に噛まれた。噛む……。
僕はその時、昨日のあの気味の悪い生き物のことを思い出していた。
アレもそうだった。のそりのそりと近づき、生気の無い顔をしていた。
そして先輩に噛み付き、噛まれた先輩は同じようなモノになってしまった。
……とすれば、噛まれた目の前の先輩も……。