07/07/08 23:53:19 9PWZdsrT
このまま放っておいてもいずれ死ぬが、せめて苦しむ時間を少しでも減らしてやるのが、高野に残った唯一の良心。
「……さようなら、一条さん。皆のもとにいけるといいわね」
そう心にも無いことを、高野は一条に別れの言葉として送った。
「わたし、は……きっと、地獄いきだか、ら……」
哀しげな顔で一条はそう漏らし、そして、瞼を閉じた。
高野は、両手でシグ・ザウエルの銃口を一条の額に向け直す。
もしも、今のこの少女のように自らの正義を信じて、人間として正しいことを行える愚かさが自分にも備わっていたなら何か変わっていただろうか。
高野はそんなことをふと思ったが、すぐにそれが無駄な考えだと思い直す。
過去を振り返ることより意味のないことは無い。
過去があったのだから、今の自分が、そして一条がある。
だから今を基準として過去を思っても、それは、全くもって不毛なことだ。
そう思わせた自分の甘さを断ち切るように、高野は、一条に向けて最期の一撃を放った。
……その銃声は、さながら終焉へのカウントダウン。
姉ヶ崎の言うバトルロワイアルというゲームで殺さなくてはいけないのは、残り一人となったのだから。
穏やかな表情のまま額から血を流し、その場で眠る一条を見つめながら高野は呟く。
「死んだって、何も変わらないのかもね。だって―」
死に際の一条の言葉を思い出しながら、高野は、
「―この島自体が、もう、地獄なんだから」
救いの無いこの殺し合いに、終わりをもたらそうとしていた。