07/09/06 01:54:06
その男の顔が上向きになってやがて止まった。
その男の視線は、確実に俺の目のほうを向いている。
しかしこれは推測であった。
手ぬぐいの影に隠れて、男の目の部分が見えないのだ。
俺は窓際から離れる事を選ばなかった。
正確に言うと、その男見入ってしまっていたのかもしれない。
やがて、その男はにやりと笑った。
いや、笑ったように思えた。
でも確実に笑っている。
なぜ、断言できない?
やがて男は顔をうつむかせて、ゆっくりと歩き出した。
「 カサッ カサッ カサッ 」
「サッ サッ サッ サッ サッ」
「 カサッ カサッ カサッ 」
「サッ サッ サッ サッ サッ」
俺は男の後姿を追うこともなく、通り過ぎる音を聞くのを確かめて窓際から離れた。
少し疲れたような気がして、寝床に入った。
まるで、風邪薬を飲んだ後のように、強烈な眠さが襲い掛かり・・・
自分の心臓の音が大きく聞こえる。
耳にまるで水が入ったような気持ちがする。
心臓の音以外は、聞こえない。
時々眠る直前に感じる現象だ。
今日は疲れている。
普通はそこから夢も見ないで朝を迎える。