11/12/17 23:31:05.42
>>111
(宝剣と節を受け取って)
顔良「謹んで承りまする。なぁに、殿は堂々と構えておけばよいじゃろう。」
梁岱「頂戴いたします。勝利の報を都にてお待ちくだされ。」
袁紹より軍を任される、生粋の武人である顔良にとってこれほど名誉なことはなかった。
袁紹の幕下には自他共にライバルと認め、武を競い合っている文醜や淳于夐といった名のある将軍が数多く控えているからだ。
彼らに先んじて宝剣、節を手にできたのは実力ではなく単に運が良かっただけではないかと思えるほどだ。
…まもなく、いつものように不仲な参謀陣たちの舌戦が始まった。袁紹は不安を抱えながらも気丈に振る舞っている。
顔良と梁岱は、彼らのやり取りを目を閉じ黙って聞いていた。
梁岱「(袁紹殿をとりまく軍師たち…毒のある者もいるが優秀な人たちが揃っている。)」
----「(しかし野心が人一倍強い。軍事や政よりも己の身が大事なのか、この人たちは。)」
顔良「…(カーッ、また始まったか。いつ終わるんだ、この時間は。)」
----「(ワシはただ作戦を伺いに来ただけなんじゃがな。…ああ、こんな所にいつまでもおったら頭がどうかしてしまうわ!)」
顔良はカッとその大きな眼を見開くと、激論を戦わせる一同をギロリと睨んだ。
御前に入る前に手持ちの剣や長刀は預けてきてしまったため、今彼の手元にあるのは先程受け取った宝剣だけだ。
これがもし袁紹より賜った品でなければ、近くの適当な柱を斬り付けてやろうかとすら思った。以前の無知な自分ならそうしたであろう。
だが彼も袁家の将、一時の怒りにまかせて宝剣を主君の眼前で折るほどの暴れ者ではない。
ついに耐えきれなくなって、顔良は袁紹にこう言った。
顔良「…殿、申し訳ありませぬが退出させて貰えませぬかな?先刻食った魚にあたったのやも知れん、頭が熱くて仕方がない。」
当然、嘘である。こんな議論を聞いているぐらいなら己、そして兵士達の鍛錬に精を出した方が良いに決まっている。
いくら意見が対立していようとも最終決定権があるのは袁紹、彼の鶴の一声があればすべてが決まる。
自分はその決まった作戦に従って行動する、ただそれだけだ。顔良は頭を抑える仕草をしながら、もう一度彼らに一瞥をくれてやった。