11/12/17 12:25:36.54
さぁて、地べたの座り心地はいかが? おや、そんな怖い顔をなさらないでくださいな。
(男の言葉に獄卒はわずかに眉をひそめた。下級官吏の獄卒に許された男に対する唯一の非難行為であった)
ここは、退屈でしょうと今日は書物を持ってまいりましたのに。
(男の隣にいた若い男が獄中の男へと書物を手渡した)
脚を斬らないだけ私は優しいでしょう?
感謝、して下さいな。
(獄中の床には『史記』が転がっていた。「ホウキサマ」と若い従者は男を呼んだ。
逢紀は優美な動きで従者の声に振り返った)
お前にもそれ相応の教養を身につけてやらないとね。
お前は私の身内も同然なのだから。
もっとも、知識だけ身につけても活かす場所がない人間とはなんとも惨めだがなあ。
(哀れみの目で獄中の男を一瞥すると逢紀は、血色の良い唇を喜びに歪め高笑いと共に消えていった)