13/10/05 14:05:59.35 lHkCoVtO0
押井 野明に関しては何もなかった。これっぽっちもなかった。最後まで何もなし。理解不能。何故こいつが窓側にいるのか?と。未だに分かんない。
主役は目立った方がいいというだけでね。「野明自身でドラマをやれ」と言われれても、ぼくにはやれません。
実際ぼくは一回もやったことがない。野明のイメージってせいぜい「ロボットを磨いている女の子」というだけでしょう。
何でそうなったのかなんて、ぼくにはどうだっていい。それには、伊藤君がチャレンジして、ぼくに言わせれば轟沈した。
過去に遡って、アルフォンスっていう犬が出てきて、次は猫だったとか、バスケットやってたとかね。
―それが「トラウマ方式」ということですね。
押井 そう。それで野明という人物が描けたかと言うと、全然描けてやしない。現在で描けないものは、いくら過去に遡ったって描けやしない。
何故現在、ロボットを磨くのかを描き切らないと、一つの記号にしかならないでしょう。
アニメというのは良くしたもので、お客さんはそういう記号を喜ぶんだよね。同じことを繰り返すと喜ぶ。
太田の鉄砲と一緒でさ、ワンパターンになることで、お客さんの欲求を満たす。ぼくはそれが嫌だった。
絶えず客の期待を裏切るような方法でこちらの土俵に引っ張って来れなければ演出家の仕事じゃないと思っているから。
アニメが商品であるためには、必ずそういう一種おざなりなキャラクターが要るわけですよ。
意味不明に存在しているメカ好きの女の子(笑)。それに触れると雷が落ちる。
野明の頬に影一つ加えただけで、大騒ぎになって方々からクレームが来るとかね。
「うる星」のラムと一緒でね、疫病神…は言い過ぎだけど、触れないでおいた方がいいキャラクター。
歳とって学んだのはさ、そういうのは神棚に上げておけばいいんだと。
そうすれば、誰も騒がないし、ファンも喜ぶし、自分がやりたいことも出来る。
そう決意してやった途端楽になった。主役の野明ちゃんはあえて事を起こしたくないから神棚に上げておけと。一切触れるなと。下手に構わないで放っておけと。