12/12/17 06:05:25.08 lUAMn45c0
>>701
旧日本軍の内務班でのリンチ(山本七平『私の中の日本軍』より)
六尺椅子をひっくりかえしてテーブルの上にのせ、各人は原則として自分のベッドの前にテーブ
ルに面して立つ。週番士官が将校室から廊下に現れると、週番下士官が大声で「テンコー」と
叫ぶ。通常第一内務班から内務班長が「第一斑総員何名、事故何名、現在員何名」とっ
てから兵隊のほうを向いて「番号!」と号令し、兵隊に番号をかけさせてから「以上何名、事故の
内訳は……」といって報告するだけのことだが、どういうわけか「点呼は神聖である」といわれ、
一種の儀式のようになっていた。
全内務班の報告が終ると、週番士官から注意があり、週番下士官から、明日の勤務が達せ
られる。終ると内務班長からいわゆる「日々命令」の伝達があり、それが終ると宮城の方を向
いて軍人勅諭の「五カ条」を奉唱して解散になる。逃亡兵でも出ない限り、点呼そのものはこ
れだけである。終れば週番士官は連帯本部に行き、週番司令に「異常の有無」を報告する。
下士官は全部各人の個室に入る。三年兵・二年兵は寝る準備をはじめる。
そのとき、通常、二年兵の先任上等兵によって、その日の「総括」がはじまるわけであった。まさ
に「総括であった」。(ry
「近ごろのショネコウ(初年兵)は全くブッタルンデやがる」にはじまり、あらゆる細かいミス、兵器の
手入れ、食器の洗浄、衣服の汚れ、毛布のしわ、落ちている飯粒、編上靴の汚れ等々、一
つ一つのミスをあげてその一日を文字通り総括し、革命精神ならぬ「『軍人精神の不足』と断
定して」、そこで私的制裁すなわちリンチが始まる。
合図は「めがねをはずせ」「歯をくいしばって、足をふまえてろッ!」という声であった。あとは、殴打
の音、短いうめき、押し殺しきれなかった低い悲鳴、それが消灯までつづいた。
リンチの方法には、私が知っているだけでも、次のようなものがあった。ビンタ、整列ビンタ、往復
ビンタ、上靴ビンタ、帯革ビンタ、対抗ビンタ、ウグイスの谷渡り、蝉、自転車、各班まわり、編
上靴なめ、痰壷なめ、食缶かぶせ等々。以上だけでも、よくこれだけ嗜虐的なリンチを案出し
たものだと恐れ入るが、これ以外に私の知らないリンチがまだまだ数多くあったに相違ない。