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私はそのゴキブリの姿や動作を見て、気がかりになった。どうも最初に見た時から比べると、元気がない。
ちょこちょこ走る速さも鈍ったし、全体にやせて(肥ったゴキブリなんているのかしら)、ひからびた感じだ。
しかも、触角の一本が垂れたようになっている。
しばらく、タオル掛けの足元でじっと私の方をうかがって(と私は思った)、思いなしかよたよたした
足取りで体重計の下に滑り込んだ。
私は、そのゴキブリの姿を見て心配になった。
やせたし、羽のつやが悪いし、触角は一本垂れているし、足取りも重い。
この十日間ばかり、この手洗い兼洗面所兼脱衣所に閉じこもっているようである。
ゴキブリは、台所に落ちている油一滴をなめるだけで何日か暮らせると聞いたことがある。
極めて、わずかな食料で生き延びることの出来る強靱な生命力を持っていると聞く。
しかし、いくら何でも、洗面所兼脱衣所だ。何も食べるものはない。
十日間、ろくに食べるものもなく、飢えてやせ細ったのではないか。
私は、そのゴキブリの身の上がひどく心配になってきた。
手洗いを出て、連れ合いに訳を話して、「なにかゴキブリにやるえさはないだろうか」尋ねた。
私の連れ合いは、ゴキブリが大嫌いで、先日も私の弟が「にいちゃんの奥さんは怖いぜ。
はえ叩きでゴキブリを叩いたら、ゴキブリの手足もばらばらに砕けちったよ」と報告してくれたくらいである。
連れ合いは「ゴキブリに餌を上げるなんて、どうかしてるんじゃないの」と驚いた。
「まあ、そんな事言わないで。あいつは可哀想なゴキブリなんだから」と私は連れ合いをなだめた。
夜遅くなって、連れ合いが、「ちょっと、来てよ」と私を呼んだ。
連れ合いが洗面所の扉を細く開いて中を見るように言う。
すると、おお、あのゴキブリが、ビスケットを食べているではないか。
「お、食べている、ビスケットが気にいったかな」と私は喜んだが、連れ合いはあきれ果てて言った。
「冗談じゃないわよ。ゴキブリを飼ったりしないで。私が手洗いを使えないじゃないの」
ゴキブリ嫌いの連れ合いとしては、ゴキブリがいては用も足せないと言う。
「大丈夫だよ。あいつは悪いことはしないから」と私は連れ合いをなだめた。
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