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もともと看護師をしていたスウォト君は、日本のアニメ「NARUTO」の大ファンだった。
憧れの国で働けるチャンスがあると知り、日本行きを希望した。その理由を当時、彼はこう語っていた。
「第1は、お金のため。日本では最低でも月1000万ルピア(約9万円)を稼ぎたい」
その夢は簡単に叶った。日本で働き始めると、月16万円以上の収入が得られたのだ。
インドネシアにいた頃の月収1万円とは大違いである。
今年1月の国家試験は不合格だった。それでも規定の点数を獲ったことで、
来年に再チャレンジする権利を得た。しかし、スウォト君は仕事を辞め、6月に帰国していく。
「仕事に疲れました……」
インドネシアにはフィアンセがいるが、仕事の当てはない。
日本に残れば、最低でも1年は仕事を続けられる。しかも国家試験に合格すれば彼女を呼び寄せ、日本で永住することも可能なのだ。
「いや、もう日本はいいです。お金がすべてじゃないでしょ?」
スウォト君にとって、もはや日本は「憧れの国」ではなくなっていた。
「仕事面では十分に戦力になっていたのに、残念です」
「杜の家」の上野興治施設長は肩を落とす。施設側はスウォト君を最大限支援してきた。
国家試験の勉強のため、月2回は東京の専門学校へと泊まりがけで派遣した。
交通費や宿泊費を含めると、費用は年100万円に上った。そうした投資も無駄になってしまう。
インドネシアからの第1陣としてスウォト君ら介護士と一緒に来日し、1年早く就労期限を迎えた
104人の看護師は、すでに6割以上が帰国してしまった。
日本に残って国家試験に再チャレンジする者は少数に過ぎない。今年8月までに決断を迫られる
介護士の場合も、看護師と同じパターンとなる可能性が高い。
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