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イレッサに関して陰謀論含め諸説飛び交っているので簡単なまとめ。
結論を1行で言うと、森口氏がイレッサの有効性に関する研究をしていたのは事実だが、その結果はイレッサ使用の是非の論争にはほとんど関与していない。
イレッサはイギリスで開発された肺癌の薬。臨床試験の成績は優秀で効果は大きく副作用も少ない
夢の薬と喧伝された。日本は新薬認可では珍しく世界に先駆けて承認した。
ところが実際現場で使われてみると、大きく効果が出て病状が改善する人も多数出たが、
間質性肺炎になって亡くなる人も多数出た。そのため厚生労働省は急遽安全情報を出して注意喚起した。
添付文書に間質性肺炎の注意喚起はあったが、取り上げ方が小さかったのではないか、
臨床試験で危険性を低く見積もっていたのではないか、という観点から、イレッサは薬害であると
いう趣旨で、遺族達を中心として集団訴訟となった。訴訟に関しての詳細は冗長になるので割愛する。
その後、世界中でイレッサの安全性、有効性、特にスーパーレスポンスと呼ばれる薬が著効する患者さんに
共通の遺伝子がないか、間質性肺炎になった患者さんに共通の遺伝子がないか、という研究が世界各国で
盛んに行われた。そのうちの1つに森口氏が関与しているので今回話題になった。
が、森口氏の研究結果はイレッサ使用の判断に大きく寄与していない。
現在イレッサ使用の是非の判断にもっとも大きく寄与しているのは、IPASSと呼ばれる国際プロジェクトでの
大規模調査の解析結果。これはNew England Journal of Medicineという臨床医学に関しては世界最高の権威を
誇る雑誌に掲載され多くの人に精査されている。
特にEGFR遺伝子の変異がイレッサの効果に大きく寄与しているという発見はアメリカ人研究者グループによってなされた。
現在のイレッサに対する医療者の見解は、EGFR遺伝子変異を有する患者の非小細胞性肺癌の治療選択薬としては
ファーストライン、ただし効能に比して有害事象の発生のリスクも増大するため、慎重に経過観察しながら
投与すべきである、というものである。