12/10/13 07:39:49.58 U7ib+Su+0
歴史家はペストがヨーロッパ大陸からこつ然と消えた理由について、ある仮説を立てている。それは次のようなものだ。
ペストが流行していた数百年、ヨーロッパの町にはルーフ・ラット(クマネズミ)がたくさん住み着いていた。
藁葺き屋根の中や石壁の隙間、床下などに巣をつくり、人間のすぐそばで暮らしていたのだ。
だからこのネズミがペストにかかって死ぬと、寄生していたノミはさっさと人を宿主に選んだ。
18世紀に入ると、ヨーロッパのネズミに革命が起こった。それはまず東部地域ではじまった。
ロシア人は、アジア産の茶色のネズミがヴォルガ川を渡って西へやって来るのに気づいた。
この茶色のネズミはたちまちヨーロッパを席捲し、土着のルーフ・ラットに取って代わった。
今日、この茶色のネズミはノルウェー・ラット(ドブネズミ)と呼ばれている。
この新参のネズミは、ルーフ・ラットと違い人を嫌い、人から離れた所に住み着いた。
だから(仮説によると)茶色のネズミがペストにかかっても、人にうつす可能性はずっと低くなった。
その結果、各都市をたびたび恐怖に陥れたこの死病がヨーロッパから姿を消したというのである。
『人間ものがたり』 ジェイムズC.デイヴィス