THE IDOLM@STER アイドルマスター part7at MITEMITE
THE IDOLM@STER アイドルマスター part7 - 暇つぶし2ch274:創る名無しに見る名無し
12/02/20 13:55:15.81 UYmFHFM9
ssじゃなくて台詞集みたいな感じですが、ちょっと妄想してたらにやにやしてきたので投下させていただきます。
題して『チョコ渡されるときに言われたい一言』

 春香「プロデューサーさん! 私、プロデューサーさんのこと、大好きです!」
  真「プロデューサー! あの、ボク……プロデューサーのこと、大好きです!」
やよい「うっうー! プロデューサー、だーいすきですー!」
  響「かなさんどープロデューサー! ……うがぁぁぁ! これ、すっごい恥ずかしいさー!」
 雪歩「ぷ、プロデューサー! あ、ああああの! あの! えっと、えっと……だ、だ、だ、大好きですぅ!」
 真美「あ、えっとさ、にーちゃん、あの……好き、だよ?」
 亜美「にーちゃんだいすきー!」
 伊織「ほら、あれよ、その、えっと、少しくらいなら……す、好き、よ、あんたのこと」
 貴音「お慕い申し上げております、あなた様」
 千早「プロデューサー、あの、その……好き、です……」
 律子「ふふっ、大好きですよ、プロデューサー殿」
あずさ「私の運命の人になっていただけませんか、プロデューサー?」
 美希「はーにぃっ、大好きなの!」

脳内再生した時の美希の破壊力がやばい。

275:ふじた ◆07mafIj/ZY
12/02/21 22:11:49.69 8rL4ww9v
 高槻やよいが自主レッスンから帰ってくると、事務所の中に朝見かけた姿はどこかへと消えていた。
 祝日のことである。その日は予てから高木順二郎社長がこの日は会社丸ごとオフにする! と宣言していた日で、きょろきょろと辺りを見渡しても人っ子一人見当たらない。
 やよいが今事務所の中にいるのは、朝、彼女が間違えて出勤した際にこの部屋で事務仕事をしていた『誰か』がいたからで、自主レッスンを終えて戻ってきても部屋に入ることが出来たのはその『誰か』がまだ帰っていない、ということになる。
 しかし、その『誰か』の姿が見られなかった。

 ぽふぽふと歩いてデスク群に近付けば、その『誰か』のデスクの上にはすっかり冷めた珈琲がマグカップの中で静かに佇んでいた。
 パソコンの電源は入りっぱなし。一応スリープモードにはなっているらしく、電源ランプは気だるげに点滅していた。
 買物にでも出かけたのかな、と思う。
 けれど時間はお昼を大きく回り、そろそろおやつ時。昼食を買いに行くには少々遅くないかな、とも思う。
 じゃあ、どこに?

 やよいが思いつく場所は、一つしかなかった。

 果たして、件の人物はそこにいた。
 仮眠室である。
 この仮眠室はかつてのボロビルから移転する際に新たに設置されたもので、他にもやよいが先程まで居たレッスン室や以前の倍程に広くなった給湯室(という名の駄弁り場。キッチン付)等が所属アイドルや事務員の要望によって備え付けられていた。
 主に事務方の熱望、要望によって設置された仮眠室のドアを開けて、一番手前。八つあるベッドの一つに、こんもりと毛布の山が出来ていた。
 やよいの探していた『誰か』―プロデューサーである。

 プロデューサーは入口に背を向ける様に横になって、まるで電池の切れた人形の様に静かに眠っていた。
 あまりに静かでまさか、との考えが一瞬やよいの頭を過ぎったが、よくよく耳を澄ませば静音になっている空調に混じって微かな鼻息が聞こえて、ほっと胸を撫で下ろす。
 壁に立てかけられているパイプ椅子をベッド脇に設置して、座る。首の所までしっかりと毛布に埋まっており、後頭部しか見えなかった。

 やよいはプロデューサーの後頭部をじっと見つめる。すっかり寝入っているらしく、彼はピクリとも動かない。
 疲れているんだろうなぁ、とやよいは思う。当たり前だよね、とも。
 竜宮小町をはじめとした総勢12名のアイドルたちは、今、それぞれに雲を得て空高く昇り始めた所だ。彼女たちの仕事が増え、それに従い人員が増え、事務所が手狭になり、こうして新しく居を構えることとなった。
 まだボロビルに居た頃からの、謂わば最古参の一人である彼は、それに伴って今までのプロデュース業と事務仕事に加えて新米たちの教育にまで携わることとなった。
 今日、本来ならばオフであるにもかかわらず彼がこうして出社していたのも、消しても消しても増え続ける仕事を纏めて終わらせるためであったらしい。
 今を乗り越えれば―。黄昏時の事務所の中で、彼と音無小鳥、そして秋月律子の三人で目の下に物凄い隈を作りながら死んだような目で笑っているのをやよいは目にしたことがあった。
 労基法何それ美味しいの? なレベルの激務に身を置く彼らの姿には一種特有の絆があり、それを少々羨ましいと思う傍らで出来るだけ無理をしてほしくないな、とも思ったのを覚えている。

 小さな寝息を立てるだけの後頭部を、人差し指で軽く突く。んがぁ、と無意識の抗議が返ってきた。

 やよいの脳裏にあるのは、いつかの病室で横たわるプロデューサーの姿だ。
 あの時と原因こそ違えどこのままではまたあの光景を目にすることになってもおかしくはない。そしてそれはきっとやよいだけではなく、当時を知るものであれば誰もが思っているに違いない事である。

―でも、じゃあ、どうすればいいの?
 突いたことによって軽く跳ねてしまった髪の毛を撫で整えながら、やよいは考える。
―私にできること。何かないかなぁ。
 やよいに事務仕事を手伝うことは出来ない。精々がパソコンとにらめっこをする彼を応援したり、かっちかちに凝り固まった肩をマッサージするくらい。
 でも、他の『何か』ならば。
 『何か』出来ないだろうか。
 『何か』ないだろうか。

276:ふじた ◆07mafIj/ZY
12/02/21 22:12:22.93 8rL4ww9v
 静音になっている空調の吐き出す空気の音、小さな寝息、電波時計の駆動音。
 そして自身の呼吸の音。そんな穏やかな世界でやよいは暫し黙考し。
 ぱさぱさに荒れた髪の毛を撫でながら、不意に一つの考えに辿りついた。

 あまりに大胆な考えに、一瞬音が消え、思わず呼吸までもが停止した。
 あっという間に頭に血が上る。顔が熱くてたまらない。心臓が高鳴っていくのを自覚する。
 ごくり、と唾を飲み込んだ音は、想像以上に大きく響いた。

―だ、だいじょうぶ、へんなきもちは、ない、よ、うん……!

 心中で誰にともなく言い訳して、やよいはそっと靴を脱いだ。
 お邪魔します、と小さく呟いて、毛布をそうっと持ち上げる。起こさないように、起こさないように、身長に潜り込む。
 張り付いたプロデューサーの背中は、予想以上に温かくて、大きくて、汗臭くて、逞しくて、安心した。

「……たぅー……」

 口から吐息ともつかない不可思議な声が漏れた。
 背中から腕を腹の方に回す。額をぴったりと背中に押し付ける。
 心音が背中越しにどくどくと伝わってくる。上下する胸の震動が直接感じられる。

 今朝、プロデューサーはこんなことを言っていた。
―休日だというのに出勤したくなるくらい、ここがやよいにとって居心地の良い場所なら嬉しいな。
 目の下に見るに堪えない隈を拵え、珈琲の入ったマグカップ片手に、若干焦点の合わない目で、どこかからかう様な、けれど本当に優しい笑顔で。

 そっと目を瞑る。
 心音と、寝息と、温もりに身を委ねる。
 もし、もし、やよいにとってこの場所がどうしようもないくらいに愛おしく心地の良い場所なのだとしたら。
―それは、皆と……あなたが。
 いつか言えたら良いな、と思いながら、やよいはゆっくりと眠りについた。



 思いだしたのは、幼い頃の記憶で。
 母の、父の温もりに包まれて眠った夜は、どんな悪夢も吹き飛ぶくらいに安心することが出来た―。

277:ふじた ◆07mafIj/ZY
12/02/21 22:13:51.39 8rL4ww9v
以上、投下終了。これだけだらだら書いてもやりたかったのはやよいのたぅーのくだりだけです。

>>260です。二作目なのでコテとトリつけてみました。
では。

278:創る名無しに見る名無し
12/02/22 00:03:34.26 8+CcPZcw
>>277
雰囲気良くてほんわかした
GJ

279:メグレス ◆gjBWM0nMpY
12/02/23 23:12:59.48 XyDdt+eu
あーテステス。投下します。
タイトルは「四条貴音のラーメン探訪番外編」で。

280:四条貴音のラーメン探訪番外編
12/02/23 23:14:24.90 XyDdt+eu
お疲れ様でした。
型通りの挨拶をスタッフと交わしてテレビ局を出る。
目の前にはすっかり見慣れた高層ビル郡……ではなくそれなりの規模の町並みと、遠くに見える山と畑。
現在、四条貴音とその担当プロデューサーである自分は地方局での仕事を終えた所である。
ただ、いつもの仕事と唯一違う点を挙げるならば何を隠そうここ山形県は自分の故郷なのだ。


散歩がてらに駅までの道のりを歩く最中、隣を歩く貴音がわざわざこっちに向き直って言った、
「さて、ここ山形県は全国でも有数のらぁめん消費地と聞きました。そしてプロデューサー殿の故郷である事も存じております」
という言葉と、
もうその後は言わずとも解っているだろうなこのまま何もせずにサッサと帰ろうなどと言おうものならたとえ神様仏様アッラーエホバその他諸々が許そうともこの四条貴音が許さぬぞだから心おきなく貴様が知る名店へと案内するが良いさあ今すぐ早く迅速に早急に
と言わんばかりに期待に満ちた視線が少々痛い。
とはいえこれはもう予想通りの事だったのでうろたえる事無く、
「ご期待に添えるかどうかはわかりませんが、それでは行くとしますか」
そう軽く冗談めかして案内を開始する。


足は繁華街へ向かうことなくそのまま駅へ。そこから電車で揺られる事大体30分、お隣の天童市へ。
天童駅で降りてから真っ直ぐ国道13号線へ向かって5分程歩くとその店は見えてきた。
看板の下で回る水車が印象的な店だ。
タイミングの良い事に昼食の時間帯は過ぎて、店内は込み過ぎず空き過ぎずの程よい混雑具合。
大木を切り出したテーブルに二人揃って座る。
席に着いたところで貴音が声を潜めて問いかけて来た。
「プロデューサー殿……ここは……お蕎麦屋さんではないのですか? 私は確かにお蕎麦も好きですがやはり……その……」
「そ。お蕎麦屋さん。だけど貴音の期待を裏切るような事は無いと思うから安心して良いよ」
貴音を安心させるようにそう言って給仕のおばちゃんに前もって決めていた注文を伝える。
「鳥中華2つで」
「鳥中華2つですね。かしこまりました。少々お待ち下さい」
注文の品を待つ間、湯呑に注がれた蕎麦茶をすする。
香ばしい香りが心地良い。
と、少々不安げな貴音が声をかけてくる。
「それで鳥中華とは一体どのような……」
「それはまあ来てからのお楽しみという事で」
「そう仰るのでしたらお品書きは見ずに待つ事にいたしましょう」
確かに品書きを見てしまえばどんな料理なのかは一発で解ってしまう。
だが、あえてそんな事をせずにこちらの子供じみた悪戯心に付き合ってくれるという。
本当にありがたい話である。

281:四条貴音のラーメン探訪番外編
12/02/23 23:15:50.18 XyDdt+eu
そんなやりとりをしていると程なくして、
「ハイ鳥中華お待ちどう」
そんな声と共に二人の目の前に丼が置かれる。
具は鶏肉、三つ葉、ネギ、天かす、刻み海苔。
訝しげながらもまずはつゆを一口。
「少々甘めですがお蕎麦のつゆですね。ああ、胡椒も利いています」
そして麺を持ち上げた時、貴音の表情は驚きに変わる。
「なんと……これは中華麺ではありませんか」

そう、温かいそばつゆに蕎麦ではなくラーメン用の中華麺を入れたメニュー。
それがこの店の名物鳥中華の正体である。

おそるおそるといった感じで一すすり。
目を閉じて全ての神経を味わうという一つの事に傾けている。
味、香り、歯ごたえ、喉ごし。それら全てを確認するようにして最初の一口を嚥下する。
「……ふむ」
それきり貴音は一言も無く無言で食べ進める。
何も言わないという事はそれだけ食べる事に集中している訳で、つまりはこの味が気に入ったという証拠である。
程なくして丼を空にした貴音は近くの店員を呼び止め、
「同じものをもう一つお願い致します」
とのたまった。


さて、いつまでも貴音に見惚れている訳にもいかないので自分の分にも取り掛かるとする。
麺は中太の縮れ麺でだしと麺がよく絡む。
貴音が言っていた様につゆは甘めで、それに天かすと鶏の油も加わり
少々甘味が強くなりそうな所を強めに効かせた胡椒が引き締める。
適度な弾力を返す鶏肉は生臭さなど微塵も無い。
アクセントが欲しい時は小皿に載った漬物に箸を伸ばす。ちなみに今日の漬物は青菜漬けだ。
確かに美味いが、食べて感動や感激を呼ぶような物では無い。
だが、これはそれで良い。
毎日は無理にせよそれなりに食べ続けても飽きの来ない、それでいて偶に食べると安心する。
そういう味なのだ。これは。

そんな益体も無い事を思いながらこちらが食べ終わると、ほぼ同時に二つ目の丼を空にした貴音は
「大変美味しゅうございました」
そう言って手を合わせた。
店員のおばちゃん達もその様子を見て微笑ましく思ったのか笑っている。

282:四条貴音のラーメン探訪番外編
12/02/23 23:17:02.89 XyDdt+eu
「この鳥中華って最初は賄いとして従業員にしか出してなかったんだけど、
ここの蕎麦って所謂田舎蕎麦だから、確かに美味しいんだけどちょっと苦手っていう人も居るんだよな。
で、そんなお客さん向けに出してみたらって常連さんが提案してみたら大ヒット。とまあこんな感じらしい」
「成程……しかし世にはこのような物があったとは……まだまだ私も勉強不足のようです」

そんな事を話しながら新しく注がれた蕎麦茶を飲んで一息ついた後、満腹になった事で店内を見回す余裕が出来た貴音は少々意外そうに呟く。
「食事をするだけかと思いましたが、色々な物を売っているのですね」
「ここは老舗だしな。土産物代わりにもなるし貴音も何か欲しいのがあったら選んできていいぞ」
そうしてレジ近くの販売コーナーを物色していた貴音は蕎麦茶を手に取り、
「大変芳しい香りでした。東京に帰ってから雪歩に煎れてもらうとしましょう」
そう言いながら更に視線を巡らせると、ある物を見つけ雷に打たれたように動きを止める。
「なんと……鳥中華もお持ち帰りが出来るというのですか」
「この店の看板メニューの一つなんだしそりゃあるさ。流石に鶏肉は付いてないけどな」

次の瞬間瞬きもせずにこっちを見据える貴音。というかこの視線に晒されるの本日二度目だな。
「プロデューサー殿。古くから伝わる年越し蕎麦という行事について私は常々思っておりました。
無論伝統とは繋げてゆかねばなりません。しかし何故らぁめんではいけないのか。どちらも同じ麺類ではないのかと。
しかし、今年からはそのような事に思い悩まずともよいのです。このお蕎麦屋さんの手で作られたらぁめんならば!!」
「あー貴音。ここちゃんと通販もやってるから。流石に10箱も持ち帰れないから」

いやそんな恨めしそうな目で見られても困る。
結局すったもんだの果てに、東京の事務所に戻ったら即座に食べられるよう3箱だけ買う事にして、
後は欲しくなったら自分で注文するという事でこの件は解決した。

今更ながらにこれは映像に残してテレビ局に売り込んだ方が良かったのかもしれないなどと思いつつ、
自分の故郷の一部分でも気に入ってくれた事は素直に嬉しかった。
こうして、僅かな時間ではあるが俺の地元案内は終わりを告げたのである。

そして帰りの新幹線の中、鳥中華の味を思い出しているのか満足げに微笑む貴音の顔を見ながらふと思う。
(……事務所で食べてる時に誰かに発見されたらどうすればいいんだろうな。特に亜美真美)
1箱3食入り。それが×3で合計9食。その時居る人数がこれ以下ならば良いがもしそれ以上だった場合……
過ぎた事はどうしようもない。俺はそれ以上深く考える事を放棄する事にした。
皆売れっ子なんだ。そうそう大人数が集まる事は無いだろう。

283:創る名無しに見る名無し
12/02/23 23:19:01.24 XyDdt+eu
以上投下終了。
……店名は出してないからセーフ。セーフです。
いやまー上で「地元出身のモバマスキャラに紹介させようぜ」とか抜かした割りにはフツーに貴音さんだったんですが、
いやだってコレ他のキャラ使ったら逆に怒られますよね? とか思っちゃったんで。ええ。
年越し蕎麦云々~の台詞はこれホントは年末に投下するつもりだったんですが、単に私の遅筆のせいでここまでズレこみました。
ちなみに色々と郷土料理調べてたら、
『どんがら汁』
などという誰かさんにピッタリのブツがあったりしたんですが、そっちは多分書かない。


>>273 あれ……なんかこの美希の後ろにのび太クンが見えるよーな……
んでwikiの件。あー。そーかそれで良かったんだよなー。何を難しく考えてたんだろう自分。
しかし200本ですか。素直に凄いとしか言えないですハイ。

>>274 そういった1レス物でも構いませんのでまた何か浮かんだらどうぞお越し下さい。

>>277 うわーうわー何コレー。2828って感じでもなくてただなんか凄い幸せな気分になるんですけどー。


それではこれにて失礼。山形県民でしたー。


284:レシP ◆KSbwPZKdBcln
12/03/22 06:38:23.21 kactiRxB
おはようございますレシPです。朝の日差しも明るくなってまいりましたが
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
さて、1本書きあがりましたので投下させていただきます。
伊織で『いちばん咲き、みつけた』、本文3レスです。

285:いちばん咲き、みつけた(1/3) ◆KSbwPZKdBcln
12/03/22 06:39:28.73 kactiRxB
「ふう、これが噂に聞く『テッペン超え』なのね。こんな時間まで外にいる
なんてウソみたい」
「もう二度と勘弁してくれよな。中学生をこんな時間まで連れ回したとあっちゃ
世間様に顔向けができん」
 仕事帰りの車の中。
 生まれて初めての体験に酔いしれている私をほったらかしで、プロデューサーは
お小言モードでハンドルを握っている。
「共犯者が正論ぶったこと言ってるんじゃないわよ」
「へえへえ主犯サマ。念のため言っておくがな伊織」
 赤信号で停まった隙をついて、プロデューサーはこっちに顔を向けた。
「機材トラブルと共演者全員の口裏合わせのもとで成り立ってるんだぞ?これが
バレたらお前だけじゃなく、765プロ全体の社会生命に関わるんだからな」
「私としてはあんたが不安の余りボロを出しそうで怖いくらいなんだけど」
 ことと次第はこうだ。レギュラー番組の改編特番収録が、不慮の事態で22時
までに終わらなくなった。法律に縛られる窮屈な立場の私は本当なら就業を止め
なければならないが、番組的にも私の出番的にも絶対省略できないコーナーが
まだいくつも残っていた。私と共演者、そしてスタッフのみんなで目配せを
交わしあったのはその直後。
「事情は事情、責任は責任だ。お前のお父さんや新堂さんにまで片棒担がせて
申し訳ないよ、俺は」
「そんなの気にすることないわよ。パパはこういうのよく心得てるから何も
聞かずにオーケー出してくれたし、新堂なんかむしろいつも通りに運転手やり
たがって大変だったんだから」
 詳しくは教えてくれないけど、パパと新堂は『もっと無茶が許されていた時代』
に、今の法律や常識からするととんでもないことをたくさんしてきたらしい。
だから規制や条例にケンカを売りながら日々を過ごしてるみたいな芸能界の
ことを内心面白いと思っているようで、表立っては何も言わないものの私が
やりたいようにやらせてくれるのだ。
「お前んちの車は目立つからな。余計な勘ぐりどんと来いになっちまう」
「『新聞記者だろうが私立探偵だろうが全て撒いて見せますぞ』って言ってたわよ」
「ならその腕前は別の機会にお願いします、って伝えておいてくれ。今夜は
カーチェイスの気分じゃなかったんでな」
 かれこれ15分も走ったろうか、どうやら安心だとプロデューサーが言ったのは
住宅街の並木公園を走っている時だった。
「よもやと思っていたがついてくる車もないし、局の出口は万全だったしな。
もう2、30分で着くぞ」
「そりゃそうよね、私は後部座席で寝そべってたんだから」
「わかってくれよ、大義名分ってのは必要なもんなんだ」
 まあ、頭ではわかってる。お尋ね者みたいな扱いがなんとなく気にくわなかった
だけだ。
「はいはい。ねえプロデューサー、ちょっと車止めてよ。もう人目は気に
しなくていいんでしょ?」
「うん?どうした、忘れ物でもしたか?」
 いぶかしげにしながらも車のスピードを落としてくれる。ハザードランプの
カチカチという音が大きく感じるのは、周りが静かだからだろうか。
「違うわ。今日はいい仕事ができたから、余韻を楽しみたいかなって」
「余韻?疲れてないのか?」
「体力満タンってわけじゃないけど。でもほら見てよ、窓の外」
「外って……おー」
 プロデューサーが首を巡らし、驚いたような声を上げる。

286:いちばん咲き、みつけた(2/3) ◆KSbwPZKdBcln
12/03/22 06:40:02.42 kactiRxB
 このあたりは歴史のある高級住宅地で、いま走っていた道は計画中断した
国道の一部。中央分離帯を拡張して公園にして、今や道路を覆うほど育った
並木は、それはそれは見事な枝葉の屋根をかざしかけていた。
「桜の木か。まだ蕾か、でも、そろそろ咲きそうだな」
「気づいてなかったの?ひょっとして」
「久しぶりの道でな、上見る余裕なかったよ」
 たまらなくなり、ドアノブを引きながら言う。少し興奮していたみたいで、
ドアの隙間から夜の街に声が響いた。
「ね、ちょっと歩かない?」
「おっおい、伊織」
「もう人も全然いないし、平気でしょ?行きましょ」
 かまわず外に出て、そっと深呼吸。少し気温の下がった湿った空気が、木の
香りを鼻から肺に運んだ。
 私を追いかけて外に出たプロデューサーがドアをロックする音を聞きながら、
歩道側の桜の根元に立って上を見る。まだ星空が透けて見えるようなちょっぴり
寂しい景色だけれど、ところどころに膨らんだピンクの蕾のいくつかは、指で
つつけば今にも弾けそう。
「ふうっ、気持ちいい」
「味しめるなよ?不良娘」
「うるさいわね」
 髪を揺らす風がくすぐったくて楽しくて、笑っていたら後ろから渋い声が
飛んできた。片手にコーヒーとオレンジジュースの缶をぶら下げている。
自販機の音には気づいていたけど、どうやらこれを買っていたらしい。
「もし私が不良になったとしたら、それはきっとこんな時間まで仕事をさせる
あんたのせいだわ」
「自分から仕事長引かせたクセに」
「ふん、私のプロデューサーなら機材トラブルくらい未然に防ぎなさいよねっ」
「無茶言うな」
 自分でも無茶だと思ったけれど、まあ本気じゃないのはお互い様みたいだし。
ゆるい下り坂になっている桜並木を歩き始めると、プロデューサーも後を追って来た。
「桜の木っていいわね。華やかさが好きだわ、まだ咲いてないけど」
「俺は咲く前の桜も好きだよ。知ってるか?」
 オレンジジュースの缶を手渡し、自分はコーヒーのプルタブを引っ張る。
「一番咲きに出会えると、その春は運がいいんだ」
「一番星みたいなもの?」
「植物は夜育つからな。ひょっとしたら今日、見つかるかもしれないぞ」
「ほんと?私がみつけるからあんたは目をつぶってついて来なさい」
「コケるわ」
 一番咲き。
 普段からいいかげんなことばっかり言う奴だけど、そのフレーズが気に入った。
ここの樹々の咲き逸る様子はまさにうってつけで、私はもう上ばかり見て
並木道を歩き始めた。
「あれは……まだね、あっちは大きいけど全然つぼみだし。んー、意外と
見つからないもんね」
「こんなにあるもんな」
「やっぱりあんたも探してよ。でも見つけそうになったら目をつぶりなさいよね」
「難易度上がってる?」
 プロデューサーを従えて、二人で梢を目で追って。夜のしじまに響くのは
彼と私の弾む息。

287:いちばん咲き、みつけた(3/3) ◆KSbwPZKdBcln
12/03/22 06:40:50.09 kactiRxB
「それは?」
「全然だな。お、伊織そっち、いい色してないか?」
「どこ?……なによ、向こうのビルの航空灯じゃない」
 いつの間にか一番咲きを見つけるのが二人の目的みたいになっていて、
夢中で目を走らせた。こうして二人で同じ目標を探すのって、なんだか普段の
アイドルで活動しているのとダブってくる。
「伊織そこそこ。その隣の木の、いやもっと右寄り」
「わ、おっきい。でもまだ固そうね……ってプロデューサー、あんたの頭の上の
それは?」
 二人であれこれ言い合って、あるかどうかもわからない花を探して。でも
こんな風に二人で進んでいけばきっと見つかる、そう思った。
「なあ伊織、坂の下まで着いちまうぞ」
「なに言ってるのよ、あきらめたらそこで試合終了でしょ」
「誰のセリフだよ……あ」
「えっ」
 彼の視線がふわりと上がって、私がそれに釣られると……。
 月光が透ける、ほのかな五弁。
「みつ―」
 そのとき踏み出したブーツが、地面を捉えそこねた。
「―ふぁ」
「伊織っ!」
 植え込みの縁石を踏み外したらしい。あっと思う間もなく、私に黒い影が
覆いかぶさる。私の体は水平から斜め45度の角度で、とっさに追いすがってきた
プロデューサーの両腕に支えられていた。
「大丈夫かっ?」
「あ……ありがと、大丈夫よ……って」
 そう、まるでタンゴを踊るペアのように。一瞬でほっぺたが熱くなって、
私は彼を蹴り飛ばした。
「どこ触ってるのよ変態っ!」
「あ痛!ひでえ!?」
「ゆ、油断も隙もないんだからっ!」
 こんな石畳で転んだら擦り傷くらいは免れない。それを身を挺してくれた
プロデューサーはほんとなら、誉められてしかるべきだろうけど。でも、こうでも
言わなきゃ私の口が感謝以上のセリフを洩らしそうだったから。
 大きく息を吸って、平常心平常心と心の中で唱えてから、あらためて桜を見上げた。
「でもほら、あんたのおかげね。見つけたわ、にひひっ」
「ん、そうだな」
 右手を精一杯伸ばしてみた。もちろん木の上のそれには届かないけど。
 でもいつか、私もああして咲いてみせる。あの高みに立って、回りの花にさきがけて。

 私はそう決めて、肺一杯に夜の空気を吸い込んだ。
「いちばん咲き、みーつけたっ!」
「わわ、伊織、時間考えろっ!しー、しーっ!」





おわり

288:いちばん咲き、みつけた(あとがき) ◆KSbwPZKdBcln
12/03/22 06:45:25.39 kactiRxB
以上でございます。ご笑覧いただければ幸い。

うちの近所でも「さくら祭り」なんて看板が目に付くようになりまして
満開が待ち遠しい一方、その前の力を溜める樹々がたたずむ
風情もなかなか見所があるものです。
鈴なりになった薄桃色の蕾の下を歩きつつ、ふとワンシーン
思いついた次第。

ではまた。みなさまよき春を。

289:創る名無しに見る名無し
12/03/25 13:13:48.58 oXblgmro
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
5. ファーランド サーガ1、2
6. MinDeaD BlooD
7. WAR OF GENESIS シヴァンシミター、クリムゾンクルセイド
SS誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって

290:ふじた ◆07mafIj/ZY
12/04/07 18:53:55.18 YLtxo5qP
投下します

291:ふじた ◆07mafIj/ZY
12/04/07 18:54:38.72 YLtxo5qP
 事務所に戻ると、美希がソファの上で寝ていた。
 ごろんと背を向けてくぅくぅ寝息を立てているその姿は、髪の毛のボリュームも相まってともすれば金色の毛虫にも見えて少し不気味である。
 少しだけ膝を曲げて、背を丸めて、シャツがめくれて素肌が見える。

「風邪引くよ」

 手近なところに毛布が見当たらなかったので、着ていた上着を代わりにかぶせた。
 どうせ暖房も入れるし、そろそろ少しずつ温かくなってきたおかげで普通に行動している分には問題ない。
 ただ彼女みたく背中がちろりと見えていると寒いのではないだろうか、との配慮である。
 あと、万が一担当アイドルに風邪引かれると私が困る。下げなくて済むなら、あまり頭は下げたくない。

「しっかしまぁ元気に寝てること」

 もこもこ金髪に隠れる寝顔は、良い夢でも見ているのか満面の笑みだった。
 時折口元がもごもごと動いて、何か食べているのか喋っているのか。はにぃ、と動いた気がした。はちみつだろうか。

「ほっぺたもちもち。肌すべすべ。うらやましー」

 無性に腹立たしくなって頬を突く。
 ぷにぷにつるつる。弾力抜群で肌触りも良好なそのほっぺは、癖になりそう。
 自分が若い頃はどうだったかしらねぇ、と思いながら、無意識のうちに空いている手を自分の頬に添えていた。
 かさ、っとした感触に、私は泣きそうになった。

「人が必死で駆けずりまわって仕事探してるってのに、この子はもう……」

 腹立ちがエネルギーへと変換され、頬を突く速度が上がる。
 ぷに、から、ぷにぷに、へ。
 ぷにぷに、から、ぷにぷにぷにぷに、へ。
 寝苦しそうに少しずつ顔を顰めた美希は、連打速度が高橋名人もかくや、といったところまで上がった所で、鬱陶しそうに私の手を払ってのそのそと起き上がった。
 ぱさり、とかけていた上着が床に落ちた。美希はそれを気にすることもなく、眠たげに眼を擦りながら、

「……おにぎりとハニーがいないの」
「おにぎりとはちみつとはまた斬新な組み合わせね」

 しかも『いない』って。アレらはいつから食い物からランクをあげたのだろう。

「あふぅ……。もうひと眠り……」
「起きたなら話したいことがあるから、寝ないでもらえると嬉しいんだけど」
「んー、なぁに?」

 床に落ちた上着を叩いて埃を払い、デスクに放り投げて、鞄から書類を取り出す。

「ミキ、スーツはもう少し丁寧に扱うべきだって思うな」
「いーのよ、やすもんなんだから。それよりお話、お話」
「おもしろい話?」
「お仕事の話」
「おやすみなさいなの」

 背を向けごろん、と横になった金髪の尻尾を思い切り引っ張る。
 美希は、この世のものとは思えない程甲高い悲鳴を上げて飛び起きた。

「痛い痛い痛い!」
「ほぉら、ちゃんと座んないともっと痛くなるわよー」
「ヤ! 座るから、座るから放して!」


292:ふじた ◆07mafIj/ZY
12/04/07 18:55:33.63 YLtxo5qP

 涙声の嘆願に応じて尻尾から手を放した。
 何本か抜けた髪の毛は掃除の手間になるから手のひらで丸める。あとでゴミ箱に捨てるとしよう。
 美希は、うぅー、と唸りながら涙目で私を睨みつけた。

「……アイドルに手を挙げるなんて、プロデューサー失格だと思うな」
「毛繕いよ。あるいはコミュニケーション。何も問題は無いわ」
「へりくつぅー……」
「律子も呼ぼうか?」
「お仕事って、なに?」

 名前を出しただけで態度が改まった。神様仏様律子様である。

「またちっちゃな雑誌のグラビア?」
「そー」
「ミキ、早くテレビとかCMとかに出たいの」
「まだまだ駆け出しなんだから、ちっさいことからコツコツと。はい、読んでおいてね」
「うぅ、文字ばっかりで頭痛くなりそう……」

 差し出した書類に、いやいや目を通す美希を見ながら、私はふと思う。
 よくもまぁ、こんな文句ばっかり言う子をプロデュースしているものだ、と。

 私と同時期に入社した彼は、菊地真、萩原雪歩、如月千早という三人を見事トップアイドルへと導いた。
 アイドルを引退した後プロデューサーへと転身した秋月律子は、竜宮小町というアイドルユニットを編成し、今やテレビに舞台にライブに雑誌に引っ張りだこである。
 私たちが入社するまで一手にプロダクションを支えていた先輩は言わずもがな、最近高槻やよいという少女をどこかからスカウトしてきて、既にランクCに手が届きそうだという。

 それに対して、私は。

 眉毛をハの字にしながら、眠たげに書面を動く美希の瞳を見つめる。
 猫の様に気紛れな瞳。眠ったり笑ったり怒ったり泣いたりくるくると表情を変えるその綺麗な目。

「……そういえば、それに魅かれたんだっけ」
「何か言った?」
「何でもないわよ」

 不思議そうに小首を傾げる美希に、苦笑を返した。

 第一印象は最悪だった。
 なんか甘えたこと言っているし、お世辞にもやる気があるとは言えないし、こちらを敬う気は微塵も見られないし。
 最近の若いもんは、なんて年寄り気取ってぶちぶち文句を言いながら、それでも何とか距離を縮めようと必死に話題を振っていた時。
 彼女が言った。
『ミキね、もっとキラキラ輝きたいの』
 そういった時の彼女の眼が、いつもの眠たげで気だるげなものではなく、どんな煌びやかな宝石よりも美しく輝いているのを見て。
 社長風に言って、ピン! ときた。
―簡潔に言えば、惚れた、のだ。彼女のその瞳に。


293:ふじた ◆07mafIj/ZY
12/04/07 18:56:04.51 YLtxo5qP
「……お腹空いたの」
「おにぎりあるよ。お昼の残りだけど。食べる?」
「本当!? 食べる!」

 鞄からちょっと形の悪い、少し硬くなったおにぎりを取り出す。
 嬉しそうに包みを開けて被りついた美希は、次の瞬間渋い表情になった。

「……これ、何が入ってるの?」
「栄養剤とかサプリメントとか」
「……ざんしんだね」

 それでももぐもぐと食べる辺り、おにぎり好きは筋金入りだ。

 机の上に放り出された書類を片付けながら、思う。
 未だに甘ったれたこと言ってるしやる気にムラがあるし時々そこの人とか呼ばれるけれど。
 いらいらしたり喧嘩したりすることもあるけれど。
 ピン! ときた感覚を、私は信じる。

 この子は、絶対、トップアイドルになる。

「……ねぇ、美希」
「なぁに?」
「頑張りましょうね」

 美希は最後の一口をもぐもぐごっくんと飲み込んだ後、

「頑張るのはミキじゃなくってプロデューサーなの。ミキは天才だから頑張らなくてもすぐにトップに行けるし」
「てめぇこのやろう」

 生意気言う美希の尻尾を引っ張りながら、思う。
 早くこの子が、才能を存分に発揮できるように。
 早くこの子が、キラキラ輝けるように。
 頑張ろう。
 頑張らなきゃ。
 ……頑張ろう、ね?

294:ふじた ◆07mafIj/ZY
12/04/07 18:57:24.17 YLtxo5qP
投下終わり。以上、美希と女性Pの話でした。やっと規制が解除された……!


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