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クロスオーバー創作スレ5 - 暇つぶし2ch250:『マギカ☆フォルテッシモ』
11/12/18 19:02:37.26 6vW1jlr/
第三話『きず』

「大地に咲く一輪の花! キュアブロッサム!」

赤き閃光の輝きを放ち、現われたのはもう一人の、奇跡を手にしてしまった少女。
ピンクと白を基調とした可憐な姿。肩に乗る、ピンクと白を基調とした小動物。
無数の使い魔たちは一斉にその触手を躍動させる。コンクリートは抉られ、少女はダンスを踊る様に華麗に、時にもたつきながらも避け続ける。
「ブロッサム・シュートォ!」
少女から大量に放出される桜色の光波弾は使い魔群に直撃する。怯んだその一瞬の隙に、少女はあえて敵との距離を零距離に飛び込む。
「てやぁぁぁぁぁぁ!」
拳。
足。
肘。
膝。
全てが華麗に繋がっていく連撃を叩き込む。
……ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉをおん……
消滅していく使い魔。しかしその数はいまだ無数。
「杏子さん、危ないから逃げてください!」
「早く逃げるですぅ!」
「--……」
そんなわけにいくか。
佐倉杏子はすぐに自分を取り戻し、自らのソウルジェムをかざす。赤き閃光に包まれる。
「--へ?」
赤き魔法服に烈槍。彼女もまた魔法少女へと変身を遂げる。
「きょ、杏子さん?」
「ぼやぼやしてんじゃねぇ!」
周りを取り囲んだ使い魔、Adolfoたちを杏子はその烈槍をもって薙ぎ払う。
槍はその節毎に三節棍の如く分離し、ぶん、と鈍い音と同時に振るわれ、生命を宿したかのように流麗な動きで使い魔たちを切り裂いていく。
「そうりゃぁ!」
ぶん。
……ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉをおん……
殲滅は一瞬だった。
異空間と化していた見滝原公園は元の空気、空間に戻る。
ぱちぱちぱち。
「す、凄いです杏子さん! こんな街にもプリキュアがいたなんて!」
「すごいですぅ!」
「はぁ?」
スチャ。
彼女は少女に惜しみない拍手を向け、拍手を向けられた彼女は、その少女に槍を向けた。
「てめえさ、いい度胸じゃねえか」
「--はい?」


251:創る名無しに見る名無し
11/12/18 19:02:57.12 6vW1jlr/
「な、何するんですか杏子さん! そんなもの人に向けるなんて! 危ないですよ!」
「あぶないですぅ!」
「危ないから向けてんだ。大体そんなもんもなにもさ。魔法少女の縄張りって知ってるか?」
「まほう、しょうじょ?」
大体最初の段階で何で気づかなかったんだろう。
あんなとこから落ちてくるなんて、それ以外考えられない。
こいつは魔法少女だ。あたしと同じく、マミの後釜を狙って来た。
肩に乗っかってるなんか変な奴は多分キュゥべえの親戚かなんかだろう。あいつに親戚がいるかはおいといて。にしても。
さやかに続いてこんな変な奴まで出てくるとは。今時の魔法少女はどうなってるんだ。
「質より量、に方針転換でもしたんかな、あの野郎」
「あの、話が見えないんですけど。大体魔法少女って」
「今のは独り言。……とりあえずさ、マミの奴がおっちんだから来たんだろうが、もうここはあたしがいるんだよ。……まあ一緒に食いモン食った中だ。今回は見逃してやるからさっさとこの街から去」
「お断りします」
「そうそう言って素直に……おい」
杏子は烈槍をブロッサムの顔に近づけ、刃先でその頬をつんつんと叩く。
「お前さ、何言ってるかわかってるか。ついでに状況も」
「杏子さんが何言ってるかも、ついでに状況もわけがわからないから、お断りしたんです。大体プリキュアなのにそんな危ないもの人に向けて良いと本気で思ってるんですか! お父さんお母さんが悲しみますよ! 私の堪忍袋の尾も切れますよ!」
「……」
杏子は溜息を吐く。
さやかより扱いにくいやつだ、こいつ。
何考えてんのかわかんねぇし、大体プリキュアってなんだ。
なんかお互い大事な部分で勘違いしてるような気がする。けど。だからこそ自分の流儀で。
自らの理を、貫き通す。
「しょうがない。言ってもわかんないか」
杏子は槍を自らの手元に戻す。
「よかった。わかって--」
「だったら痛い目見ないとわかんないよねぇ!」
杏子は、猛然と飛び掛かった。


252:創る名無しに見る名無し
11/12/18 19:06:06.04 6vW1jlr/
俗に剣道三倍段という言葉がある。
空手、柔術、合気道等素手でもって戦う武芸者が武器を持った相手と戦う場合、
最低三倍の段差、実力差がないと対等に戦えない、という意味である。
単なる格言ではない。
生物の主となるためにあえて、脆弱な肉体を手にした人類がその代償として手に入れた「道具」、「武器」の重み。
それを体言したことばである。
「だからなんでわからないんですかぁ! 私は魔法少女なんかじゃありませんって!」
「うっせぇ! そんな奇天烈なカッコしたやつが魔法少女じゃなくてなんだってんだ!」
「プ・リ・キュ・アですよ! キュアブロッサムです! あ、あたたいたいたいたいた!」
だがしかし、徒手空拳であるブロッサムは烈槍の猛烈な突き
‐最もモーションが少ない動きである?の連撃を受け止め、かわし、時によろけながらも受け流す。
その姿に杏子は舌うちする。
こいつ、素人じゃない。少なくともなったばかりの奴にこんな動きは出来ない。
杏子は機動力とそれに起因する攻撃力を最大の武器とする。
その極端な魔力の分配、ブーストは、自らの防御力をも犠牲としている。
そのための槍である。
いつ偶然相手の一発が入るかわからない「剣」での近距離戦、
一発撃つ事に確実に魔力を消耗していく「銃」「弓」での遠距離戦でなく。
とりあえず自らの安全圏を確保できうる中距離での槍、電光石火の連撃。
その一点のみにブーストを掛けた攻撃を防御しきれるというのは尋常ではない。
が。
「一芸だけに秀でてるわけじゃないんだよ!」
「--!」
一瞬で鎖と化した槍がブロッサムに絡みつく。
杏子はそのまま遥か空高く、ブロッサムを放つ。
「--な、な」
「おらぁ!」
そして、地面に叩きつけた。


253:創る名無しに見る名無し
11/12/18 19:06:32.28 6vW1jlr/
響き渡る轟音。砂煙が舞う。地面には立派な穴が穿つ。
「あっちゃぁ」
やりすぎちったかな。ちょっと痛い目みさせるにしても、これはまずい。
率直な話、死んでもおかしくない。というか死んでないとおかしい。そんなレベルだ。
が。
「……すごい痛い」
「……おいお前」
なんで生きてる、そう杏子は言おうとして、言えなかった。
ブロッサムは立ち上がる。土煙にまみれながら、傷にまみれながら。涙目になりながら。
烈槍に縛られながら。ふらつきながら。それでも杏子に近づいていく。
「杏子さんはなんでそんな簡単に暴力をふるうんですか!」
「そうですぅ!」
こいつの負った傷は深い。
「そもそも私、魔法少女とやらじゃないです! プ・リ・キュ・アなんですよ! 大体縄張りとかいうけども、何で話し合おうとしないんですか! 話せばきっとわかったはずです! 何でわからないんですか!」
「そうですぅ!」
連撃など必要ない。手をちょっとだけ動かしさえすれば、それで終わる。
しかし、杏子は動かない。動けない。自分でもなぜだかわからない。
そして、顔と顔が、グッと近づく。
「もう、堪忍袋の尾が切れました! 」
「きれましたぁ!」
「……」
けれども、今夜、初めてこの少女に出会ってから幾度も去来した思いが脳裏をよぎる。
--なんなんだこいつ。
そして二人の世界は。
「--杏子、一体どういう事? その子は?」
青き少女によって破られた。
「--さやか」


254:創る名無しに見る名無し
11/12/18 19:06:54.21 6vW1jlr/
自らの身勝手な思いでまたまどかを傷つけてしまった。なんにしろ、マミさんが死んで以来あんなに安堵しほっとしたまどかを見たのは初めてだった。
ほんとうは自分がその役目をするべきなのに、傷つけてばかりいる。
えりかの、そのあまりにシンプルで純粋な動機にある種の憤りと、理不尽な怒りがこみ上げたのは事実だけれど、あたしはまどかを、みんなを守りたいはずだったのに、傷つけてばかりで。
なのに魔法少女でもなんでもないやつが颯爽と現れたあげくに魔女を殺して。
あたしはなにも出来ない。
だからほら、浄化したはずのソウルジェムはもう灰色にくすみ始めている。

美樹さやかはただ行くべき所もわからず、ただただ街を歩いていた。
家には戻れない。何て言えば良いのかわからない。どこに行けばいいのかも。どこに行くかもわからない。いや、どこにも行く所などないぐらい、わかっている。
「--ばかみたい」
さやかは深く、深く溜息を吐き、顔を上げ。
そして、目を疑った。
見慣れた公園に、杏子と見知らぬ少女がいた。それも二人とも魔法少女の姿で。
どういうわけか、見知らぬ少女は傷だらけであり、あげくあの変幻自在の槍で縛られている。
その状況だけみれば杏子が圧倒している。いつでも止めをさせる。
だが少女は彼女に怯んでいない。縛られた状態でずんずんと杏子に近づいていく。
そして杏子は、その圧倒的有利の立場にありながら、動かない。
--それとも動けないのか。


255:創る名無しに見る名無し
11/12/18 19:07:17.83 6vW1jlr/
「そもそも私、魔法少女とやらじゃないです! プ・リ・キュ・アなんですよ! 大体縄張りとかいうけども、何で話し合おうとしないんですか! 話せばきっとわかったはずです! 何でわからないんですか!」
「もう、堪忍袋の尾が切れました! 」
「きれましたぁ!」

―プリキュア。
--来海えりかの、仲間?
少女のその言葉にさやかは驚愕した。魔法少女だけでない。「プリキュア」も三滝原に集結しつつあるというのか。もしそうだとしたら何のために?
「--杏子、一体どういう事? その子は?」
思わず声に出ていた。振り向く杏子と少女。
「--さやか、こいつどうしよう」
杏子は明らかに困惑していた。どうしようも何も無い。
普段通りの彼女であればとうに決着はついている。
「いや、どうしようって--」
なんて答えればいいのか。
「お知り合いですか! 杏子さんに話してやって下さい! 暴力はいけませんって!」
一方の少女は希望に溢れた瞳でさやかに懇願する。
その瞳は純粋で、だからこそ私には痛く感じる。そう、それはまるで。あいつと。えりかの瞳と--
さやかは自分と同じ青を纏いながら、対極の幻想を持っていられる少女を思い浮かべ。
「ちょっぉぉと、待ったぁあ!」
「まつです!」
「「「---!」」」
そしてその青き少女‐‐来海えりか。キュアマリンは、天空から降ってきた。佐倉杏子目掛けて。
「プリキュア、おでこパァンチ!」
それはまさに、天空からのヘッドバッド。
「―な、な」
てめぇなにしやがんだ、と叫ぶ間も無く。
ゴツゥン!!!
響きわたる轟音に、その風圧で巻き起こる砂嵐。
佐倉杏子はまたも、空から落ちてくる女の子に頭突きされた。それも思いっきり。クリーンヒットで。
一日二回目の新記録であった。
そして意識も飛んだ。


256:創る名無しに見る名無し
11/12/18 19:07:46.97 6vW1jlr/
「てめぇなにしやがんだこの野郎!」
「そっちこそブロッサムになにしてんのよ!」
「この赤いのと知り合いか!? だったらさっさとこの町から一緒に出てけ!」
「なによ!? ひとの親友をあんなボロ雑巾にして!」
「うっせぇ! だったらてめぇもボロ雑巾にしてやろうか!」
むうううううう。
ああ言えばこう言う、である。
変身を解いた杏子とえりかは、首根っこを掴み合い零距離で睨み合い、罵り合っていた。
何なんだ、何だこいつら。もはや魔法少女の掟も仁義も常識も、全部すっぽかした連中ばかり集まって。この町は、見滝原は、一体どうなってるんだ。
杏子はやられたら百倍にしてやる返すタイプであり、えりかも当然同じである。
当然罵り合いは倍倍ゲームとなり、エスカレートしていく。
その横で。
「ぼ、ぼろ雑巾……」
「ひどいですぅ」
「だ、大丈夫? さ、さやかちゃん! 魔法でなんとか出来ないの!?」
「え、えっと……」
「大丈夫。所々打ち身はあるけど、骨も筋肉も致命的な事にはなってないよ」
「ないでしゅ!」
「あ、ありがとうございます、えっと」
「ボクは明堂院いつき。いつきでいい」
鎖が解かれた瞬間、ダメージ過多による強制変身解除で薄いワンピース一枚となっていた花咲つぼみを、鹿目まどかは介抱していた。そしてその横で傷ついたつぼみの様子を見る、白い学ラン姿の少女、いつきと肩に乗る妖精。--ポプリと言っていた--。
キュアマリンが頭突きをかました直後、二人は公園に来たのだった。
そして見たのは、首根っこを掴んで怒鳴りあい、罵り合う杏子とえりかと、白いワンピース姿で傷つき、倒れている赤い髪の少女。そしてただただ呆然と見ているさやかだったのである。


257:創る名無しに見る名無し
11/12/18 19:11:12.38 6vW1jlr/
一方。
むうううううううううううう。
「「こうなったら--」」
二人は一旦つかみ合いをやめ、杏子は自らのソウルジェムを取り出し、えりかはココロパフュームを取り出す。それは幻想と化すための器具。魂。
「あっ--」
「「決着つけて--」」
二人が構えた瞬間。
「「やめなさい」」
混乱の極致にあった公園を、二つの怜悧な声が響いた。
「佐倉杏子。あなたはもう少し冷静な人だと思っていたけれど」
「えりか。私たちは愛で戦いましょう、と前に言ったわよね」
「「「----!!!」」」
「このままだと、あなたの敵になるしかないのだけれど」
「愛ではなく、それは憎しみよ。しかも最低のね」

「--ほむらちゃん」
「--ゆりさん」
暁美ほむらと、月影ゆり。
突如現れた、悠然と立つ黒髪の二人の少女。
かくして奇跡を手に入れてしまった少女たちは、運命の歯車に操られるかのごとく、集合する。
「困ったものだね。これだけいきなり集まったら」
そして電灯の上に立つ白いシルエット--キュゥべえ。
きゅっぷい、とキュゥべえは喉をならす。

物語はまだ、始まったばかり。

つづく。


258:創る名無しに見る名無し
11/12/21 06:07:44.74 lhxUDSys
.

259:創る名無しに見る名無し
11/12/27 15:53:29.90 ytlfB1Fi


260:創る名無しに見る名無し
12/03/09 22:30:49.24 4uDQS5C2
ひぐらし×破壊魔定光

261:創る名無しに見る名無し
12/03/10 03:30:06.20 uwLvKXxg
想像がつかんw

262:創る名無しに見る名無し
12/05/19 10:55:15.27 vUo/Pm8F
これはどうなるか分からんな

263:創る名無しに見る名無し
12/06/18 14:38:15.68 gPUUVDYC
 

264:創る名無しに見る名無し
12/07/04 21:53:57.86 WWN9BWxA
復活age

265:創る名無しに見る名無し
12/09/17 13:50:45.54 AJj38Kt5
.

266:創る名無しに見る名無し
12/09/27 16:26:44.46 rqTQRFpE
野比のび太
「『ドラえもん』の野比のび太です。これから色々なアニメキャラを交えてこの僕と『プリキュア5』の夢原のぞみさんの学力比較について討論しましょう。」

267:創る名無しに見る名無し
12/12/29 00:50:30.06 uKy4Gi+W
ナイフ。 数百はあろう小振りの刃物が宙を舞っていた。
原因、それは男女のキャッチボール。
片方のメイドは向かってくるナイフの集団を、マシンガンのように素早く、且つ手が傷つかないよう慎重に指に挟み取っては投げ、更に懐から新しいものを取り出して投げ放つ。
もう片方の男の場合、女と同じように向かってくるナイフを指で挟み取って投げる、しかし、奇妙な事に、勝手に方向転換し放たれていくもの、砕かれるものがある。
取りこぼしが男の身体に刺さりかけた瞬間、弾かれる。
奇妙な事は二人の周りの状況にあった。
支えが切れて数mの所で浮いているシャンデリアと、それと同時に宙に浮いたガラス達、故障のように止まった時計・・・。
全て止まっている。

(よもや、このDIOと同じ“能力”を持つ者と出会うとは・・・。
この世界に来たのは全くの無駄ではなかったな)
(早くコイツを妹様の餌にしないと・・・お嬢様の誕生日に間に合わなくなるじゃない!)

その頃、地下では・・・
「馬鹿な・・・こんな・・・餓鬼、がぁ・・・!?」
「おじさんがヴァニラ・アイスってことは、その血もバニラなんだよね?
だから、いっぱい吸わせて!」
「ふざけるなッ、この餓鬼g
「きゅっとしてドカーン」

268:創る名無しに見る名無し
12/12/29 00:51:11.23 uKy4Gi+W
以上、ジョジョの幻想入りでした・・・眼汚しすんませんした

269:創る名無しに見る名無し
12/12/29 21:24:28.75 QAnBddg3
乙。でもその二人を摂取すると顔が濃くなりそうw

270:青空町耳嚢 ~創作発表板五周年企画SS~  ◆ftPUzYFINd55
13/08/27 23:46:07.53 +PHEKoDF
青空町耳嚢 第9/21話
【ぺしゃんこ】

 数ヶ月前、ビルの倒壊に巻き込まれたときのことである。
 倒壊というと、語弊があるかもしれない。
 大通りを歩いていると、ビルが突然ぐにゃりと、まるで空気の抜けたビニール人形のように倒れてきたのだ。
 おどろいている間に逃げ遅れ、私をふくめあたりの通行人は軒並みビルの下敷きになった。
 下敷きといっても、羽毛布団を何重にも重ねて乗せられているようなもので、命の危機は感じない。
「なんだこれ?」「出れない」「助けて」巻き込まれた人間がめいめいに騒ぐ。
 私の場合は幸いなことに、上半身は挟まれずにすんだので、周囲のあちらこちらのビルが同じようにぺしゃんこになって、自分達と同じような境遇の集団がいくつもできているのを見て安心できたし、息苦しさもなかった。
 ただ、はさまれている下半身はまったく動かせず、すごく重苦しい。
 同病相哀れむというか、少しの心細さから、隣に挟まっているサングラスの男に話しかけた。
「やっかいなことになりましたね」
「びっくりしたダ~」
 サングラスの中年男はぽりぽりと頭をかいた。
 髪を紫に染めたモヒカン頭。
 ガラの悪そうな口ひげ。
 鋲のびっしりついたグローブと、張り出した肩あて。
 年甲斐もないパンク野郎なのか?
 つい声をかけてしまったが、普段の生活ではまずお近づきになろうとは思えない奇妙な中年男の姿に私はすこしひるんだ。
 男はぼやいた。「町中これじゃあ、配達先もどうにかなっていそうで心配ダ~」
「仕事中だったのですか?」
 こんな格好が許される配達業なんて、やばい物の運び屋ぐらいしか思いつかないが。
「ワシ、陽昇町の日向ストアで働かせてもらってますダ。お酒やジュースのご用命ならお任せダ」
 酒屋の店員とは。店長の度量の大きさに感心する。
「これ、店の名刺ですダ。青空町でも配達OKダ~」
 こんな状況でもちゃっかり店のアピールをするところといい、外見はともかく中身はわりと真面目な男のようである。
 名刺をうけとると、男はにっこりと笑った。
「そいじゃ、ワシは配達の続きをしに行くダ。お兄さんもよい一日を」
 おいおい、何を言っている。私と同様、下半身をビルにはさまれて身動きとれないはずでは、と思ったその時。
 ぷしゅっと、サングラス男が急にしぼんだ。
 ひらめのようにぺちゃんこになったその体は、ビルの下からくにゃくにゃと抜け出して、そのまま宙を泳ぐように遠ざかっていった。
 ビルが元の形に戻り、私が助かったのは、それからさらに数時間後のことだった。


 陽昇町の日向ストアといえば、今では「どんなことがあっても必ず配達にくる」ことで有名な酒屋となっている。


【終】

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クロス作品:絶対無敵ライジンオー&元気爆発ガンバルガー
関連スレ:エルドランシリーズSS総合スレ3【雑談・チラ裏OK】
スレリンク(mitemite板)

【8/27】創作発表板五周年【50レス祭り】
詳細は↓の317あたりをごらんください。
【雑談】 スレを立てるまでもない相談・雑談スレ34
スレリンク(mitemite板)


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