13/01/11 02:14:26.59 36YedIfm
【気が付いたら君の目の前にいた話をする。】
「ねえ、俺がもうすぐ死ぬって言ったらどうする?」
「とりあえず落ち着け」
「落ち着いてるよ。実はね、俺には未来が見えるんです」
「今度は何のアニメにはまってるんだ。未来人が出てるあれか」
「あれではないよ」
「マジか」
「大マジなんだ」
「死ぬのか」
「どうやら死ぬらしい」
781:創る名無しに見る名無し
13/01/11 02:16:20.13 36YedIfm
「そうか」
「そうみたいだ」
「どうしようか」
「どうしようね」
「何かやりたいこととか」
「特にないね」
「無いのか」
「無いのさ」
「困ったな」
「困ったねえ」
「そもそも何で死ぬの」
「どっか病気みたいでね」
「雑だな」
「しかも治らないやつみたいでさ」
「更に雑だな、漫画みたいな話だ」
「漫画みたいな設定で少し嬉しいよ」
「馬鹿か」
「馬鹿なのかもね」
「いつ死ぬんだ?」
「それがわからないんだ」
「でも死ぬんだろ」
「うん、もうすぐ」
「それだけわかってりゃ十分か」
「うん、俺はもうすぐ死ぬんだ」
782:創る名無しに見る名無し
13/01/11 02:18:12.90 36YedIfm
「なのに何でここにいるんだ?」
「どういう意味かな」
「いや、だって普通死ぬってなったら色々あるだろ」
「遺書とか?」
「自殺かよ」
「違うね」
「ほら身辺整理とか、家族と過ごすとか、恋人と過ごすとか」
「うんうん」
「あとは、・・・えーと、何だ?」
「何だろうね」
「・・・そう考えると、死ぬってわかっててもやりたいことって特別出てこないな」
「そうだね」
「ちょっと絶望した」
「どうして?」
「もし俺がお前みたいにもうすぐ死ぬってなっても、」
「うん」
「特にやりたいことがないってわかったから」
「それは毎日充実してるってことじゃないのかな」
「どういうことだよ」
「君が悔いのない人生を送っているってこと」
「ふうん、そんなもんか?」
「そんなものです」
783:創る名無しに見る名無し
13/01/11 02:19:53.85 36YedIfm
「折角だし旅行とかはどうだ」
「旅行かあ」
「行ってみたい場所とかないのか」
「君もついてきてくれるの?」
「場所によってはだな」
「じゃあ京都」
「じゃあって何だ、じゃあって」
「修学旅行一緒にまわれなかったからさ」
「つーかあの頃まだ喋ってもいないだろ」
「そうだったね」
「旅行とか出来るのか?」
「どういう意味で?」
「体調的な意味で」
「大丈夫なんじゃないかな、多分」
「雑だな」
「自分の体だからねえ」
「自分じゃなかったらどうするんだ」
「きっくんなら、すごく心配する」
「きっくんって誰だ」
「君、って呼ぶの飽きてきたから、きっくん」
「あだ名呼びとか仲良しみたいだろ」
「仲良しでしょ?」
「ノーコメントで」
「えー」
784:創る名無しに見る名無し
13/01/11 02:30:24.31 36YedIfm
「もっと驚いてくれるかと思ったのに」
「実感ないからな」
「俺にもないんだよね」
「お前にないのに俺に実感あったら嫌だろ」
「そうだよね」
「つまりそういうことだ」
「そういうことだね」
「きっくんきっくん」
「呼ばれ慣れなさすぎてむず痒い」
「じゃあ呼び続けてあげましょう」
「本名にかすりもしない」
「俺だけしか呼ばない君の名前ってことだね」
「なんか気持ち悪いぞそれ」
「失礼だなあ」
785:創る名無しに見る名無し
13/01/11 02:31:29.04 36YedIfm
「もうすぐ死ぬって言ってたけどさ」
「うん」
「もし今から俺がコンビニに行くとする」
「うん」
「スピード違反で突っ込んできたトラックにひかれるとする」
「あらら、居眠り運転?」
「飲酒運転かもしれない」
「不運だね」
「その場合病気で死ぬお前より、俺の方が先に死ぬ」
「つまり?」
「もうすぐ、って曖昧だな」
「そうかもね」
786:創る名無しに見る名無し
13/01/11 07:24:14.98 FzPrglVR
④
787:創る名無しに見る名無し
13/01/11 13:23:52.08 36YedIfm
「ふふふ、」
「気持ち悪い」
「酷いなあ、俺は嬉しいのに」
「何がだ?」
「きっくんとこうして喋れて」
「・・・リアクションに困る」
「もっと早くきっくんとこうしていたらなあ」
「?」
「ふふふ、」
「あー腹減った」
「何か食べたら?」
「コンビニ行ってくっかな、お前も行く?」
「俺はいいや、お腹すいてないし」
「そっか、じゃーいってくる」
「飲酒運転のトラックにひかれないようにね」
「居眠り運転のトラックにはひかれてもいいのか」
「それなら仕方ないよ」
「まあ、仕方ないな」
788:創る名無しに見る名無し
13/01/11 13:25:59.26 36YedIfm
「ただいま」
「おかえりなさい、きっくん」
「超寒かった」
「あ、ピザまん」
「あったかいからな」
「もうすっかり冬だね」
「雪はまだ降らないけどな」
「どうせならあったかい季節に死にたかったなあ」
「まあ、ピザまんでも食え」
「うん」
789:創る名無しに見る名無し
13/01/11 13:28:01.46 36YedIfm
「あ、」
「どうした」
「そろそろ帰らなきゃいけないみたい」
「唐突だな」
「そんなものらしいよ」
「そんなものなのか」
「ねえきっくん」
「何だ」
「実は言わなきゃいけないことがあってね」
「唐突だな」
「実はね」
「告白以外で頼む」
「えー」
「えーじゃない」
「仕方ないなあ。実はね、身辺整理も、家族と過ごすのも、終えて来てるの」
「?」
「恋人はいないからどうしようもないんだけど」
「つまり?」
「実はもう俺は死んでるってことです」
「そっか」
「そうなのです」
790:創る名無しに見る名無し
13/01/11 15:41:59.72 kfFB5EKe
④
791:創る名無しに見る名無し
13/01/12 00:13:08.12 0w6Kg5/C
続き気になる
792:創る名無しに見る名無し
13/01/12 00:42:28.90 2y8ZSzUS
すいません仕事やら規制?やらでした。
連続投稿しすぎるとダメみたいですね・・・!
続きはらせていただきます。
「もっと驚いてくれるかと思ったのに」
「すげえ驚いてる」
「嘘だあ」
「一周して真顔」
「どうもー幽霊でーす」
「笑えない」
「何でここにいるんだ?」
「それが俺にもわからないんだよね」
「死んでまで出てくるような理由とか」
「やっぱり告白してないからかな」
「愛されてたのか」
「愛していました」
793:創る名無しに見る名無し
13/01/12 00:44:27.29 2y8ZSzUS
「お前馬鹿だな」
「馬鹿なのかもね」
「今更告白してどうするよ」
「ううん、考えてなかった」
「馬鹿だな」
「でも、死んでまで告白しに来るなんて、きっくんもう忘れられないでしょう?」
「とんだファンタジーだ」
「本当にそろそろ行かなきゃいけないみたい」
「そっか」
「最後にちゅーとか」
「しない」
「酷い」
「大体お前幽霊だし、触れないだろ」
「幽霊じゃなかったらちゅーしてくれたのか、残念」
「都合の良い頭だな」
794:創る名無しに見る名無し
13/01/12 00:47:59.97 2y8ZSzUS
「じゃあね」
「じゃあな」
「最後にきっくんに会えて嬉しかった」
「漫画みたいな台詞だな」
「大好きだからね」
「最後の最後まで相変わらずだな」
「本当はすっごい寂しいけどね」
「泣かないのか」
「きっくんが見えなくなったら泣く」
「へえ」
「あ、そうだ。まだ答え聞いてなかった」
「何の」
「最初の」
「あれか」
「そう、あれ」
「聞けば?」
「うん」
795:創る名無しに見る名無し
13/01/12 00:50:43.98 2y8ZSzUS
「ねえ、俺がもうすぐ死ぬって言ったらどうする?」
「今すぐお前と京都に旅行に行く」
「それはずるいよ」
「だろ?」
「愛してました」
「愛されてたみたいでした」
「じゃあね」
「じゃあな」
END
796:創る名無しに見る名無し
13/01/12 00:54:34.61 2y8ZSzUS
以上です。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。
初めて書き込みしたため見にくかったり遅かったりあると思います。
お邪魔しました。
男女、など書かなかったのは性別を決めていなかったからです。
では、いつかまたお邪魔させていただくかもしれません。
失礼します!
797:創る名無しに見る名無し
13/01/13 00:17:29.28 4C2RSd8Y
おつです
淡々としてるところが逆にいいですね
798:創る名無しに見る名無し
13/01/13 04:09:19.40 gTcAJltk
これは良い
799:創る名無しに見る名無し
13/01/15 19:32:59.87 XSzNQsGf
淡々と進むのが逆に素敵
800:創る名無しに見る名無し
13/01/15 20:24:30.02 nlQ7P1u3
>>796
すごい良かったー!
こういう淡々としてるの好きだなー
ヘンに奇をてらった感じもないし、ちょっと詩的な感じもする