13/05/08 19:37:36.81 ZGpKVlEa0
>>757、の続き
この基礎研修の後も、作業内容が変わるごとに1日から数日の研修があった。そこで強調されるのが、
「マニュアル遵守」だった。とにかくマニュアルどおりに進行するよう繰り返し求められ、自らの判断を決して
入れないように、と注意された。しかし、いざ本作業になると、このマニュアルから次々と不都合が噴き出したのだ。
たとえば、補償請求には「被災証明書」、もしくは「住民票」が必須とされたが、これらの書類と手書きの請求書の
内容が違うことがある。家族構成が違う、旧漢字と常用漢字で違っている、生年月日などの記載ミス、未記入項目がある、
旧姓になっている、そもそも住民票がなくて戸籍謄本だったり、運転免許証だったり、母子手帳だったり……。
こうした想定外の事態が起きると、まずはその場で、派遣会社の社員が会議する。それで決まらなければ、東電社員と
協議する。これが早くて数時間、長いと数日もかかり、その間、作業は中断される。しかも、午前の方針が午後には
正反対に改正、まさに朝令暮改が日常茶飯事で、そのたびに派遣社員から失笑が漏れた。
なかでも驚いたのは、記入された住所に「大字」「字」が入っていないだけで、無効にするかどうかを巡って、数日間
もめたことだ。最終的に、これらはそのまま作業することになったが、たとえば「福島県」や「双葉郡」が抜けた書類は
最後まで無効のままだった。その理由を派遣会社の社員に問うと、「(その町名が)他県にもあるかもしれないと、
上から(東電から)言われている」という常軌を逸した答えが返ってきた。
こうした不条理を東電社員に訴えようとすると、フロア長の派遣会社社員から、「東電の人にはむやみに話しかけるな」
と強い指導が入った。まるで派遣会社の社員は植民地の役人で、われわれは奴隷のような関係であった。
その宗主国の人、東電社員は一流大学を出たエリートであるがゆえだろうか、机上の空論で作ったマニュアルを
一字一句違わずやることを、天の声のごとく指令し、一切の疑問や口を挟むことを許さない。研修書類の巻頭に掲げられた
〈ご被害に遭われた方々の目線に立った「親身・親切」な賠償を直ちに実現し……〉という言葉が空しく響く。