あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part313at ANICHARA
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part313 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 19:15:12.86 MYmqj+Q/
即死回避

3:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 19:57:53.17 RwPiny95
>>1
今週はるろうに休みかな?

4:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 20:01:28.60 sbSIS/7i
>>1
乙!絶対に乙!それは何故か?新スレだからだ!


5:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 20:45:24.02 0yJa0Jgt
>>1乙ー

今後のSSの参考にならないかなって、今更アニメ四期見始めたけどジョゼフとの決着開始三話で終了かよw

6:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 21:09:47.43 k4PxkXVO
>>1

四期はもう新キャラのイメージ確認くらいの役にしか立たなかったよ。

7:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 21:17:22.86 0yJa0Jgt
>>6
いきなり元素の兄弟が出てきたのにもふいたけど
実際に動いてるジャネット見てたら例の黒い翼のお人形さんにそっくりで…
ミーディアムの人帰ってこないかな…銀様…

8:使い魔は妖魔か或いは人間か
12/07/08 21:30:07.00 +IFZlcuZ
35分から投下予定

9:使い魔は妖魔か或いは人間か
12/07/08 21:36:13.52 +IFZlcuZ
第12話『葛藤』

王女からの依頼を受けた夜。
早朝に出かけるべく、ルイズはシエスタにモーニングコールを頼む。
当初はアセルスに頼む事も考えたが、時間の感覚が曖昧だと言うので諦めた。

支度を終えて、眠りについた夜。
ルイズはまたも夢を見ていた─



アセルスが妖魔となって幾ばくか月日が流れる。
針の城では、日も射さない為に昼夜の流れがなくなっていた。

─ああ、だからアセルスは時間が曖昧なのかしら。
ぼんやり考えていると、アセルスが誰かと話しているのに気がつく。

「ねえ」
「は、はい」
アセルスの呼びかけに少女は熱に浮かされたように呆然としている。

「おかしな人だな」
つい呟いてしまった言葉に、アセルスと対話していた少女は明らかに落ち込んでいた。

「おかしな人なんて言ってゴメン。私はアセルス、貴女は?」
アセルスの表情に浮かぶのは少女のあどけなさそのものだ。
ルイズはアセルスの年齢を知らなかったが、夢での姿を見る限り同年代なのかと推測する。

「……ジーナです」
ジーナと呼ばれる少女は城下町のお針子だった。
一般的な平民と言った様子で、アセルスとの初対面には怯えていたようにも見えた。
アセルスの姿は血塗れだったので無理もないのだが。

二人は他愛もない会話を続けていた。
アセルスはかつてキュルケ達とルイズの会話を羨ましいと言っていた。
ジーナを思い出していたのかもしれない。

ルイズが傍観を続けていると、城へ戻ろうとするアセルスを呼び止める者がいた。

10:使い魔は妖魔か或いは人間か
12/07/08 21:40:32.57 +IFZlcuZ
「ジーナをお城へ御連れになるのは勘弁してくださいませ」
仕立て屋の主人が頭を下げて懇願する。
アセルスには主人が何を話しているのか分かっていない様子だった。

ただ理解したのは、主人が恐れている事。
アセルスがオルロワージュと名乗る妖魔の血を受け継いで以来、向けられる視線。

嫉妬と羨望、畏怖と陰謀。
平穏を望んでいたアセルスには、妖魔の血も針の城での生活も無用なものでしかない。

アセルスが穏やかな表情を浮かべるのは、二人のみ。
一人はジーナ、もう一人はアセルスの教育係を任された妖魔の白薔薇。
妖魔ながら清廉な微笑を浮かべる彼女を見て、ルイズは次女の姉を重ねた。

ある日、アセルスは焼却炉が城から出口につながっていると教わる。
城からの脱走を計ったアセルスは白薔薇とともに、そのまま炎へ飛び込んだ。

「え!?」
ルイズが突然の出来事に悲鳴を上げるが、二人は一瞬で火に包まれる。
ただルイズがうろたえていると、辺りが雪一面に覆われた白銀に変わっていた。

「白薔薇……」
生まれたままの姿で不安げに呟くアセルス。

「何とか燃え尽きずに済みましたわ、肌や髪も再生いたしました」
アセルスの後ろから、白薔薇が現れる。
炎で服や装飾品は燃え尽きていたが、露になった素肌には火傷跡も残っていない。

「寒い……」
当然だろう、雪山にいるのだから。
そうルイズは思っていたが、どうやら白薔薇は違うようだった。

「それはアセルス様が人間の証拠ですわ、私は何も感じませんもの」
白薔薇とアセルスは、巨大な宮殿に向かう。

迷路のような宮殿にいたのは別の妖魔だった。
オルロワージュのように玉座に座っていることから、位の高い妖魔。
すなわち上級妖魔なのだろうと見ているルイズにも伺えた。

「私、オルロワージュ様に御仕え致しております白薔薇と申します。
こちらの方はオルロワージュ様の血を受けられたアセルス様でございます」
白薔薇が前に出て謁見する。

11:使い魔は妖魔か或いは人間か
12/07/08 21:45:44.34 +IFZlcuZ
「ほー、そなたが噂の娘か!
オルロワージュも酔狂なことをする、よほど退屈と見える」
陰気な針の城に比べ、城の雰囲気も妖魔の口調にも陽気さが伝わる。
白薔薇が召し物の下賜を願うと、指輪の君と呼ばれた妖魔は頷いて答えた。

「やはりこの方が良いな。
人間どもなどは裸のほうを好むようだが、理解に苦しむ」
指輪の君が冗談混じりに告げると、アセルスや白薔薇の服が再現された。

「さて……事情を聞かせてもらおうか」
白薔薇がアセルスの身に起きた事を語ると、指輪の君は物珍しそうに語った。

「妖魔のときはゆっくり流れる。
アセルス殿の時は激流のように流れておる、中々楽しめそうだな」
「楽しくなんかない!」
「白薔薇姫、何か望みはあるか?」
アセルスが当然抗議の声を上げるも、指輪の君は無頓着に尋ねる。

「はい、どこか別のリージョンに送ってもらえたらと思います」
「よかろう、ではさらばだ」
白薔薇の望み通り、別の場所に送り届けたのだろう。
ルイズの眼前でアセルスと白薔薇の二人は姿を消した。

城に残されたのはルイズと城主である指輪の君のみ。
神妙な顔つきになると、一人呟いた。

「オルロワージュめ、己の血によって破滅するかも知れん……」
ルイズには指輪の君の言葉が理解できない。
考えようとしたが理解するより早く、意識が離れてしまった。



「う……ん……」
ルイズがベッドから身体を起こせば、外はまだ朝靄に包まれていた。
予定より早く起きたが、何より先に夢を反芻する。

12:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 21:45:57.58 RwPiny95
支援

13:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 21:47:15.74 jS2JcPYE
>>1乙しつつしえーん

14:使い魔は妖魔か或いは人間か
12/07/08 21:48:10.86 +IFZlcuZ
永遠の命を持つ存在、妖魔。
ハルゲニアで妖魔と言えば吸血鬼が一般的だが、彼らとて不死という訳ではない。

だが、アセルス達は死なない。
死が存在しないのがどれほど異常な事か。

上級妖魔であるアセルスに死は存在するのか?
不老不死と言えば聞こえはいいが、それは永遠の孤独ではないのか?
だからこそ、アセルスは孤高でいられるのだろうか。

「でも、あの頃のアセルスは……」
妖魔となった絶望、周囲の悪意に傷つく姿。
理由は分からないが、今のアセルスと随分異なって見える。

何がアセルスを変えたのか?
いくら考えてもルイズには見当もつかない。
ルイズの思考を遮るように、部屋にノック音が響く。

「失礼しますルイズ様、お約束の時間になられたのでご連絡に参りました」
扉の前にいるのがシエスタだと気づく。
ルイズが扉を開けると、お日様のように明るい笑みを浮かべるシエスタが立っていた。

「おはようございます、ルイズ様。もう目覚めていらしたんですね」
「おはよう、シエスタ」
ルイズも釣られて笑顔で挨拶を返す。

「アセルス様もおはようございます」
「おはようシエスタ……エルザは?」
眠気を払う為にシエスタが用意した紅茶を手に取りながら尋ねる。

「エルザちゃんは今、馬の準備を整えています」
「悪いけど、後でエルザに剣を持ってくるように伝えておいて」
普段口うるさいだけの存在だが、武器を数用意するに越した事はない。
最も、デルフを放っといて来たのを今まで忘れていたのだが。

「ああ、いないと思ったら預けてたのね」
買った張本人も言われて、デルフの存在を思い出していた。

15:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 21:54:23.73 EhVoFnJ0
支援

16:使い魔は妖魔か或いは人間か
12/07/08 21:54:31.74 +IFZlcuZ
「どこに行かれるかは存じませんが、御気をつけて」
王女からの密命である為に、ルイズは詳細を話していない。
また、シエスタも学院での仕事がある為に見送りもできない。

万が一の事に備えて、ルイズは手紙を残していた。
もし自分がひと月経っても戻らぬ場合は、机の引き出しを開けるようにと注釈付きで。

シエスタはルイズが危険な目に遭う可能性を察している。
ルイズもシエスタに心配かけるのは心苦しいが、隠し事はできずに正直に伝えた。

正直に告げられたからこそ、シエスタは止められない。
ルイズが誰より貴族らしくあろうとするのを知っていたから。

「くれぐれも無茶はしないでくださいね」
シエスタの不安。
ルイズが自分自身を犠牲に捧げてしまう予感がしていた。

「アセルス様もルイズ様を御願いします」
「うん」
深々とお願いをするシエスタにアセルスは短いながらも力強く答えた。

「さっ、それじゃ向かいましょう」
準備を整えた二人は馬車へ向かう。
遠のく後ろ姿を見ていたシエスタは祈る。

「始祖ブリミル様、どうかお二人が何事もなく帰ってこれますように」
もし神という者がいたら、底意地の悪い性格であろう。
純粋な少女の願いは叶う事なく、無惨にも引き裂かれるのだから。

-------

「やあ!待っていたよ」
馬車にたどり着く前に現れた一人の生徒。

「ギーシュ……?」
ルイズは唖然と名前を呼ぶしかできない。

決闘で重傷を負ったのは知っていた。
かろうじて一命を取り留めたと言う話も。
そんな彼がここにいる理由、ギーシュの言い分を端的に説明するとこうだ。

昨日姫殿下を廊下で見かけるも、ルイズの部屋に入っていった。
先日の決闘以来、顔を会わせづらかった為に窓の下から使い魔に様子を窺っていた。
(実際はアセルスが怖かったのだろうとルイズは推測していたが)

ルイズへの依頼を盗み聞きして、自分も任務に参加するべく二人の前に姿を現した。

「どうするの?」
「連れて行かないわよ」
呆れた様子のアセルスの問いにルイズが一言で切り捨てた。
アセルスも異論はないので、ギーシュを無視して馬車に乗り込もうとする。

「ぼ、僕はドットメイジとはいえグラモン元帥の息子だ!『ゼロ』の君より……」
ギーシュの迂闊な一言。
アセルスとルイズは同時に武器を首に突きつけた。

17:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 21:54:52.45 WK4WkvDP
支援

18:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 22:01:00.59 EhVoFnJ0
sienn

19:使い魔は妖魔か或いは人間か
12/07/08 22:01:24.87 +IFZlcuZ
「今のは僕の失言だった、謝るよ」
ギーシュは冷や汗を流したまま、素直に詫びた。

「……分かった、条件次第で連れていってあげる」
ルイズは妥協案を出す。
このまま押し問答しても、時間の無駄にしかならない。

「本当かい!」
「いいの?」
喜ぶギーシュと疑問を投げかけるアセルス。

「エルザ、ちょっと来て……この娘と決闘して勝てたら、連れて行ってあげる」
エルザを呼ぶルイズ。
ギーシュを連れて行く気が全くないとアセルスは悟った。

「ハハハッ、いくらなんでも僕を馬鹿にし過ぎじゃないかい?
いや、本当はついて来て欲しいって意味かな」
この場でエルザの正体を知らないのはギーシュのみ。
木の枝を操るエルザに対して、樹木に背を向けた状態で薔薇の造花を構えてしまう。
余裕を見せながら引き受けた決闘は3秒で片付き、ギーシュは再び入院生活に戻った。



出発前に無駄な時間を過ごした。
胸中で愚痴を零しながら、ルイズは馬車に乗り込もうとする。

「ルイズ下がって」
アセルスによって馬に近づくのを制止される。
ルイズがアセルスの視線に釣られて空を見上げると、大型の獣のような影が見えた。


「グリフォン!?」
「おっと、驚かせてしまったようだね」
グリフォンにまたがる人影が、レビテーションの呪文を唱えて地面に降り立つ。

「ワルド様!?」
「久しぶりだね、僕のルイズ」
人影の正体にルイズは更に驚いた。
親同士が許婚としての約束を交わした相手なのだから。

「ど、どうしてこちらに!?」
「昨夜、姫様の指令で君達を護衛するように仰せつかったんだ」
動揺を隠し切れず、どもりながらの質問にワルドは答える。

「貴方は?」
「おっと、これは失礼。
魔法衛士グリフォン隊の隊長、そしてルイズの婚約者のジャン・ジャック・フランシス・ワルドだ」
ワルドは握手を求めるが、アセルスは応じない。

「私はアセルス。今はルイズの使い魔……かな」
アセルスはワルドがどうにも気に入らない。
ルイズとアセルスは似た境遇だったが、決定的な違いが一つある。

それは力の有無。
アセルスは強大な力を持つが故に、力を利用しようとする者も少なくない。

力を奪おうと画策したセアト。
アセルスを利用して、オルロワージュを討ち滅ぼさせたラスタバン。
自らの欲望の為に、人も妖魔も実験材料にしていた生物研究所の所長。
故に、アセルスは上辺だけを取り繕う者に対して否が応にも敏感になっていた。

20:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 22:02:55.49 jS2JcPYE
もう一発支援だ

21:使い魔は妖魔か或いは人間か
12/07/08 22:07:23.56 +IFZlcuZ
腐臭を覆い隠す上辺だけの微笑み。
醜悪な雰囲気を、眼前の男から感じ取っていた。

「アセルス……?」
不穏な空気を察したルイズが呼びかけた。
体験もあり、アセルスは人間の悪意が世界で最も醜いものと思っている。

アセルスが愛した人間は過去、ジーナのみ。
ルイズに向けるのは、自身の境遇を重ねた共感。

しかし、アセルスも気付いていない。
その共感は誰かを信じたい心情の表れであることに。

「邪魔にならないなら、ついてきてもいいわ」
自らを受け入れてくれたルイズの前だから、彼女の知人らしき相手に拒絶はしなかった。
この判断を、後まで悔いる事になるとも知らずに。



馬車に乗るのはアセルスと従者のエルザのみ。
ルイズはワルドと共に、グリフォンで乗っているからである。

「追いつけそうにはない?」
「も、申し訳ありません。何分グリフォンは速いもので」
日よけにローブを被ったエルザが萎縮しながら答える。
グリフォンはハルケギニアにおいて、高速で飛行できる幻獣だ。
アセルスに生物的な知識は無かったが、グリフォンの速度だけは良く理解できた。

馬車に乗るアセルス達を置いて、点景になる程に進めているのだから。
同行を許可したものの、アセルスは婚約者という立場を誇示するワルドが気に入らない。

「ねえ、ワルド。
早すぎじゃないかしら、アセルス達がついて来れないわ」
ルイズは振り返りながらワルドに減速を頼む。

「今日までに港に到着しておきたいんだ。
悪いが、ついて来れないようなら置いて行く。」
先行のし過ぎを指摘されてもワルドは聞く耳を持たずにいた。

「置いて行くなんて駄目よ。
彼女は私の使い魔なの、置いて行くなんてメイジのする事じゃないわ」
「やけに彼女の肩を持つね。彼女は妖魔だと聞いていたが」
「ええ」
王族である事実は伏せるよう心に留めておきながら、肯定する。

「あまり思い入れしないほうがいい。
妖魔と人間は本来、相容れないものなんだ」
「……どういう意味?」
ワルドの言葉にルイズの表情が歪む。

「そんなに怖い顔しないでくれ。
人間と妖魔では寿命が違う、主人を失った使い魔が暴れるなんて話も良くあるのさ」
ルイズが思わず俯く。

永遠の命を持つアセルスと人間である自分。
ずっと傍にいるとを誓ったが、出来るはずが無いのだ。
使い魔の契約はどちらかが死ぬまでしか有効でないのだから。

22:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 22:09:51.55 EhVoFnJ0
しえーん

23:使い魔は妖魔か或いは人間か
12/07/08 22:11:36.18 +IFZlcuZ
思案に意識を奪われていたルイズは、飛んでくる矢に気付かなかった。

「ルイズ!危ない!」
ワルドの忠告でようやく何者かに襲撃を受けたと気付く。

「大丈夫かい!」
ワルドが風の魔法で矢を防ぐと同時に、ルイズに呼びかける。

「敵!?」
懐から杖を構えて、ルイズは眼下を見る。
地上にいたアセルス達も崖の上にいる敵影に感づいていた。

軽く舌打ちする。
敵は単なる盗賊の類だろうが、あの男の前で力を披露するのは避けたい。

「エルザ、私が向かう先の敵に先住魔法を使うんだ。いいね?」
「はい、アセルス様」
エルザが頷いたのを確認すると同時に、馬車から飛び出す。

『おお、戦闘か!』
「黙って」
歓喜するデルフを一喝して黙らせる。
飛来する松明や矢を二本の剣で切り払いながら前進する。

突き出た岩を足場に軽々と崖を駆け上る。

「何だと!?」
追いはぎの格好をした一人が叫ぶ。
女性が跳躍で崖を飛び越える等と、誰が予想できるだろうか。

男が剣を構えるより早く、アセルスの剣が男の腕を斬り飛ばす。
別の男が弓を構えるが、腕が動かない。

「あ!?」
自分の腕を見ると、触手の様に伸びた木の枝が掴んでいる。
何が起きたのか理解したときには、男は首を跳ねられていた。

「せ、先住魔法だぁー!」
「妖魔がいるなんて聞いてねえぞ!?」
悲鳴をあげ、襲撃を仕掛けてきた賊は我先にと逃げ出していく。
だが、彼らの行く先を遮るように一匹の竜が降り立った。

「ファイアー・ボール!」
「ウインド・ブレイク」

竜に乗っていた二人が各々呪文を唱える。
風に煽られた火が一気に炎の壁となり賊の逃げ道を塞ぐ。
竜に乗っていた人物はルイズも良く知っている二人だった。

24:使い魔は妖魔か或いは人間か
12/07/08 22:16:51.73 +IFZlcuZ
「キュルケ、それにタバサまで!?」
グリフォンの上から身を乗り出すルイズ。
地上にいた敵が一掃されたこともあり、ワルドはグリフォンを降下させた。

「お待たせ」
髪をかきあげながら風竜から降りるキュルケ。

「待ってないわよッ!何でここにいるの!?」
グリフォンから飛び降りたルイズがキュルケに詰め寄る。

「ギーシュが広場に倒れていたから、話を聞いたのよ。
貴方達がアルビオンに行くって言うし、面白そうだから急いで着いてきたのよ」
タバサはまだ寝ていた所を無理やり起こされたのだろう。
寝間着姿のまま眠そうに、風竜の上でうつらうつら舟を漕いでいた。

タバサには少しだけ同情しながらも、ルイズが怒鳴る。

「言っておくけど、これはお忍びの任務なのよ!物見遊山で来られちゃ困るわ!」
「あら?文句ならギーシュに言って頂戴。
彼はお忍びだなんて、言ってなかったわよ。」
ギーシュを口封じしておくべきだった。
ルイズの脳裏に物騒な考えも浮かんだが、既に手遅れである。

「どうして私達を襲ったの?」
口論を続けるルイズ達を放置し、アセルスは縛り上げた盗賊達に尋問する。

「ケッ、盗賊が金以外に襲う理由が他にあるかよ」
縛り上げられたまま盗賊が悪態をつく。

「ぎゃああああああああ!!!」
悪態をついた盗賊が痛みに悲鳴を上げた。
アセルスの手に握られたデルフからは血が滴っている。

切り捨てたのは盗賊の右耳。
縛られた盗賊は血を押さえることもできず、縛られたままでのた打ち回った。

「次は反対側を切り落とすわ。
それでも話さないなら指、手、腕、足の順で切り落とす」
淡々とこれからの行為だけを予告し、剣先を左耳に向ける。

「待て!言うよ、言うからやめてくれ!
金を出すから、この道を通る連中を襲えって依頼されて……」
「誰に?」
「顔は仮面で隠してたから分からねえ……」
アセルスは躊躇なく剣を右手に突き刺すと、盗賊が再びわめき声をあげる。

『うわぁ……相棒容赦ねえな』
デルフが呟くも、アセルスは当然聞き流す。

25:使い魔は妖魔か或いは人間か
12/07/08 22:21:36.44 +IFZlcuZ
「わ、分からねえ……本当に分からねえんだ!
貴族や妖魔がいるなんて知ってたら、安請け合いしなかったよ!!」
失意の溜息とともに、アセルスは剣を仕舞った。

「ただの雇われのようだな、これ以上は無駄だろう」
後ろの女性陣に気を使ったワルドが切り上げる。

「……何?」
物言いたげなワルドの視線を察したアセルスが尋ねる。

「レディの前で拷問をやるとは、関心しないね」
アセルスの威圧に負けることなく、ワルドは皮肉混じりに答えた。
最も、アセルスは素知らぬ顔で馬車に戻る。

「盗賊とはいえ、死んだらどうするつもりだ!」
「どうもしないわ」
アセルスの背中越しに叫ぶワルド。
声には明らかな怒気がこめられていた。
アセルスは振り返る事すらなく、言葉を返すと共に馬車に戻った。



─道中、ハプニングはあったが港町が見えてきた。
夕闇が空を覆う中、ルイズはグリフォンの背中から風竜に乗るアセルスを眺める。

「ルイズ、分かっただろう?
妖魔というものは、人の命を虫けらのようにしか見ていない」
ワルドがグリフォンの手綱を握ったまま、忠告する。

「ええ……」
元気のないルイズの返事。
ワルドは肯定と受け取るが、実際は異なる。

ルイズは悩んでいた。
盗賊の襲撃前に考えていた使い魔の契約に関して。
つまり自分が死んだ後、アセルスはまた孤独になるのではないかと。

アセルスは言っていた。
大切な人を失い、後悔したと。
何時か、自分も同じ目に合わせてしまうのか。

それとも、アセルスは単に気紛れに付き合っているだけなのか?
ルイズは彼女が使い魔の契約を結んだ理由を話してくれた時を思い出していた。

『傍にいてくれるだけで良かった』
舞踏会で告げたアセルスの表情は遠く儚い印象を覚えた。

一緒にいて欲しいのはルイズとて同じだ。
妖魔であろうとアセルスに、ルイズは牽かれている。

魔法を使えた証明。
自分を守ってくれた存在。
初めて誰かと苦悩を分かりあえた。
何より思い描いていた、立派な貴族という理想像。

26:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 22:24:13.09 3NIcVMb7
支援

27:使い魔は妖魔か或いは人間か
12/07/08 22:28:19.10 +IFZlcuZ
だが、人である自分は必ず先に死ぬ。
彼女が元々妖魔であるのなら、仕方ないと割り切れたかもしれない。

しかし、アセルスは半分は人間だ。
人は一人では生きられないとは誰の言葉だっただろうか。

「私は……どうするべきなのかしら」
誰にも聞こえないか細い声。

「ん、何か言ったかい?ルイズ?」
「ううん、何でもないわ」
ワルドが振り返るも、ルイズは心配かけないよう誤魔化す。

「いろいろあって疲れただろう。
もう町が見えてきたから、そこでゆっくり休むといい」
気がつけば月が昇り、港の点景に火が灯っている。
だが、ルイズは自問への答えをまだ出せそうになかった……



─同じ頃、灯りの僅かな暗闇に包まれた部屋。
二人の人影が存在した。

「首尾はどうかね?」
「上々です、港町までは予定通りに到着しました」
椅子に座る男の質問に仮面を付けた男が答える。

「しかし、『土くれ』の勧誘には失敗したと聞いているが」
「申し訳ありません」
仮面の男が詫びるものの、座ったままの男は一笑した。

「別に責任を追求しているわけではない。
知りたいのだ、どのように土くれが牢獄から脱走したのかを」
「それが…………まるで分からないのです。
見張っていたはずの衛兵達も、牢獄に誰も通らなかったと証言しております」
仮面の男が間を置いて説明する。
無理もない、彼にも如何に脱走したかが検討もつかないのだ。

「杖を隠し持ち、錬金で壁を崩して逃げたのでは?」
「いえ、牢獄は汚れや埃が積もったままでした。
錬金で脱走した後に壁や牢を戻したとしても、汚れや埃までは再現できません」
解けない難問に、座っていた男も首を捻る。

「それでは、私は任務に戻ります」
しばしの沈黙を破り、仮面の男が暗闇に消えるように姿を消した。

「一体どうやって……」
残された男はまだ考えていたが、答えは出そうにもない。
牢獄に白い花弁が落ちている事には、誰も気にも留めずにいたのだから……

28:使い魔は妖魔か或いは人間か
12/07/08 22:30:44.46 +IFZlcuZ
投下は以上です
私生活がちょっと多忙になってきて更新ペースかなり落ちそうですが、
エタらないよう少しずつ進める予定です

29:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 23:39:57.97 NhbTeJZz
アセルスのひと乙
まさかファシナトゥール脱出のボツネタを持ってくるとは思わなかった

30:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/08 23:54:35.40 jS2JcPYE
投下乙でござる

31:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 00:26:41.19 2F4God7F
避難所にウルトラさんが来てたので代理
ついでに代理スレもちょうど1000まで埋まってたので立ててこようかと思うんだけど、勝手に立てちゃって大丈夫なのかな?

32:ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理
12/07/09 00:27:36.12 2F4God7F
 第九十二話
 光の再来
 
 ウルトラマンコスモス
 古代怪獣 ゴモラ
 地底エージェント ギロン人
 カオスリドリアス
 カオスゴルメデ
 高原竜 ヒドラ
 大蟻超獣 アリブンタ
 磁力怪獣 アントラー
 地獄超獣 マザリュース 登場!
 
 
 ヤプールの超獣軍団に襲われて、滅亡の危機に瀕しているエルフの国ネフテス。
 しかし、はるか六千年の昔と記録されるはるかな過去にも一度、この世界は滅亡の危機に瀕したことがあったという。
 それが忌まわしい名として語り継がれる『大厄災』。エルフの半数が死に絶え、全世界が焼き尽くされたという未曾有の戦争と、
わずかな資料は語り継いでいる。
 それが、いかなる理由で始まり、いかなる経緯を持って終息したのかを知る者はすでにない。だが、わずかな遺産は確かに
大厄災の過去を語り、人間の世界でもそれは始祖ブリミルの虚無の遺産の中に記憶が残されていた。その圧倒的な破壊の
光景をビジョンで見たとき、才人とルイズは戦慄し、決してこれを起こしてはいけないと誓った。
 それでも、歴史は繰り返す。人間とエルフのあいだに積もり積もった歪みが、今度はヤプールを引き金にして破滅の大厄災を
この世界に繰り返させようとしている。
 だが、かつての大厄災が何故全世界の滅亡を目前にして回避できたのか。そこに、エルフたちはひとりの聖者の存在を
提唱している。その名は聖者アヌビス、素性は不明で男性か女性かすらもわからず、アヌビスという呼び名も本名か通称で
あるのか、もしくは後世の者がつけた名なのかもさだかではない謎の人物であるが、彼の活躍によって悪魔は倒されて、
この世界はすんでのところで破滅を免れたという。
 ただ、わずかな確かな記録では、聖なる手を持って、心よき者を救い、悪しき心に堕ちた者をも救ったという。
 そんな、大厄災を生き延びたエルフたちによって、彼の記憶は地下深く残されて語り継がれてきた。石像に姿を写した姿は、
異世界でいう光の巨人とうりふたつ。彼がいずこから来た、何者であるかはいぜん不明でも、そのときの人々を守るために
戦ってくれていたのは間違いない。
 そして、すべてが終わった後で彼はどこに去ったのか? それは、あらゆる資料が沈黙している。しかし、そこには同時に、
彼が戦死したという記録は一切存在していない。もしも、戦いが終わった後で彼が宇宙へと帰ったのならば、もしかすれば……
光の国の戦士たちに限っても、一万五千歳のウルトラマンAでさえまだ若者の部類に入り、十六万歳のウルトラの父で
ようやく壮齢に入るというところである。
 ならば、六千年前の大昔だとしても、もしかしたら。この世界が再び危機に瀕している今、闇だけではなく光もまた蘇ってきたら。

33:ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理
12/07/09 00:28:04.21 2F4God7F
 都合のいい望みとわかっていても、光の戦士に大いなる希望を与えられてきた才人たちは、一縷の望みを胸のうちに灯す。
 
 
 しかし、その淡い希望も、圧倒的なヤプールの攻勢の前には潰え去ろうとしていた。
 
 
 ウルトラマンA倒れ、人間とエルフたちの懸命の努力にも関わらず、次々に卑劣な手段を繰り出してくるヤプール。配下を
捨て駒にし、怪獣たちの命はおろか心までももてあそぶ悪魔の手口の前には、折れそうな心を必死に奮い立たせて戦う人々の
意志も、折れないままに力で潰されようとしている。
 
 マイナスエネルギーを得てパワーアップしたアリブンタとアントラー、マイナスエネルギーの影響で凶暴化してしまった
リドリアスとゴルメデ。半亡霊のゾンビとして不死身に近い存在となったマザリュース。超獣軍団を指揮する、狡猾なギロン人。
 そして、怪獣界でもトップクラスのパワーを誇り、マイナスエネルギーの侵食で暴走するゴモラ。
 総勢、七体もの強力な怪獣超獣宇宙人の大軍団。しかも、アディール周辺はエネルギーフィールドで封印され、ウルトラ戦士に
とって必要な太陽エネルギーを完全に遮断してしまっている。
 まさに、ここはヤプールの用意したウルトラマンAの処刑場であった。エルフたちは、極論すればエースをおびきよせるための
エサに過ぎず、その目論見どおりエースは全エネルギーを使い果たし、倒れてしまった。懸命に戦っていた人間とエルフたちも、
すでに武器も魔法も使い尽くして、超獣軍団になすすべはない。
 絶体絶命、ほかに表現のしようがない絶望的な状況。エルフも人間も、あとはなぶり殺しにされるだけの哀れな獲物でしかない。
 
 それなのに……にも関わらず、ヤプールはいまだ勝者の笑いをあげることができずにいた。
 それは、これほどまでに追い詰めているのに、絶望から生まれるマイナスエネルギーが少なすぎることであった。ヤプールに
とってしてみれば、アディールのような街ひとつを壊滅させることなど造作もない。はじめからいるだけの超獣を投入すれば、
戦いはこれだけ長引くこともなく、東方号が到着する前にものの十数分で終わっていたに違いない。
 だが、それではだめなのだ。ただの力押しで侵略しては、ヤプールにとって最大の戦利品であるマイナスエネルギーが得られない。
マイナスエネルギーの集合体であるヤプールにとって、それは妥協できない勝利条件なのであった。
 
 もっとも憎むべきウルトラマンAは倒した。ならば、なにが人間とエルフどもを支えている?
 それを探し、ヤプールは人々に途切れることなく呼びかけ続ける少女に目をつけた。
「皆さん、まだ十分に乗れるスペースはあります。慌てずに、周りの人を助けながら乗り込んでください。がんばって、あきらめないでください」
 立ち止まるなと呼びかけ続けるティファニアの声が、常にエルフたちの上にあることが彼らの心に希望の灯火を燃やし続けていた。
 人の心とは、本人が思っているよりもずっともろい。どんなに普段悠然と構えていても、たとえば不時着して炎上しつつある
旅客機の中で、我先にと出口に殺到せずに整然と行動できる人間などほとんどいないだろう。
 けれども、人は闇の中では己を失い、簡単に絶望に落ちてしまうが、わずかでも光があれば、それを信じて前に進むことができる。
 昔、とある客船が沈没したときに、乗客を勇気付けようと沈み行く船上に残って演奏を続けた楽団があったという。
 不時着した旅客機の話にしても、客室乗務員が冷静に乗客に避難するよう呼びかけた機は、ひとりの犠牲者も出さなかった実例がある。
 人はひとりでは弱い。しかし、はげましてくれる誰か、希望になってくれる誰かがいれば、絶望などにたやすく負けはしない。
 しかし、希望の中心、それを見つけたヤプールの目が冷酷に輝く。希望を何よりも憎む闇の存在、ヤプールは目障りな光の残照を
消すために配下に命じた。

34:ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理
12/07/09 00:28:31.52 2F4God7F
「やはり、貴様が人間どもの要だったか! ええい、ゴミのような存在のくせに生意気な。マザリュースよ、雑魚どもの相手はもういい。
あの小娘を殺してしまえ!」
 その瞬間、空を覆う闇がうごめいた。そして東方号の真上に、不気味な姿の超獣の怨霊マザリュースが姿を現した。とたんに
響き渡る赤ん坊のようなけたたましい鳴き声。さらに、至近距離に現れたマザリュースの笑っているようなおぞましい姿が、見る者の
背筋を凍らせる。
 そして、マザリュースは立ち尽くすギーシュたちには目もくれず、そのぎょろりと丸い目でティファニアを睨むと、火炎弾を放ってきた。
「え……?」
「テファーッ!」
 わずか百メートルほどの距離で放たれた火炎弾は、狙いを違えることなく東方号の頂上に命中した。赤い炎に包まれた艦橋を見て、
ギーシュたちの顔が蒼白となる。
 だが、炎が引いた後で、ティファニアは無事な姿を見せた。ルクシャナがあの瞬間、ありったけの力を使ったカウンターで彼女を
守ったのだった。しかし、それも一度限り、精霊に呼びかける力を失ったエルフは、ただの人間と変わりない。
「まったく、わたしはひ弱な学者ふぜいなのに、無茶させてくれちゃって。ほんと、あんたは手間のかかる研究素材よねえ……
はは、もう精神力がカラだわ」
「ル、ルクシャナさん!」
「バカ、さっさと逃げなさい! あいつはあんたを狙ってる。あんたが死んだら、もうエルフにも人間にも希望はないのよ! 
ハルケギニアにも、私の故郷にも!」
 ルクシャナはティファニアをひきづるようにして艦橋から連れ出そうとした。だが、入り口の鉄の扉は火炎で焼けていて、
とても触れるようなものではなかった。逃げ場を失った二人に向かって、マザリュースはさらに火炎弾を放とうとしてくる。
今度は防ぐ手立てはない。
 マントを広げて、ルクシャナはティファニアをかばおうとした。砂漠の民の衣服はある程度の耐熱性はあるが、そんなものは
焼け石に水でしかない。それでも、万に一つの可能性に賭けていた。生まれ育った故郷を守るために。
「ルクシャナさん!」
「いい、火が行っちゃうまで息をするんじゃないわよ。のどが焼けて呼吸できなくなるからね。それと、アリィーには悪いけど
よろしく言っておいて。やっとわたしなんかと別れられてよかったね、早くいい子を見つけられるといいわねって」
 切れ長の瞳に優しい笑顔が、ティファニアにルクシャナの覚悟を教えてくれた。止めようとする言葉が、のどまで出掛かって
それ以上上がってこない。ここまでの覚悟を決めた相手を、どう言って止められるというのか。超獣は、今度こそ火炎弾を
外すまいと放ってきて、視界が赤く染まっていく。
 もう誰が急いで飛んできても間に合わない。ルクシャナの悲しい背中を見て、ティファニアは無駄だと知りつつ、願いを
託すように輝石を握り締めて祈った。
”誰か、誰でもいいからルクシャナさんを助けて、お願い!”
 自分にはやるべきことがある、けれどそのために誰かが傷つくのは嫌だ。その、矛盾して、都合のいいとさえいえる願いは
神も呆れてかなえるのをためらうかもしれない。しかし、どんなに崇高な理由があろうとも、犠牲になった命と、その人生が
返ってくることはないのだ。
 ただひたすら、純粋に願う心にあるのは優しさのみ。その心が届いたのか、冥界への門をくぐろうとしていたふたりは
今一度救われた。だが、それとても、重い代償を運命の女神は支払わせた。至近距離まで迫っていた火炎弾とティファニアとの
あいだに、突如カオスリドリアスが割り込んできたのだ。
「あ、ああっ!」
 ティファニアの眼前で火炎弾を背中に受けたカオスリドリアスは、煙をあげながら東方号の甲板に墜落した。主砲の上に
這い蹲るようにして倒れこみ、苦しげに首をあげて弱弱しく鳴く。その目は、元の優しかったリドリアスのものだった。
「最後の力で、正気を取り戻して助けてくれたんだね……そんなになってまで、わたしなんかのために、ごめんね、ごめんね」
 ぽろぽろと、ティファニアの瞳から涙が零れ落ちていった。すまなさと悲しさと、情けなさが心に満ちていく。自分たちと
なんの関係もない怪獣までが、必死にヤプールの呪縛にあらがって助けてくれたのに、自分はなにも返してやることができない。

35:ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理
12/07/09 00:29:00.85 2F4God7F
 苦しむリドリアスは、懸命に我が身を蝕むマイナスエネルギーと戦っていた。自分の心は自分だけのものだと主張するように、
悪の力そのものであるマイナスエネルギーを追い払おうと、翼を羽ばたかせて体をよじる。しかし、ヤプールの強烈な負のパワーは
リドリアスの肉体の奥底まで食い込んで、無駄な抵抗だとあざ笑うようにその瞳を狂気の赤に染めていく。
「愚かな奴め、怪獣は怪獣らしく破壊衝動にだけ身を任せていればいいものを。人間どもなぞの味方をするからこの様だ」
 ヤプールは、死に掛けのリドリアスを見下ろして冷酷に告げた。しかし、ティファニアは涙を流しながらも、空からあざ笑う
悪魔に向かって叫び返した。
「ヤプール! あなたに、あなたに生き物の価値を決める権利なんてない! 人間だって、エルフだって、怪獣だって、
みんな一生懸命に生きているだけなのに、みんな平和に生きたいだけなのに、あなたにみんなの幸せを奪う資格なんてないわ!」
「フハハハハ、弱い者は常にそうやってほざく。この宇宙は、より強いものが弱いものを支配する。星をひとつ滅ぼすたびに、
お前のような力を持たない負け犬が吼えるが、絶対的な力の前には何も変わりはしないのだ!」
 あざけるヤプールの笑い声が、歯を食いしばるティファニアを冷たく包み込む。彼女も、ずっと森の中で暮らしてきたとはいえ、
まったくの世間知らずというわけではない。襲ってくる野盗から子供たちを守るために杖をとったことも何度もある。しかし、
改心を信じて見逃してきた野盗と違い、絶対悪であるヤプールには雪山のような抗いがたい冷たさしか感じなかった。
「さあて、無駄話で時間稼ぎをするのもそのへんにしてもらおうか。役立たずのその鳥はあとで始末するとして、貴様は先に
死んでもらおうか」
「ヤプール……あなたは、あなたは……っ!」
 悪魔、と言いかけた言葉をティファニアは飲み込んだ。ののしる言葉を吐いてしまったら、それでこの悪魔に負けてしまう
ような気がしてならない。悪魔が悪魔たるゆえんは、なんでもない人々を悪の道に引きずりこんでしまうことだ。欲望、妄想、
怒り、悲しみ、憎悪、誰の心にでもある闇を増幅させ、ヤプールは己の手駒として利用してきた。
 そして、利用できないと見たものに対しては、悪魔は限りなく冷酷になる。マザリュースは怨念そのままの邪悪さで、
今度こそとどめを刺すべく焦点の合わない目を向けてきた。今度こそ、もう助からない。助かりようもない……それなのに、
誰もあきらめていない光景がティファニアの目に映ってくる。
 死が間近に迫る、静止画のような世界。無駄だと知りつつかばおうとしてくれるルクシャナ、間に合わないと知りつつ
駆けつけてこようとしている仲間たち……皆、自分のために……ティファニアは彼らの心の叫びを聞き、戦う姿を見て、
心の底から願った。
 
 
”もう誰にも、わたしのために傷ついてほしくない。わたしにも、わたしにも……みんなを守れる本当の強さがほしい!”
 
 
 その瞬間、ティファニアの思いに呼応するかのように、彼女の握り締めていた輝石がまばゆい輝きを放った。
「えっ? なっ、なに!」
 光は驚くティファニアとルクシャナの前で、矢のように天に立ち上った。そして、闇に染まった天空の一角が破られて、
太陽の光とともに青く輝く光の玉が舞い降りてきた。

36:ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理
12/07/09 00:29:30.82 2F4God7F
 あの色は、輝石の輝きと同じ!? 呆然と見守るティファニアの前で、青い光の玉は超獣マザリュースにぶつかると、
その輝きでマザリュースを包み込んだ。光の中で超獣の悪霊は断末魔をあげ、溶ける様に崩れていく。そして、
破られた闇の結界から降り注いできた太陽の光が差した瞬間、マザリュースは光の中に消滅した。
 
 
”あきらめるな、君たちにはまだ、守らなければならない未来がある”
 
 
 そのとき、ティファニアは心に呼びかけるような力強い声を聞いた。
 
”あなたは誰? わたしに話しかけてくるのあなたは?”
 
”私は、君の未来を信じる強い思いに導かれてやってきた。種族のかきねを超えて、すべての命をいつくしむ君の優しさと、
困難に立ち向かう強い意志が、私にこの星に迫る危機を教えてくれた。
 
”あなたは誰……? 神さま……?”
 
”私は神ではない。しかし、私は君を通して、今のこの星の人々の持つ大いなる可能性を知った。私も、今一度この星を守りたい”
 
”もしかしてあなたは……大昔にエルフたちを守ってくれた、聖者……”
 
 ティファニアが、あのバラーダの神殿で聞いた名を呼ぶと、光は彼女の心に映る光景に自分の姿を形にして投影して見せた。
 光の中にたたずむ、銀色の勇姿。それはまさしく、ティファニアが心に夢描いてきた希望そのものだった。
 
”あなたは……やっぱり!”
 
 心と心の会話は時を必要とせず、光の化身はティファニアの心と幻のように語り合って去っていった。
 後には、天空に輝く光が現実として残り、その輝きは闇に呑まれようとしていた街を新しい輝きで照らし出していった。
 
「マザリュース! な、なんだいったい!?」
 ヤプールも、突然の事態に驚き戸惑っていた。アディールを完全に封印していたはずのエネルギーフィールドを貫き、
舞い降りてきた光の玉はマザリュースを消し去り、東方号とティファニアの頭上に輝いている。その輝きはヤプールの
マイナスパワーのそれとはまったく違い、夜空の満月のように優しく穏やかな色をはなっている。


37:ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理
12/07/09 00:29:49.66 2F4God7F
 そして、夜の終わりを月が示すように、光の玉が開けたエネルギーフィールドの裂け目から闇の結界は雲が晴れるように
消滅していった。それに次いで現れる青空、太陽の輝きを見て人々は喜びの声を上げた。
「太陽が……太陽だわ!」
 闇の結界は崩れていき、アディールを再び白い太陽が照らし出していく。人間とエルフたちは、その美しい輝きに
見惚れて空をあおぎ、ヤプールと超獣たちは闇の結界の崩壊にうろたえる。
 そして、青い光は彗星のようにティファニアの真上を飛び去ると、光の雨をリドリアスに降らせていった。白くまばゆく輝く
美しい光のシャワーを浴びると、苦しんでいたリドリアスの表情が穏やかになり、その体から黒いもやのようなものが
抜け出していった。すると、変異していたリドリアスの肉体が逆再生を見るように元に戻ったではないか。
 治ったの! と、歓呼の声をあげるティファニアたち。そして、リドリアスが光の玉を見上げて、懐かしそうな声で鳴くと
光の玉は応えるように数回瞬き、まっすぐにアディールを目指して飛びたった。その目指す先にいるのは超獣軍団! 
光の砲弾のように青い光はアディールで暴れる怪獣、超獣のあいだをすり抜けていき、強烈な光を放ってエースを囲んでいた
アントラーやアリブンタをふっとばした。
「この……光は」
 エースも、倒れながらも空をあおぎ、その光に初めて見るとは思えない不思議な近親感を感じていた。
 この光の暖かさと穏やかさ、そして内から感じられる力強さは、まるで光の国の正義の炎と同じ。
 そして青い光の玉はゆっくりと倒れ伏しているヒドラのもとに舞い降りた。
 その光芒の中から具現化し、大地に降り立つのは新たな光の巨人。
 
「青い巨人……あの、ウルトラマンは!」
 
 彼らは、その巨人を見たことがあった。いや、忘れようもないほどすぐ前に、彼の姿は東方号の人間たちとエルフの脳裏に刻み込まれていた。
 初代ウルトラマンを彷彿とさせる銀色を基調としたスマートな肉体と、柔和さを感じさせる穏やかな眼差しを持つ顔は、まさに
あの神殿に奉られていた古代のウルトラマンとうりふたつ! そして、その身の銀色を包むのは、大海、大空、月光のごとき深い青。
 青い、ウルトラマン。あれが、かつて滅亡の危機に瀕したエルフたちを救ったという、伝説の巨人。あの伝説は、本当だったのか!
 真実を知る者も、知らない者も息を呑んで見守る中で、青いウルトラマンは虫の息で横たわっているヒドラのたもとにひざをつくと、
体の上に手のひらをかざした。すると、その手から輝く光の粒子がシャワーのようにヒドラに降りかかっていった。
『コスモフォース』
 光の粒子はヒドラの体に吸い込まれ、ヒドラの体中にあった傷がふさがっていき、苦しんでいた息も整ってきた。
 エネルギーを与え、傷を癒す蘇生の力。あれが、あのウルトラマンの力なのか……

 ヒドラの体を優しく横たえた青いウルトラマンは、手のひらを掲げる構えをとって立ち上がった。
「ムゥゥン、ヘヤァッ!」
 戦うというのか。しかし、相手はまだ五体以上もの大軍団。新しいウルトラマンがどれほどの力を持っているかは未知数だが、
いくらなんでも無謀だと誰もが思った。
 だが、想定外の事態にうろたえていたのはヤプールも同じだった。ウルトラ兄弟ではなく、今までこの世界で確認された
どのウルトラマンとも違う、ヤプールも見たこともない未知のウルトラマン。確かに戦力差では、まだ圧倒的に超獣軍団が
有利だ。しかしヤプールは直感によって、青いウルトラマンが非常に危険な存在だと感じ取った。
「おのれぇ、だが雑魚がいまさらひとり増えたところでなにができる! ひねりつぶしてくれるわぁ!」


38:ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理
12/07/09 00:30:38.26 2F4God7F
 ヤプールの敵意の命令を受けて、ギロン人が超獣軍団に攻撃を命じた。
 ゴモラ、アントラー、アリブンタ、カオスゴルメデ。マザリュースを欠いたとはいえ、四体もの怪獣・超獣が四方から青いウルトラマンに
襲い掛かっていく。
 はじめに対決することになったのはゴモラだった。突進力にものを言わせ、エースを追い詰めたときと同じように角を振り立てての
真正面からの突撃の威力は、いまさら語るまでもない。
 どうする? 同じ疑問を抱いてのまなざしが、善悪を問わずに青いウルトラマンに注がれる。避けるか、受け止めるか? だが、
青いウルトラマンは突進してくるゴモラの勢いに逆らうことなく、まるでダンスのステップを踏むように身をかわして、ゴモラをそのまま
すり抜けさせてしまった。
「かわした!」
 目標を見失ったゴモラは、何もない空間にパワーを浪費させて止まるしかなかった。青いウルトラマンにはかすり傷ひとつない。
 だがむろん、ゴモラがそれでおさまるはずはなく、再度突進を仕掛けてくる。また、ほかの怪獣、超獣たちも続々と迫ってくる。
 今度はどうする!? だが青いウルトラマンは臆することなく、そのすべての攻撃を俊敏な動作でさばいていった。
「シュワッ! ハッ、フッ! ヘヤァッ!」
 ゴモラの突進を闘牛士のように受け流し、アントラーのはさみこみの勢いを利用して回転投げをかけ、アリブンタが気づいたときには
後ろに回りこんで押し倒していた。怪獣たちはその間、青いウルトラマンに指一本触れられていない。まるで、宙に舞う木の葉のように
いくら棒切れを振り回してもするりするりとかわしてしまう。
 なんという無駄のない身のこなしなのか、怪獣たちのパワーが完全に翻弄されている。体術に覚えのある人間やエルフは、
青いウルトラマンの見たこともない技法、地球で言えば合気道のような、相手の力を逆に利用する方法で怪獣たちをいなす姿に
美しささえ覚えて嘆息した。
 が、避けるだけでは勝てない。怪獣たちはいなされても勢いを衰えさせず、最後に遅れてきたカオスゴルメデがゆっくりとした
足取りでつかみかかってくる。こいつは勢いを利用していなすことはできない。なら!? 青いウルトラマンは構えをとり、掌底を
胴に当てて押し返した。
「ハァッ!」
 押し返されたカオスゴルメデは後ずさり、青いウルトラマンは構えを取り直す。カオスゴルメデは怒って再度攻撃を狙ってくるが、
青いウルトラマンは腕や手のひらでその攻撃を受け止め、あるいは受け流してしまう。カオスゴルメデはさらに怒り、噛み付き、
尻尾攻撃などを次々と繰り出してくるが、そのすべてはかわされる。
「あの身のこなし、まるで踊っているようだ……」
 あるエルフの戦士はそうつぶやいた。怪獣がいくら攻撃をかけても、その攻撃はさばかれて、あらぬ方向へと力を空費させられてしまう。
 そう、まさに力が空回りさせられている。カオスゴルメデだけではない、ゴモラやアリブンタがいくら攻撃をかけようとしても、
青いウルトラマンは攻撃のすきまを縫い、力をいなし、相手の力を逆用し、気づいたときには死角から押されて、味方の怪獣と
衝突させられてしまったりしてフラフラだ。
「シゥワッ!」
 無駄がない動き、どころの話ではない。怪獣たちのむきになっての四方からの攻撃も、まるで風の妖精が捕まえようとする
人間の手のひらからすり抜けていくように、エネルギーを無駄にするだけでまるで当たらない。これではウルトラマンと怪獣との
戦いではなくて、怪獣たちが同士討ちをしているようなものにさえ見えた。

39:ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理
12/07/09 00:31:25.01 2F4God7F
 だが、人々は戦いを見守りつつも、青いウルトラマンの戦い方にひとつの特徴があるのに気がついた。それは、彼は戦いの
中でどんなに攻撃に有利な状況になっても、決して押し倒したり投げたりする以上の攻撃をかけないことだった。
 今だ、パンチだ! と思っても、掌底の一撃で押し返し、相手の腹ががらあきの状態でもキックをかけずに、わざと体の
強固な部分を選んで軽い蹴りを放ち、打撃を跳ね返すだけにとどめている。それは、相手の消耗を待って、自分の力を温存して
戦っているのかと最初は思われたが、そうする必要のない絶好の機会でも決して彼は怪獣たちを殴らない。いや、戦いが
始まってからこれまで、彼は掌底か手刀のみで戦い、一度たりとて拳を握ってはいない……彼はまさか、人々がそう思い始めたとき、
カオスゴルメデがヒドラを倒した必殺光線『強力怪光』を吐いて攻撃してきた。
 危ない! だが、青いウルトラマンは手をかざして青いバリアーを作り上げた。
『リバースパイク!』
 バリアーにさえぎられて、強力怪光はウルトラマンには当たらない。それでもカオスゴルメデは力づくでバリアーを突破しようと
強力怪光を吐き続けるが、青いウルトラマンはバリアーを張ったままカオスゴルメデに向かって飛ばしてぶつけた。
「フゥワッ!」
 強力怪光を押しのけながら飛んできたバリアーはカオスゴルメデに当たり、カオスゴルメデは全身がしびれたように体を震わせた。
バリアーの威力はショックを与える程度でダメージを与えるにはいたっていないが、それでも一時的に動きを止めるだけの働きはあった。
そして、青いウルトラマンは他の怪獣たちが自分と一定の距離を持っているのを確かめると、両の手のひらを胸元で上に掲げた。
その手にきらめく光の粒子が集まっていき、彼は手のひらを空に向かって上げた。
 あれは光線技の構えか。今なら確実に当てられるだろう、だがそうしたら操られているゴルメデもろとも……しかし、彼の
手に集う光はどこまでも優しく美しく、彼は集まった光をゆっくりと押し出すようにして右手のひらから放った。
 
『フルムーンレクト』
 
 光の粒子はカオスゴルメデの全身を包み込むように降り注いでいき、すると暴れ狂っていたカオスゴルメデの動きが静まった。
目の輝きに溢れていた狂気の色が消えていき、体から黒いもやのようなものが抜け出ていく。あれは、ヤプールの与えた
マイナスエネルギーの塊か……ゴルメデを蝕んでいた邪悪なパワーが消え去ったことで、カオス化していたゴルメデの肉体が
元に戻っていく。
 邪悪な力を消し去る浄化の力……あれが、あのウルトラマンの力なのか。相手の力を受け流す戦い方を続けていたのも、
怪獣たちを傷つけないようにするためだったのか。人々は、腑に落ちない戦い方を続けていたウルトラマンの目的が、怪獣の
撃破ではなく救命にあったことを知った。
 ゴルメデに宿ったマイナスエネルギーが完全に浄化されたことを見た青いウルトラマンは、よかったというふうに静かに
うなずいた。解放されたゴルメデはゆっくりと倒れこんだが、目を閉じて安らかな息を吐いている。その光景を見て、東方号の
甲板で火傷を負ったギーシュの腕を治療していたモンモランシーは微笑みながらつぶやいた。
「優しいのね……あのウルトラマン」
「ああ……あんな戦い方も、敵を守るための戦い方なんてものもあるんだな。すごいな……ほんとうにすごいよ」
 きざったらしい顔に真剣な眼差しでギーシュも感動していた。今まで自分は、戦いでは味方を守り、敵を傷つけるのが
当然だと思っていた。恐らく、ほかの大勢の人たちもそうだろう。そして、ヤプールに操られたあの怪獣たち、もしも自分ならば、
苦渋はしても最後は倒すことを選択していただろう。仮に浄化の手段を持っていたとしても、そのためにはかなりの割合で
ゴルメデを傷つけてしまったに違いない。しかし、あのウルトラマンは徹底して相手にダメージを与えない戦法を貫いて、
ほとんど無傷のままでゴルメデを救ってしまった。


40:ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理
12/07/09 00:31:50.44 2F4God7F
 すごいと思い、同時にまだまだ世の中には学ばなければならないことがあるのだと思う。
 敵を傷つけずに無力化し、救う戦い方。より敵を傷つける戦い方をばかり追及してきた自分たちには思いもよらなかった。
 
 だが、ゴルメデを救うために精神を集中した隙に、怪獣たちは次の行動をとっていた。
 突然、青いウルトラマンの足元の地面が崩れ、地中から出現したアントラーが背後から襲い掛かった!
「フワッ!? クォォッ!」
 間一髪、大アゴで挟み込まれるのだけは回避したものの、ふいを打たれたのでは攻撃をさばく暇もなかった。大アゴを
両腕でがっちりと掴んで押し返そうとするが、足場が崩されていては力が出せるわけがない。そして、彼に向かって、
今度こそといわんばかりにゴモラが助走をつけて、砂煙を巻き上げながら突撃してくる。
 危ない! エースに大ダメージを与えたあの攻撃。しかも、助走距離はさらに長いから威力も当然のごとく倍増している。
さらには振動波の破壊力も加われば、万全の状態からでも一撃で致命傷になりかねない。ゴモラはアントラーも巻き添えに
してもいいといわんばかりの勢いで突撃してくる。アントラーは青いウルトラマンが少しでも力を緩めたら、そのままはさみ切って
しまいそうなパワーを緩めない。
 やられるっ! 誰もがそう思ったとき、アントラーに銀色の弾丸が叩き込まれた。
 
「トォーッ!」
 
 誰も想定していなかった。傷ついて、今にも息絶えようとしていたかに見えていたウルトラマンAが駆け込んできて、
横合いからアントラーにジャンプキックをお見舞いしたのだ。
 力のベクトルを崩され、横殴りに吹っ飛ばされるアントラー。
 今だ! 青いウルトラマンはアントラーから解放され、蟻地獄から脱出を図ろうとする。すぐ後ろにはゴモラ、だが、
アントラーに一撃を決めたエースがそこで力尽き、蟻地獄に沈もうとしているのを見た彼はエースを抱えて飛び上がった。
「ショワッチッ!」
 間一髪! 飛翔した青いウルトラマンのすぐ下をゴモラが猛烈な勢いで通り過ぎていった。空振りし、勢いがつきすぎたままで
ゴモラはあさっての方向に街を破壊しながら突き進んでいく。アントラーは踏みつけにされ、アリブンタは地上での行動力の
鈍さからすぐには近づいてきそうにはない。
 青いウルトラマンは離れた場所に降り立ち、エースを降ろした。
 ほっとする人々。よかった、ウルトラマンはふたりとも無事だった。しかし、エースのカラータイマーは今にも消えそうで、
肩は苦しそうに上下している。さっきの一撃は、気力で体を無理矢理動かしての最後の力。それを使い切ってしまった今、
命の灯火が尽きかかっているのは誰の目にも明らかだった。
 その最後の力を使って、絶体絶命の危機を救ってくれた。青いウルトラマンは深くうなずくと、額に指を当てて精神を集中した。
「ハァァッ……」
 青いウルトラマンの額が光り、緑色の光が線のようにエースの額のウルトラスターに吸い込まれていった。
 
『ラミーサプレー』
 
 高エネルギーに満ちた回復光線がエースの全身を駆け巡り、尽きかけていたパワーがみるみる回復していった。
カラータイマーが危険信号を鳴らすのをやめ、再び美しい青色に返っていく。エースは、体を駆け巡る正しいエネルギーの
脈動に、彼の真実を知った。

41:ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理
12/07/09 00:32:20.32 2F4God7F
〔ありがとう、おかげで助かった〕
 どちらからともなく、ふたりのウルトラマンは互いに礼を言い合った。立ち上がり、差し伸べた手をとり握手をし合う。
ウルトラマンAと、人々はまだ名も知らない青いウルトラマン……彼らのその姿は、心を通わし相手を認め合うのには
難しいことはなにもいらないと、そう教えているようだった。
 そして、人々は青いウルトラマンの、ゴルメデを救った輝きにひとつの言い伝えをおぼろげに重ね合わせ始めていた。
【光る手を持って、あるときは青き月の光のごとき優しさで悪魔に憑りつかれたものを鎮めた……勇者】
 確証はない。口に出す者もいない。しかし、現実は今この瞬間に目の前にある。
 瞬きしている間にも、戦いは次なるステージへとその幕を進める。わずかな休息の時は去り、再び超獣と怪獣の凶暴な
叫びが街にこだました。
〔いこう〕
〔ああ!〕
 目を合わせて短くうなずきあい、ふたりのウルトラマンは構えを取る。互いのことを何も知り合っていなくても、ふたりとも
その目で見た相手の姿で意思を決めていた。
 そしてその心は最初からひとつ、ならばこれ以上の言葉はいらない。
 
「シュゥワッ!」
「ヘヤァッ」
 
 アディールに太陽が蘇り、ふたりの光の戦士が立ち上がった。だが、まだヤプールの軍団は強力で油断は出来ない。
「おぉのれぇぇ! いい気になるなあ! まだ勝負はこれからだ。ひねりつぶし、叩き潰し、皆殺しにしてくれる!」
 ギロン人、アリブンタ、アントラー、ゴモラ。いずれも強力無比な強敵たち、彼らのパワーにはいささかの衰えもなく、
戦いはまさにこれからが本番だ。
 激突の時は避けようもなく、刹那の未来に始まるだろう。ウルトラマンAと青いウルトラマンに、アディールの未来は託された。
 
 そんな中で、ティファニアは一心に祈りながら、ひとつの名前をつぶやいていた。
「お願い、みんなの未来を守って……コスモス」
「コスモス? それってもしかして、あのウルトラマンの……」
 尋ねるルクシャナに、ティファニアはうなずいた。

42:ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理
12/07/09 00:32:46.75 2F4God7F
 あのとき、最後に彼が言ったことが心の中に蘇ってくる。
 
”私は、君たちが生まれるよりずっと遠い昔から宇宙に生きる者たちを見守ってきた。その中には残念ながら、滅んでしまった
星や生き物たちも数多くある。だが、苦難に負けずに新しい未来を掴むことができた者たちは、皆どんなときでもあきらめずに、
希望を信じ続ける心を持っていた。君にもきっと、同じ強さがあるはずだ”
 
”わたしなんかに、そんな強さが……教えて! わたしにできることがあるなら、わたしは命にかえても果たしたいの”
 
”残念だが、その答えは君自身が見つけ出さなければ意味がない。だが、命あるものには必ずその可能性があることを、
私は以前にひとりの人間の友から教わった。時間はかかるかもしれないが、それまでは私が君たちの未来を守るために戦おう”
 
”わたしたちのために、戦ってくれるの? ウルトラマン”
 
”いいや、君たちだけではない。この星に生きる、すべての生命のために私も命をかけよう。だが君たちが正しい未来へ
たどり着けるかは、君たち自信ががんばらなければならないことを忘れてはいけない。そうでなければ、何度でも同じことが
繰り返される。いいね……”
 
”ま、待って! わたしはまだ、あなたに聞きたいことが! まだ名前も聞いてないのに”
 
”私はコスモス、ウルトラマンコスモス……あきらめるな、君の思いは、決して無駄ではないのだ”
 
 光との出会い、それはティファニアの心に強く刻み込まれた。
 人間もエルフも、やれることはやりつくした。あとは、あとは頼むぞウルトラマン!

「わたしは、わたしはあきらめてなんかない! でも、わたしには戦う力はないの! お願い、あなたがこの世界を
愛しているなら、力を貸して! ウルトラマンコスモス!」

 叫びはこだまとなり、力となって光の戦士に届く。
 光が勝つか、闇が勝つか。数多くの願いと祈りを受けて、戦いは決戦へとその幕を進める。
 
 
 続く

43:ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理
12/07/09 00:33:32.58 2F4God7F
今週はここまでです。楽しみにしてくださっていた方、お待たせしてすみませんでした。
さて、今回は満を持してウルトラマンコスモス登場! この一言に限るでしょう。
いやあ、第一部の28話で最初の伏線を張ってからここまで、実に3年半をかけての回収となりました。
あのときはここまで長続きするとは我ながら思ってませんでした。お付き合いくださった皆様、ほんとうにありがとうございます。
筆者といたしましても、実のところコスモスは平成シリーズで一番好きなウルトラマンですので感無量です。
ですが、山場はまさにこれからです!
 
次回、Wウルトラマン対超獣軍団! たのむぞコスモス! 優しさから強さへ、モードチェンジだ!


代理投下ここまで

44:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 00:39:23.74 BVGmn+g0
ウル魔乙。代理乙。


45:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 00:43:21.73 2F4God7F
代理スレも立ててきました

【代理用】投下スレ【練習用】7
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

46:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 00:49:37.20 2F4God7F
ちょっとコテハン記憶の設定が上手くいってないようなのでテストさせてください

47: 忍法帖【Lv=18,xxxPT】
12/07/09 11:52:53.38 vC2Nd74W
サイヤの人、もう、くるよね!

48:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 15:18:52.62 KSM80+sj
ティガの造形したマヅカ3Dワークスって大津のいじめ犯と関係あるらしいな
なんか幻滅した

49:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 15:56:14.47 RbUIE1bf
>>48
だからどうした?
嫌特撮厨かウル魔にアンチしたいか知らんがスレチだ

50:ゼロの使い魔BW
12/07/09 17:04:36.95 AjUtxxZk
こんがんは。問題なければ17:10ごろから
ゼロの使い魔BWの二話を投下したいと思います

51:ゼロの使い魔BW 1/6
12/07/09 17:11:15.28 AjUtxxZk
 身体を揺さぶられて、目が覚めた。
 目を開いたら、見慣れぬ格好の少年がこちらを見下ろしていて、思わず叫んだ。
「だ、誰よあんた!」
「……ツカイマだよ、ゴシュジンサマ」
「ああ、使い魔ね。そうね、昨日召喚したんだっけ」
 窓から朝の日差しがさんさんと降り注いでいる。ルイズは寝台の上でうーんと伸びをすると、椅子にかけてあった服を指して命じた。
「取ってくれる?」
 使い魔の少年は無言で頷くと、服を取ってルイズに手渡した。
 寝起きのけだるさのままネグリジェに手をかける。途端にくるりと背を向ける辺り、この使い魔にも一応年頃の少年らしい部分もあるらしい。
「後、下着も―そこのクローゼットの一番下に入ってるから、取って」
 彼はクローゼットを開けると、ぎくしゃくとした動きで下着を取り出す。と、そこで完全に停止した。
 なにを考えて止まったのかが分かって、ルイズは呆れた。別に、使い魔に見られたところでどうということもないのだが、彼は動きそうにもない。
「……投げてくれていいわよ」
 飛んできた下着は、過たずルイズの手元に納まった。見えてるんじゃないかと思うようなコントロールである。むしろ見てるんじゃないかと思って使い魔に目をやるが、完璧に背を向けていた。
 服を着させるところまでやらせようと思っていたが、やめた。無駄に時間がかかるのは分かりきっている。下手をすれば、朝食を食べそこなうことにすらなりかねない。
 壁を向いて硬直している使い魔を横目に、ルイズはこれまでのように着替え始めた。


 身支度を済ませたルイズたちが廊下へ出ると、ちょうど近くの扉が開くところだった。
 中から出てきたのは、燃え上る炎のような赤い髪の女の子だ。
 ルイズよりも背が高く、スタイルも良い。彫りの深い美貌に、突き出た胸元、健康的な褐色の肌、と街を歩けば十人が十人振り返るような容姿だった。
 だが、その顔を見た途端、ルイズは不機嫌そうな顔になる。赤い髪の少女がにやりと笑った。
「おはよう、ルイズ」
「おはよう、キュルケ」
 むっつりとした表情のまま、ルイズは挨拶を返す。
「あなたの使い魔って、それ?」
「そうよ」
 寡黙に控えている少年を指さしての問いに、ルイズは短く答えた。
「あっはっは! 本当に人間なのね! さっすが、ゼロのルイズ」
「うっさいわね」
 無愛想に返答するルイズを横目に、キュルケは少年を観察する。
「中々可愛らしい顔してるじゃない。あなた、お名前は?」
「なに色惚けたこと言ってんのよ。あと、名前を聞いても無駄よ。そいつ、記憶喪失だから」
「それは残念。……だけど、記憶喪失、ねぇ。それは元から? それとも、ルイズのせいかしら?」
 その指摘に、目の前の勝気な少女が言葉に詰まったのを見て、キュルケは頷いた。
「なるほどねえ。―それじゃ、あたしも使い魔を紹介しようかしら。フレイムー」
 キュルケが呼ぶと、背後の扉の中から赤い巨大なトカゲが現れた。大型の獣並みの体躯に、真紅の鱗。尻尾の先は燃え盛る炎となっていて、口からもチロチロと赤い火が洩れている。
「……リザード?」
 熱気を物ともせずにそれに見入っていたルイズの使い魔が、ここで初めて声を上げた。
「りざーど? これは火トカゲよ」
「ヒトカゲ?」
 首を傾げて言ったルイズの使い魔に、キュルケは微笑みかける。
「なんか発音がおかしい気がするけど、そうよー。火トカゲよー? しかも見て、この大きくて鮮やかな炎の尻尾。間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ? 好事家に見せたら値段なんてつかないわ」

52:ゼロの使い魔BW 2/6
12/07/09 17:13:03.65 AjUtxxZk
「そりゃよかったわね」
 ルイズが無愛想に答えた。
「素敵でしょ? もう、あたしにぴったりよね」
「あんた、『火』属性だしね」
「そう。あたしは微熱のキュルケですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。でも、男の子はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね?」
 キュルケは得意げに、その男であれば視線を釘付けにされそうな胸を張った。
 ルイズも負けじと胸を張るが、残念ながらボリュームの違いは明白だった。それでもキュルケを睨みつける辺り、かなりの負けず嫌いらしい。
「あんたみたいにむやみやたらと色気を振りまくほど、暇じゃないだけよ」
 キュルケは余裕の笑みを浮かべて、その言葉を受け流す。そして颯爽とこの場を後にしようとして、使い魔のサラマンダーが居ないことに気づいた。
「あら? フレイムー?」
「わたしの使い魔も居ないわ。……まさか、あんたのサラマンダーに食べられちゃったんじゃ」
「失礼ね。あたしが命令しなきゃ、そんなことしないわ。……あ、居た」
 ルイズとキュルケが言い争っていた場所から少し離れたところに、二人の使い魔は揃っていた。二人が喧嘩している間に、使い魔は使い魔で親睦を深めていたらしい。
 少年は、慣れた手つきでサラマンダーを撫でてやっている。撫でられているほうも、妙に落ち着いた様子で彼の手のひらを受け入れていた。
 キュルケが目を丸くする。
「あらま。確かに、誰彼構わず襲うような子じゃないけど、誰彼構わず懐く子でもないのに」
「あんたのことを見習ったんじゃないの?」
「どういう意味よそれ。……まあ良いわ。それじゃ、お先に失礼。行くわよフレイムー」
 呼ばれて、サラマンダーが動き出す。図体に似合わないちょこちょことした足取りでキュルケの後を追うが、少し行った先で少年のほうを向くと、ぴこぴこと尻尾を振った。
 少年も微笑んで、手を振って返す。
 一連の流れを見ていたルイズが、少年の頬をつねりあげた。
「……いふぁい」
「いーい? あの女はフォン・ツェルプストー。わたしたちヴァリエール家にとっての、不倶戴天の敵なの。だから、ツェルプストーの使い魔なんかと仲良くしちゃダ、メ、よ?」
「ふぁい」
 一音ごとに頬をねじり上げるようにして確認され、少年は涙目で答えた。


 トリステイン魔法学院の食堂は、学園の敷地内で一番背の高い、真ん中の本塔の中にあった。食堂の中にはやたらと長いテーブルが三つ並んでいて、それぞれに少年少女が座っている。
 ルイズは、黒いマントをつけた生徒が並ぶ真ん中のテーブルへと向かった。
 ここに使い魔を連れてくるのには非常に苦労した。なんせ他の使い魔を見るたびに、吸い寄せられるようにそっちに行こうとするのである。首輪と縄が必要かしら、とルイズは思った。
 その使い魔は、豪華な食事が並べられたテーブルや、絢爛な食堂をきょろきょろと見回している。その顔に少なからぬ驚きを見て取って、ルイズは得意げに指を立てて言った。
「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ。昨日も説明した通り、メイジのほとんどは貴族。だから、『貴族は魔法をもってしてその精神となす』のモットーのもと、貴族たるべき教育を受けるの。この食堂も、その一環ね」
「すごいね」
 素直に驚きを示す使い魔に、椅子を引くように促す。本来なら「気が利かないわね」ぐらいは言ってやりたいところだが、記憶喪失では致し方ない。
 椅子についてから、ルイズは考えた。この使い魔がもう少し反抗的であれば、床ででも食べさせるつもりであったが、今のところは特にそういった気配はない。
 現在も自分が座るべき席ではないと理解しているためか、脇にじっと佇んだままである。
 しばらく逡巡した後、ルイズは近くに居た使用人の一人を呼びとめた。
「ちょっと、そこのあなた」
「はい、なんでしょうか。ミス・ヴァリエール」
 呼びとめられた黒髪のメイドに、脇の使い魔を指して見せる。
「こいつに、なにか食べさせてやって頂戴」
「分かりました。では、こちらにいらしてください」
「食べ終わったら戻ってくるように」
 ルイズの言葉にやはり頷くと、使い魔は促されるままにメイドについて行った。

53:ゼロの使い魔BW 3/6
12/07/09 17:15:48.07 AjUtxxZk
「もしかしてあなた、ミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」
 行きがてらにそう問われて、少年は頷いた。目下のところは、彼の唯一の身分である。
「知ってるの?」
「ええ。なんでも、召喚の魔法で平民を呼んでしまったって噂になっていますわ」
 にっこりと笑って、黒髪のメイドは答えた。屈託のない、野の花のような笑顔だ。
「君もメイジ?」
「いいえ。私はあなたと同じ平民ですわ。貴族の方々をお世話するために、ここで御奉公させていただいているんです」
 どうやら自分と同じような立場らしい。納得すると、彼は黙り込んでしまった。
 記憶がないというのは、話題がないというのに等しい。訊きたいことは山ほどあったが、彼女は仕事中だったようだし、あまり時間を取らせるわけにもいかないだろう。
 そんな考えからなる沈黙だったが、どうやらそれは少年を気難しく見せていたらしい。しばらくは静かだった黒髪のメイドが、いかにも恐る恐るといった様子で口を開いた。
「……えっと、私はシエスタです。あなたのお名前を訊いても良いですか?」
 少年はそれに黙ったまま首を振る。しかし、不味いことでも訊いてしまったのだろうかと狼狽するシエスタを見て、言葉を続けた。
「名前は分からないんだ。記憶喪失だから」
「キオクソウシツ……って、あの、記憶がなくなっちゃうあれですか?」
 頷くと、シエスタの視線が途端に同情的になった。少年を上から下まで眺めまわして、はう、とせつなげな溜息を洩らす。
「大変だったんですね……」
 そうだったんだろうか。そうだった気もするが、今のところは大したことがない気もする。だが少年がなにか答える前に、彼女はいきなり彼の手をギュッと掴むと、引っ張り始めた。

「なるほど、そいつは大変だ」
 コック長のマルトー親父は、シエスタの話(学園内で出回っている噂を少し盛った上で、記憶喪失であるという事実を付け加えたもの)を聞くとうんうんと頷いた。
「やっぱりそうですよね、マルトーさん!」
「記憶を失くした上に、あの高慢ちきな貴族どもの下働きだろ? しかも、こういう仕事を選んでやってる俺たちと違って、強制的にだって話じゃねえか。いやあ、災難だな、お前さん」
 二人で完全に盛り上がってしまっている。展開について行けず途方に暮れそうになったところで、少年のお腹がぐう、と鳴った。
「おっと、悪かったな。シエスタ、賄いのシチューを持ってきてやれ。俺は戻らにゃならん」
「はい、わかりました!」
 少年を厨房の片隅に置かれた椅子に座らせると、シエスタは小走りで厨房の奥へと消えた。
 マルトーもまた、背を向けて調理場へと向かう。が、ふと振り向くとニッと笑った。
「同じ平民のよしみだ、なにか困ったことがあったらいつでも相談してくれ」
「ありがとう。いざって時には頼りにさせてもらいます」
 少年が礼を言うと、マルトーは「良いってことよ」と大笑いして去って行く。
 入れ違うように、シエスタがシチューの入った皿を持って戻ってきた。目の前に置かれたそれをスプーンで掬って、口に運ぶ。思わず顔がほころんだ。
「おいしい」
「よかった。おかわりもありますから、ごゆっくり」
 思った以上に空腹だったことに気づく。丸一日ばかり食べていないような、そんな感じだ。
 夢中になって食べる少年を、シエスタはニコニコしながら見ている。
 仕事中だったのに大丈夫なんだろうか、なんて思うが、食堂には彼女のようなメイドが沢山いたし、一人ぐらい抜けても問題ないのかもしれない。
「ごちそうさま。おいしかったよ」
「ふふ。ぜひ、マルトーさんにも言ってあげてください。喜びますから」
 食べ終わって皿を返すと、シエスタは微笑んでそう言った。そして皿を片づけるために立ち上がりざま、そういえば、と彼の顔を見る。
「えっと、なにか分からなくて困ってることとかあります?」
「……それなら、洗濯物のことなんだけど」
 なるほど、とシエスタが頷く。
「ああ、そうですよね。水汲み場とか分かりませんよね」
「それもあるんだけど、ここでのやり方もイマイチ分からないから、教えてもらえると助かる」
 彼の常識は、洗濯物には洗濯機を使え、と言っている。使い方も分かる。しかし同時に、それがここにはないだろうということもなんとなく分かっている。

54:ゼロの使い魔BW 4/6
12/07/09 17:17:19.25 AjUtxxZk
 昨晩のルイズとの会話と、今日見て回った学内の様子から、自分の常識の欠落は記憶喪失から来るものではないことに、少年はうすうす感づいていた。
「洗濯のやり方なんて何処でも同じ気がしますけど、わかりました。今からご案内しても良いんですが、ミス・ヴァリエールに『戻ってくるように』って言われてましたよね」
 確かに、「食べ終わったら戻ってくるように」と言っていた。
「それじゃ、お昼もまたこちらで取られるでしょうし、その際にでも」
「よろしくお願いします」
 心からの感謝をこめてお辞儀をすると、シエスタはウインクして答える。
「マルトーさんも言ってましたけど、同じ平民のよしみ、です。いつでも頼ってくださいね」


 魔法学院の教室は、石造りのやはり巨大な部屋だった。生徒が座る席は階段状に配置されており、その中央最下段に教師が立つ教壇がある。
 二人が入ると、先に教室に来ていた生徒たちが一斉に振り向いた。そしてくすくすと笑い始める。
 だが、ルイズにそれを気にしている余裕はなかった。今日は学年最初の授業ということで、大抵の生徒が使い魔を連れている。そんな場所に少年を放りこんだらどうなるか。
 早くもふらふらと引き寄せられそうになった彼の襟元を、がっしと掴んで引きずりつつ、ルイズは席の一つへ向かった。本格的に、首輪と縄が必要かもしれない。
 席の近くの床に少年を座らせる。机があって窮屈なのは気にならないらしいが、周囲の使い魔を見てそわそわしている。
 ふと、少年が使い魔のうちの一体―浮かんだ巨大な目の玉を指さして言った。
「アンノーン?」
「違うわ。バグベアーよ」
「チョロネコ?」
「あれは単なる猫じゃない。チョロってなによ」
「アーボ?」
「あれは大ヘビ……一体、その名前は何処から出てきてるのよ」
 ルイズが呆れたように言ったところで、教室の扉が開いて一人の魔法使いが入ってきた。
 ふくよかな頬が優しげな雰囲気を漂わせている、中年の女性だ。紫色のローブに、帽子を被っている。
 彼女は教室を見回すと、満足そうに微笑んで言った。
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
 ルイズは俯いた。
「おや? ミス・ヴァリエール、使い魔はどうしました?」
 床に座った少年は、教壇からはちょうど死角になっていて、彼女からは見えないらしい。
 シュヴルーズが問いかけると、ルイズの近くに座っていた少年が声を上げた。
「ゼロのルイズ! 召喚出来ずにその辺の平民連れてきたからって、恥ずかしがって隠すなよ!」
 その言葉に、教室中がどっと笑いに包まれた。
 ルイズは椅子を蹴って立ち上がった。長い髪を揺らし、可愛らしく澄んだ声で怒鳴る。
「違うわ。ちゃんと召喚したもの! こいつが来ちゃっただけよ!」
「嘘つくな! 『サモン・サーヴァント』に失敗したんだろう?」
 ゲラゲラと教室中が笑う。
「ミセス・シュヴルーズ! 侮辱されました! 『かぜっぴき』のマリコルヌが私を侮辱したわ!」
「かぜっぴきだと? 俺は『風上』のマリコルヌだ! 風邪なんか引いてないぞ!」
 同じく椅子を蹴って立ち上がったマリコルヌに向けて、ルイズが追撃を放つ。
「あんたのガラガラ声は、まるで風邪でも引いてるみたいなのよ!」
 次の瞬間、立ち上がった二人は揃って糸の切れた人形のようにすとんと席へ落ちた。
「ミス・ヴァリエール。ミスタ・マリコルヌ。みっともない口論はおやめなさい」
 席に座ったルイズは、先ほどの剣幕が嘘のようにしゅんとしてうなだれている。
「お友達をゼロだのかぜっぴきだのと呼んではいけません。わかりましたか?」
「ミセス・シュヴルーズ。僕の『かぜっぴき』は中傷ですが、ルイズの『ゼロ』は事実です」
 教室にくすくす笑いが広がった。
 シュヴルーズは厳しい顔をすると、ぐるりと教室を見回し一つ杖を振った。するとどこから現れたものか、笑っていた生徒の口元に赤土の粘度が貼り付いた。
「あなたたちは、その格好で授業を受けなさい」
 くすくす笑いがおさまった。
「それでは、授業を始めますよ」

55:ゼロの使い魔BW 5/6
12/07/09 17:20:27.16 AjUtxxZk
 少年は授業にはあまり興味がなかった。彼の注意はもっぱら他の使い魔に向けられていたが、属性の話が出た時は少しだけ耳をすませた。
 現在は失われた『虚無』の魔法を含めて、魔法の属性は五種類あるらしい。彼の感覚からすると、五つの属性―タイプというのは、酷く少なく思えた。
 もっとこう『はがね』だとか『エスパー』だとか『あく』だとかがあって良い気がする。もっとも、単に彼の感覚の方が細分化されている、というだけのことかもしれないが。
 そんなことを考えたり、周囲の使い魔を観察していたりすると―。
「それでは、この『錬金』を誰かにやってもらいましょう。そうですね……ミス・ヴァリエール」
 不意に指名されたルイズは、びくっと肩を跳ねさせると、シュヴルーズに問い返した。
「えっと、私……ですか?」
「そうです。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」
 そうやって教壇を指し示されても、ルイズは動かない。痺れを切らしたシュヴルーズが更に促そうとしたところで、キュルケが困った声で言った。
「先生」
「なんです?」
「やめといた方が良いと思いますけど……」
「どうしてですか?」
「危険です」
 キュルケが言い切った。ほとんどの生徒もそれに頷く。
「危険? 一体、なにがですか」
「先生は、ルイズを教えるのは初めてですよね?」
「ええ。ですが、彼女が努力家であるという事は聞いています。さぁ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。失敗を恐れていては、なにもできませんよ?」
「ルイズ。やめて」
 キュルケが蒼白な顔で言う。しかし、ルイズは立ち上がった。
「やります」
 言って、若干硬い動きで教壇へと向かう。通路に乗り出すようにして、少年はその背中を見送った。
 教壇に上ったルイズに、シュヴルーズが隣に立って微笑みかけた。
「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を強く心に思い浮かべるのです」
 ルイズはこくりと可愛らしく頷く。そして緊張した面持ちで小石を睨みつけると、神経を集中した。
 同時に、少年は周囲の生徒たちが、彼と同じように机の影に隠れるのに気付いた。なんでだろうと思う間もなく、短いルーンと共に、ルイズが杖を振り下ろす。
 瞬間、小石は机もろとも爆発した。
 爆風をもろに受けて、ルイズとシュヴルーズは黒板に叩きつけられた。悲鳴が上がる。
 驚いた使い魔たちが暴れ始めた。
 眠りを妨げられたキュルケのサラマンダーが火を吹き、尻尾をあぶられたマンティコアが窓を突き破って外へ逃げ、その穴から巨大な蛇が顔を出して誰かのカラスを飲みこんだ。
 教室が阿鼻叫喚の大騒ぎになる。髪を乱したキュルケが、ルイズを指して叫んだ。
「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」
「もう! ヴァリエールは退学にしてくれよ!」
「ラッキーが! 俺のラッキーがヘビに食われた!」
 黒板の前にシュヴルーズが倒れている。時々痙攣しているので、死んではいないようだ。
 煤で真っ黒になったルイズが起き上がった。服装は悲惨極まりない。上も下もところどころ破れていて、隙間から下着が覗いている。
 だが、ルイズは自身の惨状も教室の阿鼻叫喚も気にしない様子で、淡々とした声で言った。
「ちょっと失敗したみたいね」
 当然、他の生徒から猛然と反撃を喰らう。
「ちょっとじゃないだろ! ゼロのルイズ!」
「いつだって成功の確率、ほとんどゼロじゃないか!」
 爆風で吹き飛ばされた帽子を拾いつつ、少年は一人、すごい『だいばくはつ』だったなと頷いていた。

56:ゼロの使い魔BW 6/6
12/07/09 17:25:03.37 AjUtxxZk
「おふっ……ミス・ロ……ング、ビル……やめて、やめ……お、おち、る……」 
 ルイズが教壇を吹き飛ばし、それの罰として掃除を命じられている頃。
 この魔法学院の学園長であるオールド・オスマンは、秘書にいつもよりも酷いセクハラ行為
 ―尻を両手でじっくり三十秒ほど捏ねまわすように揉んだ―に及び、いつもよりも苛烈な報復を受けていた。
 首を絞められ、今にも気を失いそうなオールド・オスマンに対し、ミス・ロングビルは無表情でチョークスリーパーをかけ続けている。
 そんなちょっとした命の危険は、突然の闖入者によって破られた。
「オールド・オスマン!」
 荒っぽいノックに続いて、髪の薄い中年教師―コルベールが部屋に入ってくる。
 その時には既に、オールド・オスマンもロングビルも自分の席へと戻っていた。早業である。もっとも、オスマン氏は酸欠気味で、頭をふらふらと揺らしていたが。
「なん、じゃね?」
「たた、大変です! ここ、これを見てください!」
 ようやく脳に酸素が戻ってきたらしきオスマン氏は、コルベールの焦りに鼻を鳴らした。
「大変なことなどあるものか。全ては些事じゃ。……ふむ、これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。こんな古臭い文献など漁りおって。
そんなものを持ちだしている暇があったら、たるんだ貴族たちから学費を上手く徴収する術でも考えたまえ。ミスタ……なんじゃっけ?」
「コルベールです! お忘れですか!」
「おうおう、そんな名前じゃったな。君はどうも早口でいかん。……で、この書物がどうしたのかね?」
「これも見てください!」
 コルベールが取りだしたのは、少年の右手にあったルーンのスケッチであった。
 それを見た瞬間、オールド・オスマンの表情が一気に引き締まり、目が鋭い光を放つ。
「ミス・ロングビル。席を外しなさい」
 ロングビルが席を立ち、部屋を出ていく。それを見届けると、オスマン氏は口を開いた。
「詳しく説明するんじゃ。ミスタ・コルベール」


 ルイズが滅茶苦茶にした教室の掃除が終わったのは、昼休みの前だった。
 罰として魔法を使うことが禁じられていたため、時間がかかったのである。といってもルイズはほとんど魔法が使えないから、余り変わらなかったが。
 ミセス・シュヴルーズは二時間後に目を覚ましたが、その日一日錬金の授業を行わなかった。どうやらトラウマになってしまったらしい。
 片づけを終えたルイズと少年は、食堂に向かった。昼食を取るためである。
 道すがら、少年は先ほどの光景を思い返していた。何故か、『わるあがき』という言葉が浮かんで消える。
 次にちょっと間抜けな顔をした大きな魚が出てきて、最後に巨大な龍が脳裏をよぎった。
 その余りの脈絡のなさに、自然と苦笑が漏れる。それを見とがめたルイズが、少年を睨みつけた。
「……あんたも」
「?」
「あんたもわたしを馬鹿にしてるんでしょ!? 貴族だなんだと散々言っておいて、その実はなにも出来ない、『ゼロ』であるわたしを!」
 そんな叫びは、少年のきょとんとした表情によって迎えられた。作ったものではない。心の底から、なにを言われているか分からない、と思っている顔だ。
 それを見た瞬間、毒気も怒りも、全て雲散霧消してしまった。
 沈黙したルイズを見て、少年はしばらく考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「……使い手と『わざ』には相性がある」
「ふえ?」
「どれだけ強い力を持っていても、相性の悪い『わざ』は使えない。今のゴシュジンサマは、相性の良い『わざ』がない状態なんじゃないかと思う。
 だから、『わるあがき』しかできない。……けど、それでもあれだけの力があるんだから、適正のある『わざ』ならすごい威力になるんじゃないかな」
 突然饒舌になった使い魔に、ルイズはしばらくぽかんとしていたが、それが彼の不器用な慰めだと気づくと、くすりと笑った。
 それに、こいつの考え方は面白い。これまで失敗してきた『わざ』―魔法を使えるように努力するのではなく、相性の良い魔法を探す。
 今までも色々な魔法を試してはきたが、もっと色々と、それこそ普通は思いもしないようなものまでやってみるのも悪くないかもしれない。
 ただ、今は―。
「……『わるあがき』ってなによ」
「えっ? ええと、うんと……なんなんだろう」
「ご主人様にそういうこと言う使い魔は、お昼ご飯抜きにしちゃうわよ?」
 慌てる少年にルイズはくすくすと笑うと、先ほどより明らかに軽い足取りで、食堂へと向かった。

57:ゼロの使い魔BW
12/07/09 17:27:57.75 AjUtxxZk
これにて投下終了です

ご意見批判その他ありましたら言ってくだされば幸いです

58:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 18:37:31.65 V6pFSvsm

ポケモン系は序盤でエターなる人多いから頑張って欲しい

59:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 18:55:23.79 LZWGOci1
おつ
ポケモンといえばあのミイ召喚のやつは結局どういう展開する予定でああなってたのだろう

60:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 19:08:51.87 ZPhosyLO
BWの人おつ
そういやギャラドスの人も序盤でエタったな

61:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 19:18:12.73 cFsnjH78
というか、基本的に動物やら道具系を召喚したのが途中で止まってる事多いような?

62:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 20:18:59.93 quL8IPYJ
冷静に考えよう
途中で止まらないもののほうが珍しい

63:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 20:21:49.67 Q1QMJdij
>>61
しゃべれないから序盤はまだしも進むほど原作と同じ手法が通じなくなっていく。
才人がいない分をルイズひとりで台詞回しと展開考えなくちゃならんから、負担は倍増だろうて。

64:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 20:24:34.64 dM64xHLS
てか他と違ってここの場合道具召喚ってシステム上有りえないからなぁ
使い魔以外での召喚パターンが使い魔召喚ではネーヨみたいな

65:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 20:35:26.16 cFsnjH78
>>63
だよな
動物や道具は基本ルイズに使われるわけだから
ルイズが自分で判断して動かないと話が進まないし

…そうなると下手すると事態が本編より悪化する可能性あるなw

66:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 21:14:14.01 Zr8g0MMU
意地になってゴーレムに無意味な特攻かます、アルビオン潜入もほぼ考え無しの行き当たりばったり、と初期は感情任せで行動だからな。
フォローしてくれる相手や、ツキが良くなければ最悪の結末なんてすぐだ。

67:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 21:22:30.67 z/LqrWWB
徹底してルイズのフォローしている使い魔か・・・
召喚された連中ではだれがいたっけか

68:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 22:14:11.17 Q1QMJdij
ヤンはなんやかんや言ってルイズの面倒見てたな。娘みたいだとも言ってたし

69:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 22:27:51.80 +iD9gwHy
強大な力持った魔王でありながらもヤル気まんまんでルイズに尽力しようとしてんのに、
ルイズ本人から勘弁してくれ!って泣きを入れられるご立派な使い魔様がいてだな……

70:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 22:29:49.43 vh6kpW4g
オーズの伊達さんとか
5103でもいいけど

71:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 22:35:07.72 QRAobxTI
人修羅召喚はかなりルイズの面倒見てた、エタってるけど

あと >>69
アレに尽くされて、嬉しいか?自分は嫌だwww

72:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 22:35:56.46 ytUE383W
野獣先輩を召喚したらいいのにな(他人任せ)

73:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 23:10:46.91 Q1QMJdij
>>69
今さらだがエレオノールかカトレアが召喚してたら別なおもしろさが生まれてたかもしれない

74:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 23:19:23.02 qUBgSQUc
メイドガイコガラシさんなら無問題かと

75:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/09 23:40:22.23 0wYXq2TB
こんばんは、投下ついでに45分くらいから前スレのほうより埋めようかと思います。

前スレが埋まり次第こっちのスレへ移行します。

76:ゼロのドリフターズ-11
12/07/09 23:48:04.29 0wYXq2TB
 しかし地下水の切先は、メンヌヴィルに吸い込まれることなく際どくはずれる軌道を描いた。
普段の練習とは状況が違い過ぎる。地下水を投げることなどないし、身体スペックも違う。
さらに飛び退いている状態で投げることなどない。投擲用の物ですらない。
そんな状態で命中させるほどの幸運に恵まれることはなかった。

 されどそんなことは地下水もデルフリンガーもわかっていた。
当たろうが当たるまいが関係ない。"シャルロットに危害が及ばない距離"ならば良いのだ。

 地下水がメンヌヴィルの直上を通過する刹那の間に、電撃が開放される。
ナイフから全方位無差別に、再度『雷撃』がメンヌヴィルを襲った。
デルフリンガーは魔力を帯びた雷撃を吸収した際に、エネルギーそのものを一時的に蓄えていた。

 シャルロットは慣性のままに地面に削られながら転がる。
無意識に受け身をとりながらも、破損した馬車にしたたかに体を打ち付けた。
壊れて尖った破片などが、取り返しのつかない急所に刺さらなかった点においては幸運に恵まれた。
投げた時の勢いの所為で左肩もはずれていた。両脚も内出血していて全身打撲、身体各所の骨も異常だらけだろう。
衝撃を堪えて失神することだけは何とか避けたシャルロットは・・・・・・薄っすらと目を開ける。

 掛けていた眼鏡は転がっている途中で落ちていたが、元々視力には問題ない。
見ればメンヌヴィルの炎蛇は―先刻まで自分がいた場所の―地面に衝突した。
二度目の『雷撃』がなければ、間違いなくこちらを追って確殺してきたに違いない。

 『白炎蛇』はその生命を散らすかのように、一瞬で燃え上がると爆音を残す。
震えた空間が静けさを取り戻す頃には、シャルロットは朦朧とした意識をしっかりと繋ぎ止めていた。
沸々と湧いて出てくる―麻痺していた―痛みに悶えながら・・・・・・悲鳴を上げる肉体に鞭打つ。

 起き上がることすらおぼつかず、剣を鞘ごとはずして杖代わりに・・・・・・。
薄い酸素を体中に浸透させるように取り込みながら、必死に立ち上がった。
己の肉体を引きずるように歩きながら、今度こそ全てが終わったことを理解する。
それでも今また同じ轍を踏むことだけはないよう、注意を払い続けた。
終わってみれば―ほんの一分にも満たぬ間の激闘。


 シャルロットは真っ先に、メンヌヴィルの傍に落ちていた短剣の元へ向かう。
支えにしていた剣が手から離れて音を立てて倒れ、シャルロットはその場でへたれ込むと、ゆっくりと短剣を拾い上げた。
肉体的にも精神的にも、意識的にも無意識的にも限界を感じていた。
大事な大事な短剣を胸に抱くと、いつの間にか幾筋もの滴が流れていた。
(ありがとう・・・・・・)
(気にするな相棒)
(ああ、あのままじゃ俺達も砕けるか溶けるかしてたかも知れないし)

 シャルロットが持つ武器には、物質を安定した状態に置く『固定化』と硬度を増加させる『硬化』。
二つの魔法が全てに掛けられているが、それすらも問題なく溶かし尽くす炎であった。
メンヌヴィルが放ったのが『白炎蛇』ではなく、最初の『極炎』であったなら、地下水も溶解していたかも知れない。
仮にそうでも二人はなんの躊躇いもなく、その身を呈して助けてくれたろうことは心でわかっている。

77:ゼロのドリフターズ-11
12/07/09 23:48:36.07 0wYXq2TB
「うぅっ・・・・・・くっ・・・・・・」
堰を切ったように嗚咽が漏れて、涙が止まらない。こんな姿は彼らにすら、今まで誰にも見せたことはない。
泣きたい時は抑えていたし、耐えられない時はいつだって独りきりで泣いていた。
こんなにも感情がコントロール出来ないのは、何年振りだろうか。
(おうおう、珍しいこともあるもんだね相棒)
(確かにシャルロットのこんな姿は初めてだな)

 死の際のメンヌヴィルは恐ろしかった―。命を晒したことが怖かった―。
泣くのが止まりそうなほどに体中が痛い―。いつもどこかで偉そうにしていて、ここぞって時に失敗した―。
家族と友達を悲しませることになりかねなかった―。頼れる二人にどうしようもなく助けられた―。
いや・・・・・・いつだって助けられているのだ。

(相棒もいつもこんなんなら可愛いもんだがね)
(確かにこれが普段の姿であれば男にもモテるだろうにな)
(っ―・・・・・・う、うるさい)
泣きながら心の中で言葉を交わす。今は二人の軽口がどうにもありがたかった。
他愛ないやり取りが凄く嬉しく感じてしまう。こんな会話がまた出来ることが楽しい。

 脳内物質の所為か、精神の安らぎのおかげか、痛みも心なしか和らいでいく。
(・・・・・・本当にありがとう、二人とも)
(むず痒いや)
(まっ主が死ねば―またデルフと二人、つまらん人生になっちまうしな)
(うるせいやい地下水)


 ―ひとしきり泣いた後、シャルロットは座ったまま念じて言う。
(・・・・・・秘密だから)
二人から返事はなかったが、心は伝わってきた。しばらくはこのことをネタにもされるだろう。
それもまた構わない。今更二人に隠すことなどないし、丁度いい戒めにもなる。

 またもぶり返し始めた痛みに顔を歪めながら、シャルロットはまずはずれた肩を強引に嵌め直す。
無理に戻した肩の損傷部も含めて、体を癒す水魔法『ヒーリング』を唱えた。
シャルロットの大出力魔法によって、肉体が徐々に回復していき、さしあたって傷に関しての問題はなくなった。
とはいえ全快とは到底言い難いし無理も出来ない。全身を覆う疲労までは癒しようがない。
泣き腫らした顔を拭いながら整えると、ゆっくりと剣を掴んで立ち上がる。

 シャルロットは治癒した体を慣らすように歩を進めていく。
足が止まると、眼下にメンヌヴィルを見つめた。もはや何の疑いもなく絶命している。
焼け焦げた人肉の匂いが鼻孔の奥を突っつき、思わず苦虫を噛み潰したような顔になる。
生理的嫌悪感を促す匂いと、死体に触れる嫌悪感を我慢しつつ、うつ伏せに倒れている"敵だったモノ"を仰向けにひっくり返した。

 最後は・・・・・・地下水とデルフリンガーが決めてくれた―それでも紛れもなく己が殺した人間の死に顔に相違ない。
その顔面色は心底嬉しそうでいて、凶悪さをも内包した表情。苦悶も後悔もない、最後まで"化物で在り続けた人間"の姿。

78:ゼロのドリフターズ-11
12/07/09 23:49:25.94 0wYXq2TB
 思ったよりも感慨はなかった。こんなにもあっさりしたものなのかと思うほど。
(まだ・・・・・・興奮しているのかな)
戦場の空気と高揚。死線を間近に味わい潜り抜けた。
感情が入り交じって、わけがわからない状態なのだろう。

 "死"と"死に様"を双眸と胸裏の奥深くにまで刻み付けて、シャルロットは前へと進む。
考えるのは・・・・・・また後でいい。
(―どうせ考えずにはいられなくなる)

 近くの土を掘り返して、メンヌヴィルが遺した紙を手に取る。
炎雷が暴れ回った戦場で、こうして問題なく残っていたのは奇跡だったかも知れない。
書かれているいくつかの名前に覚えはない。流石にアルビオン貴族の名前まで記憶しているシャルロットではなかった。
だがここから芋蔓式に判明することだろう。見せしめにすれば反抗する気も削げるやも知れない。

 皮紙をポケットにしまうと、シャルロットは一帯を眺める。
酷すぎる惨状だ。一体全体どんな天災が通ればこんな跡になるのかと思わせるような街道。
メンヌヴィルと共に、我ながらよくもまぁここまで滅茶苦茶に出来たものと感じる。

 未だに燃え続ける炎、上空へ立ち昇る黒煙、ドロドロに溶解する地面。
大炎と雷撃で原型を留めず、奇妙なモニュメントと化した土壁。溶かされ、砕かれ、無数に穿たれた穴という穴。
激闘の凄まじさはこれ以上ないほどに、この場が物語っている。

(・・・・・・このままじゃまずいかな)
そう考えるものの、結局手を付けずに放置を決め込むことにした。
街道が酷いければ酷いほどに、後の印象操作もし易くなるだろうと。
復旧の労力を増やしてしまうことになるだろうが致し方ない。

「ふゥ・・・・・・」
息を吐いてシャルロットは眼鏡の落ちている所まで歩いて行き、拾って状態を確認するとクイッと掛け直す。

 一段落した丁度その時、キッドが一人で馬に乗って戻って来たのだった―。

79:ゼロのドリフターズ ◆IxJB3NtNzY
12/07/09 23:51:17.50 0wYXq2TB
タイトル忘れてました。連投規制かかっても困るので、投下終了後に事後報告となりまして申し訳ないです。
前スレからの続きです。辿るのが面倒だったり、dat落ちした場合は、お手数ですがWikiの方でお願いします。
それではまた。

80:ゼロの円卓の騎士団
12/07/10 00:32:38.01 bGTXOM/o
ドリフターズの方乙です。
さて誰もいなければこのまますぐに投下しようかと思います。

後今更ですが、円卓の騎士の面々の性格は作者の勝手な妄想で書いています。
一応円卓の騎士のSFC版等はやっているのでそこらへんを参考にはしてますが
想像と違うと感じてもどうかご容赦を。

81:ゼロの円卓の騎士団
12/07/10 00:33:38.30 bGTXOM/o
では行きます。


 ルイズは焦っていた。

(ちょ、ちょっと待ってよ! 私のことはどうしたのよ!?)

 当事者としてオスマンの部屋に連れてこられたものの、今の今まで何も発言していない。それどころかルイズは蚊帳の外で、気がつけば話し合いは終わりそうになっている。
冗談ではなかった。
ルイズは使い魔の儀式を何よりも心待ちにしていたのだ。
なんとしてでも儀式を成功させ、自分につけられた不名誉な仇名を返上する。そのつもりでいたのに

(こんな、こんなわけの分からない連中を呼んじゃって、その上無視までされて……)

 このままじゃ使い魔も手に入れられず、下手すれば

(落第……!?)
不吉な言葉が脳裏をよぎった。
とたん、やり場の無い怒りがルイズの胸中に満ちていく。そして気がつけば、ルイズは叫んでいた。
 突然のことに、オスマンとコルベールの対応が遅れる。しかし、まずいと思ったときには手遅れだった。

「あ、あんたたちは私が使い魔として呼び出したのよ! それなのに私を無視する気!? 
本当にあるのかどうか知らないけど、いくらそのスダ・ドアカワールドっていうので偉くたってハルケギニアじゃなんの意味も無いじゃない!
それなのに私を無視して、勝手に帰る話まで進めるなんて……恥を知りなさいよ!」

一息に言い切る。未だに校庭で感じた重圧は後を引いていたが、それでも言うあたり、相当に追い詰められていたのだろう。
もっとも、

「こ、これミスヴァリエール! なんちゅうことを!!」
「仮にも相手は王族ですぞ! 貴方も貴族ならそれなりの敬意を払いなさい!」

 彼らの力を察していた二人からすれば、たまったものではない。慌ててルイズをとめる二人。
しかし二人の制止に一瞬は怯んだものの、それでもルイズは止まらない。

「し、知りませんそんなの! それにさっきもいったけど、ここはハルケギニアなんだから! メイジでもないのに王様だなんて言われたって……」
「……そこまでにしてもらおう」


82:ゼロの円卓の騎士団
12/07/10 00:34:16.84 bGTXOM/o
 静かな、しかしその裏には激しい怒りを感じさせる声がルイズをさえぎる。
 声を発したのは白金卿。金色の鎧を纏う、僧正ガンタンクRと共に古くから円卓に仕える騎士である。
王への忠誠もガンタンクR同様他の騎士以上に持ち合わせており、その彼の怒りの激しさを感じて勝気なルイズの口も閉じてしまう。

「これ以上我が王を愚弄するのは我慢ならん。例え異世界にきたとて、キング様は我らが王だ。しかも聞けば、此度の召喚は貴方が行ったものという。
 その上でこうまで言うとは、そちらの方こそ恥を知るがよい」

 ずい、と一歩前に出る白金卿。

「う……」

 同時にルイズが後ずさる。顔にははっきりと怯えの色が表れていた。

「悪意はないようだが、しかしガンタンク殿が言った通り、我らが臣民から王を引き離したのも事実。その責は、重いといわざるを得ぬ。
……女子供に上げる手は無い。だが、もしまだ愚弄の言葉を続けるというのなら、ここから出ていってもらおう」

更に一歩。ルイズはまた後ずさる……が、そこで

「う……うわあああああああああああああああああああん!!」
「!!??」

 ……オスマンとコルベール、いや、円卓の騎士までもが目をむいた。
烈火のごとく、ルイズが泣き出したのである。

「だ、だっでぇ……だっで、こごでじっばいしたら、あだ、あだじ、らくだ……うわああああああああああん!!
 おねえざまも、おどうざまも、あだじを見放しちゃ、う、うぐ、ぐす、うう……!」
「……」
 
 歴戦の円卓の騎士たちも、この展開は読めなかったのかしばしの間呆然としていた。だが、気を取り直すや否や、急いで全員が集まる。


83:ゼロの円卓の騎士団
12/07/10 00:34:52.62 bGTXOM/o
「ど、どうすんだよ白金卿のオッサン! あの子泣いちまったぞ!?」
「い、いや、しかしあそこまで言われて黙っている訳には……」
「それはそうかもしれないが、しかしやり方というものもあったのではないか? 仮にも相手は子供だぞ!」
「ちくしょう、悪気がねえ分めんどくせえ相手だな……悪党だったらさっさとぶちのめすのによ」
「でもどうするんだ。使い魔なんて流石に嫌だぞ、俺も」
「僕だって嫌だよ。でもなんとかしないとこの場はどうにもなんないっぽいし……」
「ふむ……」

 キングガンダムがあごに手をやる。
 と、そこで何かに気づいたように顔を上げ、そしてひとつ頷いた。その後で改めて
「ルイズ……といったかな、君は」と声をかける。

「ひっぐ、うぐ、あ、あによお……」
「確かに私はこの世界に置いては何の地位も持たぬ身だ。しかし、だからといってこの身がブリティスの王であることに変わりは無い。
君も悪気あって我らを呼んだわけではないことは分かっている。だが、民に対して責を持つ身の故、なんとしてもスダ・ドアカワールドに帰らねばならないのだ」
「……うう……」
「そのために君の儀式を台無しにしてしまったのはすまないと思っている。
だが、それとこれとは別の問題で、私たちにはスダ・ドアカワールドにおいてやらなければならない責務がある。申し訳ないが、な」

 真摯に応えるキングガンダムに、今度は別の意味で言葉をなくしてしまうルイズ。
彼女自身も貴族であり、そしてその身分に誇りを持っているため、尚更彼の言葉は効いた。


84:ゼロの円卓の騎士団
12/07/10 00:35:31.80 bGTXOM/o
「……ぐす、わ、分かったわよ……ふんだ。あぎらめればいいでじょ……どうぜ、わだじなんがぜろ……」
「だが、使い魔はともかく、騎士として君を助ける分にはやぶさかではない」
「……へ?」
「ちょうど志願する者もいたことだしな。……レッドウォーリア、前へ」
「ハッ!」

 返事と共に、流麗な動きで一人が前に出る。それは全身を赤く染めた騎士だった。
 彼は滑らかな動きでルイズの前まで歩き……薔薇を差し出した。

「……へ?」
「よろしく、小さなお嬢さん」
「あ、え、うん、よろしく……じゃないわよ! 何これどういうこと!?」

 我に返ったルイズがキングガンダムに詰め寄る。混乱しているせいか、既に声から涙は抜けていた。
 しかしキングガンダムは落ち着いたもので、冷静に解説する。

「スダ・ドアカワールドに戻るまでに幾分かの時間もあるだろう。その間、君の補佐を彼に勤めてもらう。
使い魔の代わり、というのでもないが、必ず君の助けとなるはずだ」
「な……ちょ……」

 逆にいきなりな話にルイズの方は益々混乱する。一方、ルイズ以外にも混乱して……というより興奮しているのがいた。

「お、おい! いいのかよテメェ!?」

 レッドウォーリアに詰め寄るのは重厚な鎧を纏った騎士、剛騎士ヘヴィガンダムである。

「使い魔だぞ!? いくらテメェが女に弱いからってそんなんでいいのか!?」
「……ほう、心配してくれているのか? これは意外だったな。君は私のことを嫌っていると思っていたのだが」
「な! バ、バカいうんじゃねえ! これはテメェが女にふ抜けると張り合いがなくなるからで……」
「ふむ、そうか。まあ私が種族問わず女性を好んでいるというのは事実だがね」

 そこでちらりと、ルイズを見るレッドウォーリア。続けて声を潜める。

「……実を言えば、可憐さ以外にも多少興味が沸いたのさ。いくら無礼とはいえ、キング様にあそこまで言えるとはなかなかに芯が強い……そう思わないか?」
「む!? ……そ、そういわれてみりゃあ確かに……そんな奴、ここ最近いやし無かったっけか……」
「だろう? ……まあ、白金卿と同じくああ言われたときは多少腹も立ったが、それを差し引いても見守る価値はあるというものさ」
「ぬぬぬ……だからってよ……」

 うんうんうなるヘヴィガンダム。そこにいたずらっぽく目を輝かせたのは勇騎士プラスだ。「へー……」と二人を眺めた後、


85:ゼロの円卓の騎士団
12/07/10 00:36:18.52 bGTXOM/o
「おーい、キング様! なんかヘヴィがレッドを心配してるぞー! この際だからこいつも行かせた方がいいんじゃねー?」
「んな!?」
「何!?」
「え!?」

 ヘヴィ、レッドウォーリア、ルイズが三者三様に驚く。
しかしキングガンダムもふむ、とプラスの言に頷き、彼のように悪戯っぽく笑ってから

「そうだな、心配ならば共に行くと良い、ヘヴィ。君とレッドウォーリアが揃えば、怖いものなど無いだろう」
「ちょ、待ってください! 俺は一言もこんな小娘についてく気なんて」
「誰が小娘よ、誰が!?」
「テメェ以外に誰がいる! というか話にまざんな!」
「キング様……流石にこのような仕打ちには文句の一言もあります。このような可憐なお嬢さんに、野卑なヘヴィなど合うわけが」
「んだとテメー!? つかなんだよ、さっきから突っかかりやがって!! 俺を馬鹿にしてんのか!?」
「馬鹿にも何も、事実だろう。今更何を言うのだか……」

 そこでついにブチ、という音がした。

「あったまきた! 心底あったまきた!! 今度という今度は許さん!! ここで決着つけたらあああああああああああ!!」
「フ……できるものならな!」
「ああもう、なによなんなのよなにがどうしたってのよこれはあああああああああああああ!!??」

 騒ぎが益々大きくなる。
アックスブレードが盛大な風切音を響かせ、薔薇吹雪が舞って部屋を赤く染め、挙句ルイズの失敗魔法が火を噴いた。
ケラケラとその惨状を楽しんでいるものもいれば、やれやれと首を振るもの、ついていけんとさっさと部屋を出るもの、様々であった。

……そして結局。

際限なく大きくなる騒ぎに、堪忍袋の緒が切れたガンタンクRがメガブラストをぶちかまして収拾をつけたのだった。


86:ゼロの円卓の騎士団
12/07/10 00:36:51.12 bGTXOM/o
夜遅く。
キングガンダムはあてがわれた部屋で一人、月を見ていた。
レッドウォーリアとヘヴィを除いた円卓の騎士たちには、それぞれ命を与えてある。
明日からでも彼らはハルケギニアの方々へ赴き、各々に与えた使命を果たすだろう。

(早く帰る手段が見つかればよいが……)

 心中でつぶやくキングガンダム。やはり国のことは心配ではある。
彼の治世は非常に安定しており、国もかつての豊かさを取り戻している。
基盤もしっかりと作ってあるし、それに賢者アントニオを初めとした優秀な人材も国には残っている。
自分たちがいないからといって、すぐにどうなるというものではないだろうが……実を言えば、彼には懸念している事柄があった。
 腕を宙にかざす。すると手の甲から色取り取りの光が漏れ出し、一つの形を成した。
 トランプカードのジャックのような紋章……ジャック・イン・ザ・ダイヤの称号である。
この紋章はスダ・ドアカワールドの守護者たる印だ。それが何かを伝えるかのように明滅している……

(この世界に何か、大きな災いがもたらされようとしているのか……)

 明滅している紋章に向かって問いかける。
しかし紋章は黙して応えず、授けた黄金の守護竜もまた、問いかけに応じることは無い。
夜は、更けていった……


87:ゼロの円卓の騎士団
12/07/10 00:38:03.12 bGTXOM/o
以上です。
ちょっと感覚が掴めず、無駄にレス消費してすみませんでした。

88:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/10 00:47:19.68 CG6Exy2J


89:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/10 01:49:03.89 dJjxa3It
乙、超級Gガンとか大好きだからガンダムものはとっつきやすい。
考えてみたら超級Gガンの1話は大隆起を人工的にやったようなもんだな。

90:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/10 03:35:19.68 3y7JMJpH
爆熱か……

91:名無しさん@お腹いっぱい。
12/07/10 16:40:19.45 Sji56UmT
どのシリーズか忘れたけど、地底に潜れるモビルスーツがあったよな。それ使えば風石掘り出して大隆起阻止できるんじゃあ?


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