リリカルなのはクロスSSその122at ANICHARA
リリカルなのはクロスSSその122 - 暇つぶし2ch150: ◆jTyIJlqBpA
12/06/29 02:32:02.38 xLAzFFmW
ザザッ

不意に通信の中にノイズが入った。

『やっぱ―罠―じゃないで―うか?』

立て続けにノイズが走り、フェイトの声が掻き乱される。

「ん?」

「どうした?」

『あれ?聞こえ―悪い―うですが……』

「……通信状態が悪いのか?」

ヴィータがルキノに聞いた。

「いえ、状態は決して悪いわけではないんですが……」

ザザッ

言い掛けている最中、映像に大きなノイズが走った。
ノイズは徐々に増え、画面を大きく乱している。

「おかしいです、通信状態に問題はありませんし普通はこんな状態には……結界反応もありません」

ルキノの不安げな声が聞こえ、はやては胸の中に言い知れぬ焦燥感を感じた。
マイクを握り締め、フェイトへ語り掛ける。

「隊長?フェイト隊長?聞こえます?」

乱れる画面を見つめて一拍置くとフェイトから反応があった。

『えっ?な―ですか?なん――よく―聞き取れな――』

音声の乱れも酷く、フェイトの反応からロングアーチからの声はほとんど届いていないことが伺えた。

「スカリエッティのジャミングか?」

「可能性は否定できないですけど」

淡々とした様子のシグナムになのはが不安げに返した。

「でもこれは……」

「み、見て下さい!ガジェット達の様子が!!」

今まで黙々とキーボードを叩いていたオペレーターのアルトが叫び、全員の視線がモニターに集中する。
乱れた画面の中、赤い光が続々と落下しては消えていく様子が見えた。
ガジェット達が機能停止を引き起こして墜落しているのだ。

それは明らかに異様な状況だった。
その異様な状況とともにただならぬ予感が全員の胸中に芽生える。


151: ◆jTyIJlqBpA
12/06/29 02:34:54.27 xLAzFFmW
『ガジェ―が突―落――』

フェイトからも恐らく報告であろう通信が届く。
しかしノイズに掻き乱されてほとんど聞こえない。

(やっぱり罠やったんか?いや、それにしては何なんやこの違和感は……)

「ティアナとキャロは?」

なのはが毅然とした声で問いかけた。

「墜ちてません。飛行を続けています」

「ということはAMFではないのか」

表情は険しいが、相変わらず冷静な様子でシグナムは呟いた。

そこでシャリオが「あっ!」と上擦った声をあげた。

「部隊長、現地より新たな反応が!」

「なんや?」

「これは……次元震!?」

シャリオの口から飛び出したワードに、にロングアーチがどよめく。

「ウソやろ!?」

なにかがおかしい、その予感が的中した。

「フェイト隊長!!フォワードの子達を連れてすぐにそこから離れて!!」

『な――変――空気が――』

はやてがマイクに向かって叫ぶ。
しかし応答はノイズだらけでもはや言語が聞き取れない

「現地に膨大なエネルギーを観測!更に増幅しています!!」

「フェイト隊長!!」

「フェイトちゃん!!」

「テスタロッサ!!」

必死の呼び掛けも全く通じない。
映像は乱れによりほとんど見えなくなり、砂嵐状態になっている。

152: ◆jTyIJlqBpA
12/06/29 02:36:42.89 xLAzFFmW
『地震―すご――揺れ―――っあ!!――サイ―ン―音――――あっ――落ち―――ああ!――あああ!!―』

激しいノイズの中、フェイトの悲鳴が途切れ途切れに聞こえた。

ぶつっ

それを最後に映像と音声が途切れた。
全員が確信した。これはただ事では無いと。

ザーーーーーーーッ

スピーカーから流れる砂嵐の音だけが静かになった室内に響いている。

「エネルギー反応、消失」

その中、呆然とルキノが呟いた。

「……現地との通信が、完全に遮断されました」


直後、はやてが勢いよく立ち上がり、足にぶつかった椅子が大きな音をたてた。
ロングアーチにいた全員がはやてに注目する。

「反応の消失した地点は!?」

唾の飛ぶ勢いでオペレーターの三人に聞いた。

「××県、三隅郡、羽生蛇村上空です」

「スターズとライトニングの隊長、副隊長は直ちに現地へ!」

「はい!」「了解!」

「シャリオとルキノとアルトは通信の回復を。急いで!!」

「了解しました!」

はやての指令を皮切りになのは、ヴィータ、シグナムは司令室を飛び出して行った。
オペレーターの三人も慌ただしくキーボードを叩き始める。


153: ◆jTyIJlqBpA
12/06/29 02:38:28.23 xLAzFFmW
はやては椅子に座り込み、通信途絶前の状況を思い出した。
途切れる直前の通信の中で断片的に聞こえた単語。
それにフェイトの、悲鳴。

(まさかレリックの暴走?)

だが有り得ない話では無い。現に一級捜索指定の掛かっているロストロギア、レリックはこれまでに幾度となく暴走し、大事故を引き起こしてきた。
……しかし、現地でレリックの反応は消失していたはずだ。
故意に暴走させるにしても、ロストロギアであるレリックの反応を早々に隠せるものでもない。

(いや、可能性はあるにはある……けど、じゃああのノイズは一体……?)

はやてはフェイトとの通信が途絶した、その直前に入ったノイズに引っ掛かりを覚えた。

(それにフェイトちゃんの言うてた言葉……)

スピーカーから断片的に聞こえた地震、揺れ、音、落ちる………
考えれば考えるほど不吉な予感がとめどなく湧き上がる。

「一体なにが起こったんや……」

モニターの映し出している砂嵐を険しい表情で見つめながら、はやては絞り出すように呟いた。





はやて達は知る由も無かった。
フェイト達のいた現地がどういう場所なのかということも、そこでは怪現象が頻繁していたことも、
今さっきまで時空が何度も揺らいでいたことも、
画面の向こうで、けたたましいサイレンが鳴り響いていたことも………

新暦75年/22時34分27秒/ミッドチルダ六課隊舎

地球/日本時間 昭和78年/8月/00時00分00秒/羽生蛇村


絶望の物語が、幕を開けた。

154:名無しさん@お腹いっぱい。
12/06/29 02:45:28.62 Hlo2PTW9
規制を食らったので携帯から

投下は以上となります。


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