20/06/03 17:17:03 CAP_USER.net
→アンボイナガイは特殊なインスリンを毒として使用する
→毒インスリンは即効性があり極めて強力
→毒インスリンの持つ即効性を取り入れたハイブリッドインスリンは人間にも優れた効果を発揮する
アンボイナガイ(イモガイ科)は、狩りで強力な毒を使う「海の殺し屋」として知られています。
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アンボイナガイの分泌する毒の正体は強力なインスリンであり、その毒インスリンに触れた小魚は低血糖のショックを起こして気絶してしまうのです。
そして気絶した小魚は、アンボイナガイによってゆっくりと丸呑みにされます。
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2015年にこの毒インスリンの存在が発見されてから、研究者たちは、この強力な毒インスリンを人間の糖尿病治療に役立てないか考えてきました。
そして今回の研究によって、毒インスリンと人間のインスリンを合成したハイブリッドインスリンが作成され、ついにその目的を達成。この新しいインスリンは、毒のもつ即効性と人間に対する高い親和性を併せ持ち、優れた血糖低下作用を示したとのこと。
しかしハイブリッドといっても、合成の方法は様々です。
研究者たちはどのような方法で毒を薬に変えたのでしょうか?
■インスリンが毒になる仕組み
人間の体の中で働くインスリンは通常、凝集された状態ですい臓に保管されています。
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そして血糖値の上昇を確認すると、凝集体から一つ一つ、インスリンが離れていき、血糖値を下げていきます。
しかしこの凝集状態からの分離プロセスには1時間ほどの時間がかかることが知られており、食後の急速な血糖上昇にしばしば対応できません。
一方、小魚狩りに使われる毒インスリンは、通常のインスリンに比べて非常に小さな構造をしていることが知られており、凝集体を作らず、小魚のエラから侵入すると即座に低血糖を誘発させます。
この強力な即効性のお陰で、インスリンは毒として機能することができるのです。
小魚専用だった毒インスリンを改造してヒトでの効果をもたせる
■小魚専用だった毒インスリンを改造してヒトでの効果をもたせる
ただ残念なことに、アンボイナガイから毒インスリンを抽出しても、直ぐには人間には使えませんでした。
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アンボイナガイの毒インスリンは獲物である小魚に対して効き目を発生させるように特化して作られており、人間に対する効果は限定的だったからです。
そこで研究者は、毒インスリンの効能部位を切り取り、人間のインスリンから凝集能力を奪ったものに結合させた、毒インスリンと人間のインスリンのハイブリッドインスリンを作りました。
このハイブリッドインスリンは、ミニインスリンと名付けられ、ラットを使った実験において、通常の人間のインスリンと同じレベルの血糖低下作用を、より短時間で発揮できたとのこと。
研究チームのChou氏は「ミニインスリンは既存のインスリンに比べて小さいため合成が容易であるだけでなく強力で即効性がある」と述べ、新世代の糖尿病治療薬になると期待をにじませました。
また今回の研究は、思いもよらない生物が、人類の主要な疾患の治療薬を提供してくれることを示しました。
このことは人類が、生物の種の保存の重要性を再考するきっかけになるかもしれません。
今どこかでひっそりと絶滅した生物が、私たちの未来を救う生物だった可能性も十分に考えられるのです。
研究結果はアメリカ、ユタ大学のXiaochun Xiong氏らによってまとめられ、6月1日に学術雑誌「Nature Structural&Molecular Biology」に掲載されました。
A structurally minimized yet fully active insulin based on cone-snail venom insulin principles
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