19/03/01 14:15:20.52 CAP_USER.net
鳥やイルカなど、音声のやり取りを行う動物は多く存在しますが、人間のように即時的で複雑な会話を行う動物は限られています。そんな中、人間にように複雑な会話を行う「歌うマウス」を研究することで、人間の脳が会話をどのように処理しているのかというメカニズムが明かされる可能性が出てきています。
URLリンク(i.gzn.jp)
Motor cortical control of vocal interaction in neotropical singing mice | Science
URLリンク(science.sciencemag.org)
This singing mouse’s brain could reveal keys to snappy conversation | Science | AAAS
URLリンク(www.sciencemag.org)
The Songs of Singing Mice May Help Unlock How the Brain Processes Conversation | Technology Networks
URLリンク(www.technologynetworks.com)
人間の脳は、他の人のスピーチに含まれる情報をエンコードし、それに対し即座に応答します。マーモセットというサルは、話者を順番に交代するスタイルの人間のようなコミュニケーションを取りますが、やり取りは人間よりもゆっくりとした速度です。
しかし、「Alston’s singing mouse」と呼ばれるマウスは速いスピードで複雑な会話が行えるとして、ニューヨーク大学メディカルセンターの研究者がその脳の働きを調査しました。Alston’s singing mouseのオスは敵を攻撃する時やメスのマウスを魅了する時に歌を歌いますが、この行動は他のマウスと大きく異なると論文の筆頭著者であるMichael Long准教授は語っています。一般的なラボのマウスは短く、無秩序な、超音波の音声を発しますが、Alston’s singing mouseは相手が発話者を特定できるような構造的なシグナルを発することができ、その音声はおよそ100の音色から生み出される比較的長いものとなっています。
Alston’s singing mouseの音声がどんなものなのかは、以下のムービーから確認できます。
Male Alston's singing mouse (S. teguina) singing to female in estrus - YouTube
URLリンク(youtu.be)
研究者は、脳が筋収縮をさせようとする時に生まれる電気信号を検知する「筋電図検査」という方法を用いて調査を実施。その結果、Alston’s singing mouseが行う相互的な音声のやり取りは「音声産出」と「音声調整」という2つのパートから成り立っていることが判明しました。研究者によると、音声調整は脳のうち口腔顔面運動皮質(OMC)という部位が担当し、音声産出はそれ以外の部分で行われているとのこと。研究チームがOMCを刺激するとマウスの声帯筋は反応し、また歌っている最中のマウスのOMCを安全な方法で冷却すると、音色の高低やトーンを変えずに歌の速度を落とせることが示されたといいます。
さらに、研究者がOMCを完全に不活性化させる薬をマウスに投与しても、マウスは歌うことが可能でした。つまり、OMCは音声を作っている部位ではないことが示されたわけです。
哺乳類の脳における音声調整のメカニズムを証明したのは、今回の研究が初めて。論文の共著者であるArkarup Banerjee氏は「音声産出と音声調整を分離させることで、歌うマウスの脳は、人間の会話や鳥のデュエット、コオロギのやりとりのように、音声を密にコントロールできるように進化しました」と語っています。
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人間の発話はマウスのやり取りよりもはるかに複雑ですが、研究者は歌うマウスの研究を利用して、最終的にはコミュニケーション障害を抱える人の発話の研究を行えると考えています。脳の傷害や自閉症といった原因でコミュニケーション障害を抱える人は多くいますが、2019年時点では、何がコミュニケーションを可能にするのかというメカニズムがまだ理解されていない状態です。「人間のように速いスピードで会話するAlston’s singing mouseの音声コミュニケーションを研究することで、将来的な病気の治療につながる、脳全般のメカニズムを発見できるプラットフォームを作りだせます」とLong准教授は述べました。
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