18/06/02 22:49:32.94 CAP_USER.net
チュウゴクオオサンショウウオは、体長180センチ、体重64キロにもなる、
世界最大の両生類だ。パンダのようなカリスマ的人気はないが、
健全な生態系を維持するには欠かせない存在だ。
2018年5月に発表された2つの研究結果によると、
チュウゴクオオサンショウウオはこれまで1種しかいないと考えられてきたが、
実際には少なくとも5種は存在することが明らかとなった。
「こんなに多様性があるとは思っていませんでした。
少なくとも5種、多ければ8種存在するかもしれません。これには衝撃を受けました」。
そう語るのは、カナダにある王立オンタリオ博物館生物多様性・保全生物学センターで
爬虫両生類学の上級学芸員を務めるボブ・マーフィー氏だ。2本の論文のうち1本の著者でもある。
これらの種は中国の川や湖にそれぞれ個別の生息域をもっているが、
人間はすでにそのうちの数種を絶滅に追いやりつつあるかもしれない。
チュウゴクオオサンショウウオは、国際自然保護連合(IUCN)によって近絶滅種(critically endangered)に指定されており、密猟などがその要因とされている。
「しかし、もっと大きな問題は、これらの種に対する現状の保護策です。考え方を変える必要があります」と、マーフィー氏。
■遺伝的な多様性が乱れる
チュウゴクオオサンショウウオは野生ではわずかになっているが、実は盛んに養殖され、高級食材として売られている。体重2キロの個体が、市場によっては1500ドルで売られることもあり、スープやシチュー、その他の料理に使われる。(参考記事:「中国でオオサンショウウオは「高級魚」」)
これまで中国政府は、種の保存を目的として一部の養殖サンショウウオを野生に放すよう業者に要請してきた。こうして、過去10年間で7万2000匹以上が野生に放された。
しかし、この保護策には欠点があると専門家は指摘する。養殖場で育ったサンショウウオは、遺伝子の検査がされず、病気の有無についても確認されないまま放される。それらが野生にいる別種のサンショウウオと交配すると、遺伝的なかく乱が起きて悪影響を与える恐れがある。(参考記事:「キューバワニ、野生交雑で絶滅の危機」)
「系統が乱れてしまいます。そうすると成長率が低下したり、弱いサンショウウオが生まれたりして、個体群が失われかねません。それら悪条件がすべて重なれば、絶滅のおそれもあるのです」
今回の発見のきっかけとなった研究は、20年以上前にナショナル ジオグラフィック協会の資金を得て始まった。研究はいったん立ち消えになったが、新しい技術が開発されたおかげで2007年に再開された。以前よりも詳しい遺伝子解析ができる最新ツールによって、チュウゴクオオサンショウウオには少なくとも5種、多ければ8種いるかもしれないことが判明した。(参考記事:「中国でレアなオオサンショウウオ、200歳は言い過ぎ」)
「1992年当時、中国の状況は今とはだいぶ違いました。許可なしには現地へ入ることも困難でした。標本の数も不十分で、遺伝子解析の技術も今と比較するととても原始的なものでした」
■5種がやはり1種になるかも
マーフィー氏は、このまま検査されていないサンショウウオを野生に放し続ければ、サンショウウオの多様性は少しずつ失われ、あと10~20年もすれば1種のみになってしまうだろうと懸念する。(参考記事:「わずか100年でどのように新種が誕生したのか」)
「チュウゴクオオサンショウウオほど体の大きな動物は、生態系の中でも大きな役割を果たしています。これらがいなくなってしまえば、どのような影響が出るのかはわかりません」とマーフィー氏。「かわいくはないかもしれませんが、最大級の保護策が必要です」
URLリンク(natgeo.nikkeibp.co.jp)
関連ソース画像動画
Giant Salamander As Big As a Dog | National Geographic
URLリンク(youtu.be)
ナショナルジオグラフィック日本版サイト
URLリンク(natgeo.nikkeibp.co.jp)