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【12月21日 AFP】
遺伝性の難聴により聴力を失う「運命」にあったマウスに遺伝子編集技術を用いて、
聴力障害を回避させたとする研究論文が20日、発表された。将来的には人の難聴治療への応用も期待される。
英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された論文によると、
米ハーバード大学(Harvard University)のデービッド・リュー(David Liu)氏らの研究チームは、
難聴を引き起こすDNAを持つ生まれたばかりマウスの聴覚細胞に対して、
「CRISPR-Cas9」(クリスパー・キャスナイン)と呼ばれる遺伝子改変技術を用い、
徐々に聴力を失わせる変異遺伝子を「無機能化」させた。
生後4週間の時点では、治療が施されなかったマウスは、交通騒音の音量に相当する80デシベルの音を聞き取れなかった。
一方、治療を施したマウスは、人間の普通の会話音量に相当する65デシベル以下の音を聞き取れた。
さらに生後8週間では、治療しなかったマウスは、通常のマウスならば驚くような突然の大きな音にも反応しなかった。
治療を施したマウスの耳では、治療しなかったマウスに比べて聴覚をつかさどる有毛細胞がずっと健全だった。
有毛細胞は遺伝子TMC1が変異すると機能しなくなる。
「CRISPR-Cas9」の技術では通常、DNAを切断するための「はさみ」となる酵素タンパク質「Cas9」を標的となる細胞に導入するために、
目的遺伝子を組み込んだ不活性化ウイルスをベクターとして使う。
だがリュー氏らのチームは今回、ターゲット以外の遺伝子を傷つける「オフターゲット」リスクを低減するために「Cas9」を直接内耳の細胞に注入した。
この方法だとCas9の活動時間を制限できる効果があるという。
研究に用いられた一部のマウスは、後天性の難聴に見舞われたベートーベンになぞらえられた。
米シアトルにあるアルティウス生物医科学研究所のフョードル・ウルノフ(Fyodor Urnov)氏は今回の研究報告について、
「ベートーベンは自らが作曲した曲を聞くことができなかったが、彼の名にちなんだマウスとCas9の運命的な出会いにより、
遺伝子編集を用いた治療で遺伝子的に生じるはずだった聴覚障害を予防できる日も近いかもしれない」と語った。(c)AFP/Mariëtte Le Roux
AFP
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