20/04/18 07:08:03 CAP_USER.net
・なぜ米国で世界最悪の感染爆発が起きてしまったのか:結城 カオル(経済ジャーナリスト兼編集者)
ニューヨークの惨劇
世界中で感染拡大が進んでいる新型コロナウイルス。当初は中国の問題と捉えられていたが、グローバル化の進展もあり、あっという間に世界中に広がった。その中でも、新型コロナウイルスの直撃を受けているのが米国だ。
3月13日にトランプ政権は国家非常事態を宣言。その後、カリフォルニア州やニューヨーク州などが不必要な外出を禁じる外出制限措置に踏み切ったが、米国の感染者数と死亡者数はイタリアを抜き、世界最悪の状況だ。
既に感染者数は63万人超と、世界全体の感染者数の30%を占める(4月16日時点、ジョンズ・ホプキンズ大学のデータ)。死亡者も2万人8000と最も多く、新型コロナウイルスの猛威にさらされている(中国が公表数字を過少申告している疑惑についてはここでは触れない)。
そんな米国の中で、最も被害が深刻なのがニューヨーク市とその周辺だ。ニューヨーク・タイムズの記事を見ても分かるように、感染者数、死者数ともにニューヨークが断トツに多い。今後、ニューヨークから各地に感染が広がることが懸念される。
中国の追撃を受けているとはいうものの、米国は名目国内総生産(GDP)が世界一の経済大国であり、ニューヨークは世界で最も繁栄している都市だ。しかも、米国には感染症対策で世界最強とささやかれる米疾病対策センター(CDC)があり、そもそもの医療レベルは高い。それなのに、なぜここまで被害が拡大してしまったのか。
人との距離が近いニューヨーカー
まず考えられるのは、ニューヨーク市の人口密度だ。ニューヨーク市は人口800万人を超える巨大都市だが、その広さは、マンハッタン島を中心にした5つの行政区で800平方キロメートル(陸地面積)近くと東京23区より少し広い程度。2010年の国勢調査によれば、人口密度は1平方マイル(2.59平方キロメートル)あたり2万7000人と、シカゴの2倍、ロサンゼルスの3倍に達する。
実際、朝晩の地下鉄は混み合っており、人気のレストランやバーに行けば、隣の客と肘がぶつかるような混み具合だ。家賃は高く、一つの部屋を複数の人間でシェアしている人もかなりいる。感染者数が増加したのはPCR検査を拡大した影響だが、そもそも感染爆発が起きやすい環境にあったのは間違いない。
また、ニューヨーカーのカルチャーや慣習面も感染爆発の要因と考えられる。
基本的にニューヨーカーは日本人ほど手を洗わず、風邪を引いたときにマスクをつけるという習慣はない。また、友人や知人と顔を合わせれば握手とハグでコミュニケーションを取るなど、人との距離感が近い。地下鉄やその辺でピザを食べた後も、指をぺろっとなめるか紙ナプキンで拭いて終わりだ。この記事を見てもらえれば雰囲気が分かると思うが、日本人の感覚からすると、街全体があまり清潔ではない(日本の電車も同じようなものだが)。
加えて、自宅でも土足というカルチャーも感染拡大の土壌になった可能性がある。最新の研究によれば、中国・武漢の病院の集中治療室で働いている医療従事者の靴を調べたところ、サンプルの約半分にコロナウイルスが付着していたという。罹患者を治療する集中治療室と街中ではウイルスの“濃度”が違うのは明らかだが、土足で室内を歩き回れば、感染するリスクは上がる。
新型コロナウイルスは感染から発症までの潜伏期間が5~6日と長く、感染に気づかないまま他人にうつすケースが相次いでいる。今でこそ、間隔を空けてスーパーの列に並ぶ、同じエレベーターに乗らないなど、ソーシャルディスタンスを厳格に守る市民が圧倒的だが、外出制限が出るまではジョギングをしたり、公園で子どもを遊ばせたりするのは日常だった。
これまで述べたように、高い人口密度と人の距離が近いという社会的な要因、そして移動せざるを得ない人々の存在と政権のコロナ軽視が重なって、感染者数の爆発と医療崩壊が起きたと考えていいだろう。
※中略
ニューヨーク州のクオモ知事は13日の会見で、州内における死者数の伸びが鈍化したと述べ、「ピークは過ぎた」という認識を示した。ただ、ワクチンが開発されたわけではなく、油断すればすぐに第二波が押し寄せる。それを防ぐためには、ソーシャルディスタンスを守る、発熱や咳が出た程度では病院に行かないなど、これまでの対策を墨守する必要がある。それが、ニューヨークが身をもって教えてくれた教訓である。
※全文は リンク先へ
2020.4.17(金)JBpress
URLリンク(jbpress.ismedia.jp)