17/10/31 17:39:53.94 CAP_USER.net
マラソンに熱心なノックス・ロビンソン氏は、毎年10足以上の運動靴を履きつぶす。それでも大会に出るとなると、いつも同じのを履くという。米ナイキの「フライニットレーサー」だ。特殊な製法で編み上げられたアッパー(甲の部分)が、シームレスな密着感を実現しており、これを真似できるブランドは多くない。
「発売された時、実に美しいつくりだと思い、すっかり気に入った」。ロビンソン氏は米ニューヨークのマンハッタンで、これからジョギングクラブに参加するという。フライニットレーサーは父親がかつて履いていたスニーカーを思い起こさせるらしく、「写真でしか見たことのない、昔ながらのナイキのシューズという感じだ」とも語った。
アジアで雇用不安を招き始めたナイキの自動化推進
2012年の発売以来、フライニットレーサーは技術革新をもたらしたランニングシューズとみられている。特別な編み機で生産されているため、たいていの運動靴に比べ労働力も材料も少なくてすむ。ナイキは今、この材料を使い、さらなる斬新な取り組みを進めている。それはスポーツ関連やレジャーウェアの生産の在り方を一変させる可能性があるだけでなく、グローバル化の中の重要なトレンドをさらに加速させる可能性がある。
ナイキは2015年、米フィットビットのヘルス・ウエラブル機器や中国レノボのサーバーを受託製造することで知られる米フレックスと手を組んだ。労働集約的とされる運動靴の生産工程に、自動化を取り入れるためだ。
フレックスがメキシコに置く生産拠点は、今やナイキにとって最も重要な工場の一つだ。そこでの生産量が拡大しているだけでなく、レーザー裁断や自動接着など、ナイキが委託生産先に導入している一連の技術革新のマザー工場的存在だからだ。
ナイキにとって自動化推進は、2つのメリットがある。一つは、コスト削減ができて利幅がかなり拡大する点だ(下記の■図表1参照)。もう一つは、ファッション意識の高い移り気な消費者に、新しいデザインの商品をより早く、通常より一段高いプレミアム価格で提供できる点だ。例えば、ナイキの「ローシ」シューズは、通常タイプの価格は75ドル(約8600円)だが、アッパー部分がフライニットだと130ドル(約1万4900円)と2倍近い。
フレックスの最高財務責任者(CFO)を務めるクリス・コリアー氏は今年初め、ナイキとの提携について、「我々は一緒にシューズ業界の近代化を図っている。両社の協力は数十億ドル規模のビジネスをもたらすことができる。その提携効果は数年単位というより、数十年にもわたって大きな実績をもたらす」と話す。
ナイキとフレックスが提携したことの影響はこの2社にとどまらない。ナイキはこの20年、途上国に生産を委託する企業のパイオニア的存在の一社と見られてきた。その中で、児童労働を使うなど労働搾取をしていると批判もされきた。だが、そうした委託先となってきた国々では今、低賃金から脱して高付加価値なものを生産する中進国に成長するチャンスをロボット化、自動化によって奪われるのではないかとの懸念が広まっている。
「どこまで自動化を進めるかが、今後の業界の在り方を決める」
ナイキは、売上高が拡大し続ければ、自動化を進めつつも現在の労働力を維持することは可能だと主張する。だが、同社はシューズの生産のため現在、15カ国で49万3000人以上もの工場労働者を抱えており、最も労働者を多く雇用する多国籍企業の一つだ。シューズ以外のスポーツウエアなどの商品の製造委託先も含めると、ナイキは42カ国で102万人も雇用している。
米カーネギーメロン大学のテッパー・スクール・オブ・ビジネスでオペレーション・マネジメントを教えるスリダル・タユール教授によると、ナイキのどこまで自動化を導入するかという決断が、この産業の今後を大きく左右すると指摘する。
以下ソース
URLリンク(business.nikkeibp.co.jp)