09/04/14 03:17:27
>>888
「身代金」はパイロット版として「処方箋」とさまざまな意味で
反転になっている。これはシリーズの可能性を模索するための意
図的なもの。骨格は、どちらもかっちりした倒叙ミステリで、何
の違いもない。偽装誘拐と強盗に偽装した殺人というだけ。
大きく違うのは「処方箋」のラストが、共犯者が死んだと思わせ
るという、後のコロンボ的ではない手を使っていることと、さら
に「自供させるのが犯人ではなく共犯者だ」ということ。つまり
最も重要なところで対決が回避されてしまっており、こんな例は
シリーズ化後にはない。このラストが40年代の有名なサイコ・サ
スペンスからのそのままの引用であることは有名(「処方箋」の
元の戯曲では犯人が自供している)。つまりこれは、本格倒叙ミ
ステリのラストではなかった。(つづく)