09/05/08 00:43:08 5WAzNX+G
古今和歌集 仮名序(かなじょ 仮名で書かれた序文) 紀貫之 905年成立
やまと(大和)歌は
人の心を種として
よろづ(万)の言の葉とぞなれりける
世の中にある人
事・業(こと・わざ)しげきものなれば
心に思ふことを見るもの聞くものにつけて
言ひいだせるなり
花に鳴くうぐひす(鶯)
水に住むかはづ(蛙)の声を聞けば
生きとし生けるもの
いづれか歌を詠まざりける
力をも入れずして天地(あめつち)を動かし
目に見えぬ鬼神をもあはれ(哀れ)と思はせ
をとこをむな(男女)の仲をもやはらげ(和らげ)
猛きもののふ(武士)の心をもなぐさむる(慰むる)は歌なり
この歌あめつち(天地)の開け始まりける時よりいできにけり
(以上冒頭部分のみ)
日本人ならこの1100年前の文章でも口語訳は必要ないと思う。
現代人でも紀貫之が和歌の本質を明晰に論じたこの名文に感動と共感を覚える。
「言霊」の力を信じるゆえに、「言葉」は人間同士の意思疎通の手段に留まらず、
人の魂や自然界、神の領域にまで影響を及ぼす力を持っていると考えていたことがわかる。
現在も年が明けると皇室主催で歌会始が行われる。
天皇と一庶民の間に何の隔てもなく、歌を詠み歌を味わう。
こうして和歌に込められた言霊の精神を守り伝えている。
日本人が世界に誇れる伝統文化の一つと言える。
こうした日本文化の継承に皇室が代々果たしてきた役割は想像以上に大きなものがある。