16/06/07 13:22:34.45 CAP_USER9.net
日本の犯罪率は昔より減っている。そんななか、東京未来大学こども心理学部長・犯罪心理学者・出口保行教授が気になるのは、「佐世保女子高生殺害事件(※1)」、「老女惨殺名古屋女子大生事件(※2)」など、常軌を逸した未成年犯罪なのだという。
(※1)2014年7月27日、佐世保市で、高1女子生徒(16)による同級生の女子生徒殺人事件が起きた。加害者の女子生徒は、被害者の女子生徒を自宅マンションにて後頭部をハンマーで殴り、首を絞めて殺害。被害者の女子生徒の殴られた後頭部はグチャグチャになっており、首と左手首は切断され、大きく切り裂かれた腹部からは内臓がはみ出ていた。
(※2)2014年12月、名古屋大学の女子大生(19)が宗教勧誘の老女を斧で殺害。彼女は子どものころから奇行があり、動物虐待を繰り返していた。高校在学中には同級生に劇物のタリウムを飲ませ失明の障害を負わせている。また、「焼死体を見たかった」という理由で実家近くの民家に放火した。
■理解し難い犯罪が起こる背景
―理解し難い犯罪や非行というのが増えていると気にされていましたね?
出口「たとえば、老女を惨殺した名古屋女子大生は、高校も進学校で難関の名大理学部に現役で合格しています。先ほどの他者評価の話しで言えば、『優秀で劣等感を持つ必要もないのに、何で殺人を犯さないといけないのか?』となります。最近、心の闇の部分を解き明かしていくのが簡単にいかない事件が多いと感じます」
―専門家でもよく分からない事件ということですか?
出口「専門家だから、最後には分かります。しかし、犯行動機と犯罪行動をつなげるまでに時間がかかるんです」
―何か理由があるんでしょうか?
出口「基本的に犯罪とは、動機が形成されてから犯罪行動が起きます。犯罪を心理学で分析するときに1番難しいのは何かというと、犯罪のなかで1番数が多い『窃盗』なんですよ。案外、簡単なのは『殺し』です。先ほど話した「名古屋女子大生」とか、ああいう特殊なのは別ですよ。傷害致死や殺人は、だいたい激情にかられてやるのが多いので、意思決定から犯罪に至るまでのプロセスが少ないんですね。ところが『窃盗』は、犯罪行動に至るまで、細かいプロセスがあるんです。たとえば、コンビニに盗みに入る場合、自宅のソファーに座っていて、そこから立つかどうかを考える。「立った」ということは盗みに向かって一歩進んでいます。自分の家のリビングから出るかどうか、玄関のドアを開けるかどうか……。1つひとつの行動が、犯罪に確実に近付いて行くので、犯罪行動に至るまでに、『YES』か『NO』を選択する機会がたくさんあるんです。最後まで『YES』を選択していった場合だけが、犯罪発生につながります。我々専門家は、1つひとつの行動に、必ず『YES』を選択したことを説明していかなければならないんです。だから、解き明かすまでにとても時間がかかってしまうんです」
■価値観の多様性が自尊心の低い人間を増やしている
―理解し難い犯罪が増えていることについて、どんな社会背景があると思いますか?
出口「自己評価のあり方が変わって来ているからだと思うんです。しばらく前であれば、ある程度、評価の良し悪しが単純化されていたと思います。今は、何を持って評価されるのかがあやふやだし、個人によって同じものがプラスに見えたりマイナスに見えたりする時代になっています。価値観が非常に多様化しているんです。だからさっき言ったような『いい学校を出て、いい会社に入って』というのは、素晴らしいことなんでしょうが、それが本当に素晴らしいことなのかと言えば、疑問に思う時代です。ということは、はたから見れば『非常にいい生活だ』と思われていても、『自分は、本当はもっと上に行けるんじゃないか?』というような評価をする場合だってあるでしょう。承認欲求を満たしたいという思いがあると、王道の部分とは違う場面で付加価値をつけたり、自己顕示欲を充足したりしなければならないんです。たとえば、資格をたくさん取得するなどというように、ポジティブな方向に向かえばいいんです。だがいかんせん、ポジティブな方だけでは済まない人間がいるんです。だから、歪んだ自己評価につながって行って、かつそれを一方的に充足しようとすると、何らかの犯罪行為に繋がっていくということがあるんでしょうね」
―価値観の多様性が自尊心の低い人間を増やしているということですね。
出口「そうですね。やっぱり自尊心が低い人間が多いんじゃないでしょうか」
URLリンク(a.excite.co.jp)