16/05/07 08:28:58.08 CAP_USER*.net
「戦後もっとも良好な日台関係」
昨今、日本と台湾の双方の関係者が自信を持ってそう語り合っていた日台関係が、突如、大きな衝撃に見舞われた。
台湾の屏東県の漁船「東聖吉16号」が日本の排他的経済水域(200カイリ内)である沖ノ鳥島沖で違法に操業していたとして、
4月25日に海上保安庁が拿捕したことに対し、台湾側が強硬に反発しているのだ。
「報復措置」として沖ノ鳥島200カイリ内に再び漁船を出航させ、
台湾の政府機関である海巡署と漁業署からそれぞれ1隻ずつ船を派遣しただけでなく、
同じ海域に台湾海軍のフリゲート艦も派遣して待機させるという過激な行動を取っている。
台湾の船団は5月6日時点には沖ノ鳥島200カイリ内に到達したとも見られるが、台湾メディアの報道では、
日本側も海上保安庁の船が多数、この海域に待機しており、一触即発の状況が出現する可能性もある。
この事態について、台湾の馬英九政権で対外関係を担当する幹部の1人は、筆者の取材にこう答えた。
「これは馬総統が仕掛けた2週間の期間限定のチキンレースです。もう事務レベルでは処理できない話になってしまった。
日本には、申し訳ないが、ひたすらこらえてほしい。
台湾側にケガ人が出るとか、船が損傷を受けるとか不測の事態が起きた時は、目も当てられないことになる」
2週間とは、国民党の馬英九総統が退任し、蔡英文・民進党主席が総統に就任する5月20日までの期間を指している。
ここまでヒートアップした台湾の挑発的行動を、果たして日本は無視できるのかどうか。
確かに、台湾漁船らに対する放水だけでもさらに大騒ぎになるだろう。
仮に拿捕などしようものなら、同行している台湾側の公船との衝突も起きかねない。
台湾側の対日関係を心配する人々は、この幹部の発言にあるように、ひたすら祈るような気持ちで、
この2週間、日本側が抑制した対応を取ってくれることを願っている。
ところが、実は馬英九総統自身にとっては、台湾研究者である東京外国語大学総合国際学研究院准教授の小笠原欣幸氏
が指摘しているように、まさに「棚からぼたもち」のような話だった。
つまり、日本に「一撃」を加えてから政権を去りたい「報復心理」が馬総統に芽生えていたと考えられるのである。
台湾政府内の見解を綜合すると、米国や日本において、中国と距離を置こうとする蔡英文政権の誕生を待ち望む声が広がり、
実際に昨年6月の訪米時に米国政府が総統候補者としての蔡英文に与えた異例の厚遇は、馬総統に強いショックを与えたとされる。
加えて、慰安婦問題で、日本政府が韓国政府に新たな資金の拠出に応じるとした昨年末の日韓合意も影響を及ぼした。
かねてから慰安婦問題にこだわりのある馬総統は、同じ台湾の慰安婦たちにはどうして日本は平等に対応しないのかと不満に感じ、
同等の待遇を求める声明も出していたが、これに日本側が反応しなかったことも“しこり”として残っていたという。
「日本の蔡英文重視、馬英九軽視」という疑念
馬総統は総統選後の1月、南シナ海で台湾が実効支配する太平島を訪問した。中国との対立を抱えた米国の制止を振りきったもので、
米国政府は「失望した」というコメントを、8年間の馬政権の任期中に初めて出すに至った。
それでも、馬総統にとっては、対中関係を改善させ、習近平と歴史的な会談を成し遂げた以上、
「米日など何するものか」という気持ちになり、政権退場が決まった以上、一層大胆になれる環境になっていたのを日本側も見落としていたようだ。
蔡英文氏が総統選で圧勝した直後の1月17日、日本側台湾窓口のトップである大橋光夫・交流協会会長は台湾を訪問し、
蔡英文氏に会って祝辞を伝えている。
それ自体は問題ないのだが、そこで大橋氏は馬総統に会わずに日本に帰ってしまった。
週末が絡んでアポイントが取りにくかったことは確かだが、週明けまで滞在を延ばして待つか、少なくとも週末でも馬総統への面会要請を
出すことだけは礼儀上しておくべきだった。
この件が、馬総統や政権内の対日強硬グループの「対日不信感」を募らせる1つのきっかけになったようだ。
しかも、その際に台湾側から内々に日本への懸念は伝えられたが、その後も大橋氏による馬総統との面会のための訪台は
4月まで行われることはなく、馬政権での「日本の蔡英文重視、馬英九軽視」という疑念はより固くなっていったとされる。
つづく