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【ブリュッセル=森本学】国際空港や地下鉄駅での爆破で32人(30日時点)の犠牲者を出した連続テロを受け、ベルギーが捜査体制の見直しを急いでいる。ベルギー連邦議会下院のテロ対策委員会は29日、今まで認めていなかったテロ捜査目的の深夜・早朝の家宅捜索を可能にする法案を全会一致で可決した。テロ対策の不備が続々と明るみに出て、政府への批判が高まる中、捜査網の漏れを防ごうと躍起になっている。
ベルギー紙レコーの30日の報道によると、ベルギー連続テロ実行犯が処分したとみられるパソコンからは首相官邸などの地図が見つかった。首相官邸もテロの標的に含まれていたことを示唆するもので、実行犯らの全容解明へ捜査体制の強化が急務となっている。
ベルギーの国内法は現行犯や麻薬密売などの「例外」を除き、午後9時から午前5時までの家宅捜索を禁じている。29日に下院テロ対策委が可決した法案は、24時間捜査できる「例外の事態」にテロ捜査などを追加する内容だ。近く上下院で可決し、成立する見通し。
深夜・早朝の捜索禁止は約50年も前の法律で決まった。人権重視を基本理念に掲げる欧州の象徴的な取り決めで、私生活のプライバシーを守る狙いだ。欧州でテロが相次ぐ中、ベルギーのこうした捜査上の制約がテロリストらの犯行を防ぐうえで障害となってきたとの批判が広がっている。
深夜・早朝の捜索禁止がベルギーで脚光を浴びたのは、2015年11月のパリ同時テロ直後。ブリュッセル西部のテロ実行犯らの「拠点」があったモレンベーク地区での家宅捜索だった。当局は実行犯のひとりで現場から逃走したサラ・アブデスラム容疑者が潜伏している可能性のあった住居の捜索に入った。
ここで捜索禁止が障害となり、捜査令状の発行から当局が踏み込むまでに約1日かかった。ベルギーのヒーンス司法相は「欠陥だ」と捜索禁止を批判。ベルギー連邦検察が「臆測だ」と弁明に追われる事態となった。
深夜・早朝の捜索禁止は他の欧州の国々も導入している。欧州人権条約が第8条で定める「私生活と家庭生活の尊重の権利」を守るためだ。ただフランスは24時間捜査を認める例外に、テロ犯罪をあらかじめ盛り込んでいた。ベルギーが「漏れ」を放置していたことがテロリスト活動の温床となったとの見方もある。
パリ同時テロを受け、フランスは非常事態宣言を発動した。同宣言は、令状なしでの家宅捜索や疑わしい市民の自宅軟禁などを認める。2月下旬には同宣言の3カ月延長を決めたが、下院の採決では反対も相次いだ。新たなテロの阻止へ、欧州の基本理念である人権をどこまで制限するのか。欧州は揺れている。
日本経済新聞 2016/3/30 22:08
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