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更新 2016/2/3 16:00
卑劣な性犯罪は、ほかの犯罪に比べて再犯率が高いとされる。「依存症」が理由とみて、治療で防止しようとの動きが出てきた
昨年12月25日、横浜地裁が元中学校長(65)に懲役2年、執行猶予4年の判決を言い渡した。この男は27年間にわたり、フィリピンで1万2千人以上の女性を買春していたという。
これほどではないにせよ、性犯罪を繰り返してしまう人は少なくない。
関東地方に住む50代前半の男性タカアキさん(仮名)は、思春期のころから「年下をもてあそびたい」という気持ちを抑えられず、
身内や見知らぬ人にわいせつ行為や痴漢を繰り返してきた。成人してからは、児童買春のために海外に出かけたこともある。
「自分はおかしいのではないか」
長年苦しんだ末に精神科へ行き、性の問題を訴えたが、診断はアルコール依存症のみだった。かといって、長年依存してきた小児性愛から自分で抜け出すこともできなかった。
性の問題を含めた自分の人生が誰にも理解されない孤立感からヤケになり、ロープとカッターナイフをかばんに忍ばせ、遊んでいた子どもに声をかけた。
そのまま個室に連れ込み、子どものズボンを下ろそうとしたとき、「やめて」と声を上げられ、我に返った。
「このままでは、次は子どもを殺してしまうかもしれない」
交番に自首し、ほどなく逮捕された。
小児性愛、のぞき、痴漢、盗撮、露出、強姦など、特定の性的な行動を過剰に繰り返してしまう症状は「性依存症」と呼ばれ、国際的な診断基準もある。
性依存症を診る精神科医の福井裕輝氏によると、「自分がやめたいと思っても、それができなければ依存症と診断される」。
原因は心の問題、とソーシャルワーカーの吉岡隆氏が言う。
「不安や寂しさ、怒りなど、その人が強く心に抱えるものがあると依存症になりやすい。依存には否定的な感情を鎮静、麻痺させる効果があるからだ。しかし、それを続けていると、その先には死が待っている」
遺伝や脳機能障害の可能性も否定できない。「性犯罪の常習者には、扁桃体など脳の一部に血流低下が認められた」(福井氏)ケースもあるからだ。
2015年の犯罪白書によると、強姦か強制わいせつの服役者で、以前にどちらかの罪を犯したケースは最大45%。痴漢や盗撮では、性犯罪の前科が64~85%まで跳ね上がる。
性犯罪事件の裁判を手掛ける林大悟弁護士の元を訪れる加害者は、ほとんどが再犯者。前科10犯のケースもあった。
「本人はやめたいと思っても衝動を抑えられない。だから依存症には治療が必要なのです」
性犯罪の常習者には、「痴漢をされると女性は喜ぶ」「盗撮は誰も傷つけていない」など特有の思い込みを持つ傾向がある。こうした考え方のゆがみに気づかせるのが認知行動療法だ。
性欲を減退させる薬の抗アンドロゲンの投与を組み合わせれば、効果は増すという。
加えて、多くの医師やカウンセラーが有効だと勧めるのが、性依存症の人たちを集めた自助グループの活用だ。
米国で生まれたアルコール依存者が回復するためのプログラムを応用し、グループ形式で実践する。性を依存の対象としない「性的なしらふ」の状態に向け、仲間と支えあいながら自分を律していく。