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2015.11.12
安倍晋三政権にとって、もう1つの重要課題は難民問題だ。
シリアなどからの難民がヨーロッパに押し寄せ、「難民危機」が起こっている。欧州連合(EU)欧州委員会は、2017年までに300万人が到着するとみている。
日本は来年1月から国連の非常任理事国となる。5月には、議長国として先進7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を開催する。そこでの主要議題となることは間違いない。
この問題を人道支援とみるか、国家戦略として考えるかで、対応は異なる。戦略的課題となる。
戦乱や迫害を逃れて脱出した「難民」に対しては、生命や自由の危険がある出身国への送還や追放はできない。この点、よりよい仕事や教育、家族との同居を求めてくる「移民」とは異なり、慎重な対応が必要だ。
シリアからの難民は、トルコからギリシャ、ハンガリーという陸路の「バルカンルート」と、アフリカから地中海を渡り、イタリアやギリシャを進む海路の「地中海ルート」に大別される。多くはドイツを目指している。
難民はEUに入ると、最初に入国した国の難民認定を受ける。移動ルートから、ハンガリーとイタリア、ギリシャが実質的入り口となる。
ところが、殺到する難民の多さに、ハンガリー政府は国境を封鎖した。イタリアやギリシャも対処できない。多くの難民が周辺国で不法滞在者となる。
通過する国にも重い負担がかかる。大量の難民が徒歩で移動するため、ゴミや衛生問題、食糧の配布など、さまざまな対応が迫られる。
社会不安も発生した。ドイツで治安が悪化し、オーストリアとの国境開放を一時停止した。難民は、オーストリアやハンガリーで立ち往生した。
EUは9月、難民のうち計12万人を加盟国に割り当てる案で合意したが足りない。米国も難民受け入れを17年に10万人にすると宣言した。国際社会の救援なくしてはヨーロッパが崩壊する。
日本は、安倍首相が9月の国連総会で約8・1億ドル(約997億円)の支援を表明した。さらに支援策を踏み込まねば国際社会は納得しない。
ここで、安倍政権の戦略的思考が問われる。「国家の安全保障」「国体=国のあり方」「人道的問題」という三次元方程式の解答はあるのか。いくつか考えられる。
第1は、難民は受け入れない。日本は、米国などの多民族国家と違い、受け入れれば国体に影響する。ただ、国際社会は納得しないだろう。
第2は、積極的受け入れを表明する。難民は庇護申請を受け入れ国に提出するが、審査は各国の裁量に任されている。ハンガリーへの申請は約4万2000件だが、受け入れは約500人だ。
第3は、シリア情勢やIS(イスラム国)への関与と、難民問題を戦略的にリンクさせる。
第4は、来年の日中韓首脳会議で、中韓に難民支援を呼びかける。
積極的平和主義を掲げる安倍政権にとって、難民への「戦略的関与」こそ大きなカードとなる。