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2015年11月12日(木)
<内部資料で判明した米ウエスチングハウスの巨額減損>
東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)で、計1600億円の巨額減損が発生していたことが日経ビジネスの取材で分かった。WHの単体決算は2012年度と2013年度に赤字に陥っていたが、本誌が指摘するまで東芝は事実を開示しなかった。
これまで東芝は、原子力事業については一貫して「順調」だと説明し、WHの売上高や利益、資産状況については明らかにしてこなかった。5月に発足した第三者委員会もWHの減損問題については踏み込んでいない。
本誌(日経ビジネス)が独自に入手した内部資料によると、WHの実情は東芝の説明とは大きく乖離している。経営陣の電子メールなどを基に、東芝とWHが抱える“秘密”を明らかにしていく。
東芝の中核子会社で原子力発電所の建設や保守を手掛ける米ウエスチングハウス(WH)が、計1600億円の減損処理を行っていたことが日経ビジネスの取材で分かった。東芝経営陣の電子メールのやり取りなどを記録した内部資料から判明した。
WHは原発の新規建設が不調だったことなどを受け、単体決算で2012年度に9億2600万ドル(約1110億円)、2013年度に約4億ドル(約480億円)を減損処理した。資産価格を大幅に切り下げたことが損失となり、
2012年度と2013年度はWH単体で赤字に転落している。だが、東芝は「当社の連結決算には影響がなく、会計ルール上も問題がない」(広報)として、本誌(日経ビジネス)の指摘があるまで開示してこなかった。
東芝はこれまで、ほぼ一貫して原発関連事業は好調だと説明してきた。しかし、対外的な説明と内情が全く違っていたことが明らかになった。
これに対して東京証券取引所の幹部は「WH単体で巨額の減損があったのなら、今までの説明とは食い違う。企業ぐるみの隠蔽と言わざるを得ない」と指摘する。
※上場廃止の恐れも…
東証は9月15日、企業統治などの管理体制に深刻な問題があるとして、投資家に注意を促す「特設注意市場銘柄」に東芝株を指定したばかり。
不正会計が発覚した今年4月以降、東芝は社内の特別調査委員会に続いて、弁護士など社外専門家による第三者委員会でも調べを続けてきた。
その結果、7年間で2248億円の利益水増しを認め、過年度の決算を訂正した。
歴代3社長が辞任し、上場企業としての「みそぎ」を済ませたはずの東芝。しかし、中核子会社のWHで減損した事実を伏せたままでは、
「上場企業として投資家への説明責任を十分果たしていない」(東証幹部)と言える。東芝株は1年間の改善期間を経て来年9月に、東証の審査を受ける。
これまで通り株式の売買はできるが、管理体制の改善が見られなければ上場廃止の恐れも出てくる。
東芝における原子力事業は、2006年に約5400億円を投じてWHを買収した頃から大きく変容する(後に出資額は計6600億円に増加)。
買収当時の社長の西田厚聰や副社長の佐々木則夫は、2015年度までに30基以上の原発新設を受注し、原子力事業の売上高を1兆円規模に伸ばすと公言していた。
※「配当の原資がなくなる」
もくろみは2011年の東日本大震災で大きく揺らぐ。新規の受注実績は、2015年に至っても計10基にとどまる。
それでも東芝は、WHを含む原子力事業で5156億円の「のれん及び無形資産」を9月末時点で計上している。一方でWHの売上高や利益、資産状況は明らかにしていない。
東芝は、WHのビジネスは好調だと説明し続けている。11月7日に開かれた2015年4~9月期決算会見で、
上席常務CFO(最高財務責任者)の平田政善は「サービスや燃料事業が着実で、福島第1原発事故以降は安全対策というビジネスが伸びている」と述べた。だが平田は直近の利益額など、主張を裏付ける数字は提示しなかった。
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