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東京電力福島第1原発事故で大きな被害を受けた福島県の復興に向け、次世代の農業形態の一つとして期待されるのが植物工場だ。
「安心・安全」な農産物を生産できる一方で、原価の半分近くを占める電気代など生産コストの高さがネックとなっている。製品の値上げもままならず、現場からは悲鳴が上がる。
■補助金打ち切りへ
一面に並んだレタスが、発光ダイオード(LED)のライトで妖艶に照らされる。
第1原発から30キロ圏内、福島県川内村にある植物工場「KiMiDoRi」の光景だ。
復興の象徴として2013年春から稼働し、人工光で野菜を栽培する施設としては全国有数の規模を持つ。
完全に密閉された栽培室で野菜の生育を制御。
無農薬の水耕栽培で、天候に左右されず常に安定した収穫が見込め、葉先に細かい切れ込みがあるレタスを1パック150円前後で販売している。
しかし「工場の稼働率は50%ほど」。運営会社の早川昌和社長(58)が打ち明ける。理由は生産コストの高さだ。
原価の約45%を占める電気代が大きな負担となり、作れば作るほど赤字が増える状態。「値上げすると売れなくなる」。
現在は自治体からの補助金があるため事業を継続できているものの、毎月の実質的な赤字は200万円を超える。
復興の拠点となるには安定した事業継続が不可欠だが、補助金の一部は本年度で打ち切りが決まっており、今後を見通せない。
人材確保にも不安がつきまとう。365日稼働する工場を25人体制で運営しているが、ほとんどがパート従業員。
「赤字の状態では十分に人も採用できない」。早川社長の悩みは深い。
■安易な導入に警鐘
放射性物質の影響を受けにくく「安心」な農産物を生産できる植物工場をめぐっては、次世代農業のモデルを模索する国が熱視線を送る。
福島県沿岸をロボット産業や新エネルギー産業の集積地にすることを目指す
「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」にも植物工場導入は重点策として盛り込まれている。
福島県では、第1原発が立地する大熊町に避難指示区域としては初の植物工場を建設する計画も進む。人工光を利用する閉鎖型施設で野菜や花を栽培する。
町の担当者は「地域再生の目玉にしたい」と意気込む。来年度中の操業開始を目指しているという。
栽培した野菜は第1原発で働く作業員向けの食事として東電に提供することも検討しているが、販路の整備はまだこれからの段階だ。
早川社長は「消費者ニーズに合った設備が必要。そしてコスト高の問題が解消されないと植物工場は生き残っていけない」と安易な導入に警鐘を鳴らしている。
■植物工場 施設内の温度や光などの環境条件をコンピューターで制御することで、野菜や花など農産物を計画的に生産できる施設。
太陽光を使わず、閉鎖空間で発光ダイオード(LED)や蛍光灯を用いて栽培する「人工光型」と、主に太陽光で育てる「太陽光利用型」に大別される。
露地栽培と比べ短期間に安定して安全な野菜を生産できるが、施設の建設費や光熱費に多額の費用が掛かるのが欠点とされる。
URLリンク(www.sankeibiz.jp)