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5月中旬、アサヒビールは9月以降の輸入ワインの価格改定を発表。アメリカ産ワインは大幅に値上がりすることが明らかになった。
これまでコンビニで数百円を出せば買えたワインやウィスキーの値段が上がるとなれば、
飲料メーカーの輸入事業収益は悪化する。消費増税なども相まって、アサヒビールをはじめ、絶好調のサントリーですら国内売り上げの低迷は避けられない。
外食チェーン同様、デフレ社会のなかで成長してきた小売業界にも、目を覆いたくなるような状況が待っている。
「ユニクロを運営するファーストリテイリングは、中国で生産した商品を日本に輸入するビジネスモデルで儲けてきました。
ところが円安の影響を受け、同社は昨年から商品の値上げを断行しています。今年に入っても、秋冬モノ衣類が2割値上げされることが決まっている。
これが1ドル=150円水準になると、商品の値段は今よりさらに高値になります。そうなれば客足は途絶え、売り上げが減るのは明らかです」(信州大学教授の真壁昭夫氏)
そのときは、ユニクロが本格的に日本を脱出するのも、現実味を帯びてくる。真壁氏が続ける。
「柳井正社長は、これまで以上にユニクロの海外脱出を加速させるでしょう。
国内市場はだましだまし値上げをしながら切り抜け、その間に海外出店をさらに展開させる。
最終的には円でいくら稼いでも意味がないと判断し、円を介さずに取引を開始するようになるかもしれません」
同じ小売業界でいえば、28期連続の増収増益を達成している家具大手・ニトリもファーストリテイリングと同じビジネスモデルだけに、苦境に陥る可能性がある。
1円の円安で損失30億円
ファーストリテイリングやニトリなどの小売業界は、長い円高時代の中、日本を飛び出し海外に工場を作ることで収益を上げるビジネスモデルを確立してきた。
だが、「超円安」社会では、そのすべてが裏目に出てしまうのだ。それとまったく同じことが、電機業界でも起きている。
「自動車業界とは違い、円高時代に海外に生産拠点を分散させた家電業界は、円安に振れるほど利益が圧迫される構造になっています。
たとえばソニーは、ドル円で1円円安に振れるだけでも、実に30億円もの損失が出ると言われています。
現状の120円台よりさらに30円円安になれば、単純計算で900億円の損失を出してしまう。
ソニーは長い業績不振を抜け出し、構造改革によってようやく今期黒字化の道筋が見えたばかり。ですが、それも水泡に帰すことになる」(前出・真壁氏)
苦境に立たされるのはソニーだけではない。パナソニックも不安を抱えている。あるパナソニック幹部はこう明かす。
「ウチの会社でも、輸出の多い家電分野は増益になるかもしれません。ですが、原材料を海外から購入して製品を作るような部門は、
原材料のコスト高によって製品を作れば作るほど損が出てしまう。社員は『このままでは、
社内ですら勝ち組と負け組が二極化する』と口にしています」
強烈な格差社会が来る
これら製造業にとって、今後工場を国内回帰させるか否かは喫緊の問題だろう。実際、シャープの業績不振が取り沙汰された頃、海外の工場を国内に戻すといった話が出たのは記憶に新しい。
円安下では、国内で製品を生産し、国外に輸出したほうが収益は上がる。中国などアジア勢に対しても、製品の競争力が回復するだろう。だが、ことはそう単純には運ばない。
「問題は、円相場が短期間で急激に変動した場合。そうなると、企業はさまざまな前提の上で計画を立てているのですが、
その前提条件が根本から崩れてしまいます。原材料をどこからいくらで調達するか、その原材料をもとにどこで生産するか、
完成した製品をどこで販売するか。こうした一連の事業計画をすべて練り直さなければいけません。そのための時間とコストは、実は莫大で
、日本経済全体で見ても大きなマイナス要因になりかねない。単に国内に工場を移せば問題が解決する、という話ではないのです」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部部長の鈴木明彦氏)